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スッポンの飼育方法や飼育環境のすすめ!エサや注意点など

スッポンの飼育方法について、ご紹介します。スッポンの魅力から飼育容器や水換え、エサなど飼育に必要な環境・ものとは? またスッポンの入手方法や持ち方もご紹介します。案外癒し系なスッポンですが、噛みつかれないよう要注意です。

執筆者:星野 一三雄

スッポンを飼育してみませんか?

スッポンを飼育してみませんか?

全国の両爬ファンのみなさん、コンニチハ!
「身近な両爬の飼育法」シリーズとして「日本のスッポンの飼い方」をご紹介しましょう!
   

そもそも「スッポン」って?

鼻の穴、カワイすぎ。申し訳程度に見えている口の中の「歯(刃?)」にも注目
スッポンの鼻
写真提供:Herptile Lovers
さすがにスッポンを知らない、という方はいないと思いますが、念のため。
もちろん、カメの仲間でスッポン科に属しています。ときどき「スッポンって魚でしょ?」なんて方もいらっしゃいますが歴とした爬虫類です。 スッポン科は世界で25種前後が知られていて、どの種類も背甲の表面が他のカメのように硬い甲板がなく皮膚状で軟らかくなっています。また鼻先がシュノーケル状に伸びているような種類も多く、水生生活に適した形態をしています。

日本に分布するのはキョクトウスッポンPelodiscus sinensis ですが、これの亜種としてニホンスッポンP. s. japonica とされることもあります。
後で述べますが、日本の在来スッポンというのは、実はよくわかっていなくて本当に別亜種なのか、それとも大陸のチュウゴクスッポンと同じ種類なのかが議論になります。
ここではキョクトウスッポンとして解説してみましょう。

※なお世界のスッポンに関してはコチラ
 

日本のスッポンの生態、生息地

本当は水中でのびのびしている写真が良いんですが...
キョクトウスッポン
写真提供:Herptile Lovers

日本のスッポンは、北海道以外のほぼ全国に分布していますが、食用として養殖された個体などが逃げ出して野生化したことが考えられていて、本来の分布はよくわかっていません。南西諸島の個体群は、在来種である可能性も高いと言われていますが。やはり養殖用に他の地域から移入された個体群もいるようです。
なお、国外ではシベリアの南東部からベトナムの北部まで広く分布しています。

川や池、沼、小さな用水路などさまざまな水環境に生息していて、産卵の時と日光浴をする以外は、ほぼ完全水生の生活をしています。
特に、通常は底砂に体を埋めていることが多いらしく、なかなか野生での姿を見ることができません。

基本的に神経質で臆病な性格をしているとよく言われ、日光浴をしていても、人の気配を感じるとすぐに水中に逃げてしまいます。
私も、フィールド経験は長いのですが、野生でスッポンを見たのはほんの数回だけです。

エサは、さまざまな動物質のもので小魚などの素早い動きをする生き物も食べているようです。また水草なども食べていると言われています。

6月から8月にかけて水場の近くの砂地などで産卵を行います。卵はほぼ球形で10-40個程度を産みます。

流通する幼体は孵化直後のものが多く、背甲の長さが30mm前後ですが、成長すると30cm近くにもなり、非常に大きくなります。また首も長いため、非常に大きく見えます。
小さいうちは、単純にカワイらしいですが...
少し育ったベビー
写真提供:EndlesZone
 

養殖のスッポンと野生のスッポン

スッポンは、古くから滋養のつく食べ物として珍重されてきました。スッポン養殖の歴史は明治時代からなのですが、特に盛んに養殖されるようになったのは温泉水を利用した方法が主流になった昭和になってからです。

養殖用の種苗として中国や台湾から多くのスッポンが国内に輸入され、それが養殖に使われることも多かったようです。
そのため、養殖施設から逃げ出したりした個体が、在来の個体群と交雑をしていると考えられているため、国内のスッポンは日本に固有の種なのか、それとも大陸の個体群と同じ種なのかはよくわからなくなっています。

ある意味、手遅れかもしれませんが、逆に考えればスッポン養殖が行われていなかった地域などでは、在来のスッポンの個体群が残っている可能性もあります。
スッポンに限らず、どんな種でもそうなのですが、やはり飼育に取り組む場合には、絶対に逃がしたり、棄てたりしないようにして下さい。
 

スッポンの魅力

私は、以前は「水の人」だったので、私の動物飼育歴としては比較的早い段階でスッポンを飼育していました。
で、確かにスッポンの飼育は楽しかったです。

・普通じゃない雰囲気
とにかく「普通」のカメと異なる雰囲気を持っていますので、それが最大の魅力でしょう。
カメの中でも、もっとも爬虫類然とした生き物でもあります。不思議な生き物と言っても良いかもしれません。

・顔がカワイイ
スッポンは、そのカワイサも他のカメとはちょっと異なる趣です。
特に幼体時の、小さいくせに妙に目立つ目はまん丸で、上目遣いで見られた日にゃ、あっという間に虜になってしまいます。
かくいう私も、最初にスッポンを飼ったのは、当時通っていた大学で学会が開かれた時に、展示されていた孵化スッポンと目が合ってしまったからですから。

さらに、成長した個体の顔つきは意外にも凛々しくて、ハンサムに感じるのですが、いかがでしょう?
ハンサムだと思うんだけど...いかが?
スッポンの顔
写真提供:Herptile Lovers

・手足がムチムチ、お肌がスベスベ
スッポンは何から何まで普通のカメと異なりますが、肌の質感も全然違います。
健康に育ったスッポンの背甲はスベスベした感じで思わず触りたくなりますが、何よりも腹側から見た時の手足のムチムチ感は堪りません。

私は、とてもじゃありませんがスッポンは食べられませんし、食べようとも思わないのですが、あの手足のムチムチだけは「確かに食ったらうまいかも...」と思いましたから。

・水生種である
詳しくは後述しますが、スッポンは基本的には水棲種として飼育しても構いません。やはり水の中でのびのびと、あるいは小型の個体がちょこまかと動き回る姿というのは、本当に見ていて飽きません。
水棲種は飼育の規模がどうしても大きくなるので、欠点でもありますが、逆に考えれば観賞魚飼育の設備を流用できますから、設備も整えやすいという利点もあります。 

・番外・・・食べることができる
ま、ニュースになった兵庫県のスッポン養殖組合の方々も、この発想だったんでしょうけど...いるのかなぁ...数年飼育して大きくしたスッポンを食べようと思う人って...スッポン料理店に売ろうとする人はいるだろうけど。

なんにしても、人のもっとも基本的な「食べる」という欲求に応えてくれるという点では「魅力」なのか...
 

スッポンの飼育、飼い方

スッポンの飼育は、やはり若干、他のカメたちとは異なります。

私自身が飼育した経験は、1回きりですが、なんとか5年間ほど飼育しましたし、死なせてしまったという最期を迎えさせてしまったので、失敗から学べたこともあります。
それに、何より日本で、というか世界的に見てももっとも養殖が成功した爬虫類でもありますから、飼育に関した情報もたくさんあります。
ですから、安心して参考にして下さい!

スッポンという生き物の特徴を理解しておけば、自ずと飼育のポイントも見えてきます。
つまり
・肌が柔らかくて、皮膚病になりやすい
・やや低温に弱い
・神経質で気が荒く、運動量が大きい


という特徴から、考えると飼育のポイントは
・低温にさらさない
・複数飼育をしない
・潜れる床材

であると考えられます。
その辺を意識しながら、いつものように飼育法を見ていきましょう。
 

スッポンの飼育に必要なもの! エサや飼育器具などは?

基本的に、観賞魚飼育のつもりで準備をするといいでしょう。

・飼育容器
孵化直後のような、甲長5cm未満の個体でしたら30cmほどの幅で背が低い「フラットプラケース」がいいでしょう。
もちろん、衣装ケースやコンテナボックスでも構いません。
屋外でも、スッポンの幼体は水深がある場所で平気で生活していますから、深くても大丈夫なんでしょうけど、管理もしやすいので浅い入れ物に水を浅めに張って飼育するといいでしょう。

ただし、数年でかなり大きくなってしまいますし、運動量もかなり大きいですから、最終的には最低でも70cmクラスの衣装ケースや90cmクラスのガラス水槽が必要になります。
飼育容器に関して

・保温器具
スッポンは低温にはあまり強くありません。
もちろん、屋外では冬眠をする生き物ですが、やはり硬い甲羅に守られているわけではありませんから、どうも普通のカメよりも耐久性が弱いような印象を受けます。
したがって、特に冬期は保温をした方が良いと思われます。

保温器具は、観賞魚用のヒーターでいいでしょう。
プラケースで飼育している間は、ケースの下に敷く薄型のシートヒーターがいいでしょう。

スッポンの養殖では、早く大きくするために28℃前後で、とされますがペットとして飼育するのならば20℃を切らなければ大丈夫です。

・照明
もちろん日光浴をしますから、屋内で飼育する場合は紫外線が出ている照明器具が必要です。
ただ、本当のことを言うと、私が5年間飼育した時は照明器具はつけていませんでした。
しかし、最終的に死なせてしまったわけですから、やっぱり必要なのかもしれません。
念のため、爬虫類専用の蛍光灯を準備しましょう。

また後述する陸場には体温を上げさせるためのホットスポットを設置した方がいいでしょう。

・床材
スッポンは、野生では砂の中に潜ることが多いため、飼育下でもそのような環境を再現した方がいいと考えられます。特に、川や池などで捕まえたようなワイルドの個体は、そうすることで環境に馴染みやすくなります。

用意する砂はなるべく目が細かいものを選びます。観賞魚の飼育に使われる「大磯砂」は皮膚の弱いスッポンを傷つける可能性がありますから避けた方が良いでしょう。
厚さは、スッポンの甲の高さほどあれば十分でしょう。

・ろ過
スッポンは水質の悪化に非常に敏感で、特に低温の時期に水が悪くなるとあっという間に皮膚病などになってしまいます。
水質の管理は、通常の水生ガメの場合と同じように、定期的な「水換え」で行うことになります。
そういう意味で、機械的なろ過は気休め程度にしかならないことは自覚しましょう。

ろ過器の種類はいろいろ考えられますが、砂を使っているため目詰まりを起こしやすい、あるいはスッポンの力によってろ過器を移動されてしまう、などの理由から、結局は何が一番良い、というのは言えません。

ちなみに、私が飼育した時は幼体時にろ過器なし、生長してからは60cm水槽用の上部ろ過装置を使いました。上部ろ過の場合はモーターを持ち上げられて大変なことになりますので、そうならないための工夫が必要です。

・陸場
日光浴をさせるための陸場です。例えば、石やレンガのようなもので良いのですが、スッポンは腹甲も軟らかいためにあまり角があったり、ザラザラしすぎると皮膚を傷つけてしまいます。
カメ専用の水に浮く素材の陸場は、スッポンには適しています。また木製の「すのこ」なども利用できます。
ただし、個体によっては一切陸場に上がらないこともあるようです。

・エサ
カメ用の配合飼料で問題ないでしょう。ただし、容易に肥満しますので与えすぎには注意します。
野外で採集してきた個体などは環境が整っていてもなかなか餌を食わないようなことがありますので、ミミズや生きたエビ、小魚などさまざまなものを与えて餌付ける必要があります。
 

スッポンの入手方法

本来は、日本の川などに普通に生息しているはずの生き物ですが、よほどの偶然がない限りは、川や池で野生のスッポンを入手することは難しいでしょう。

どちらかというと、爬虫類の専門ショップよりは金魚や川魚を売っている観賞魚店などの方がよく見かけます。一方、爬虫類専門店では、高価ではありますが色彩変異であるアルビノ個体や変わった体色の個体が販売されていることもあります。
かなり美しいアルビノ。こんなのだったら誰も棄てないでしょ
アルビノ個体
写真提供:EndlesZone

また、これはやったことがないので何とも言えませんが、養殖が盛んな場所の養殖業組合などに問い合わせると良いかもしれません。

どうしても、野生の個体を捕まえたいという方は、7-8月くらいに大きな川の近くの水田地帯を流れる、浅くて少し流れがあり底が砂地の用水路を探すと幼体を見つけることができる場合があります。大きめの網などで砂をすくうような感じで探していくと捕まえることができるかもしれません。私が、今までに捕まえた野生のスッポンはこんな場所でしたから。

 

スッポン飼育における注意点

飼育していく上での注意点や、日常の世話なども、普通の水生ガメよりは手がかかります。

・飼育環境
まず設置場所を決めましょう。
小さな幼体の時はプラケなどを使いますので移動も楽でしょうから、極端に温度が高くなったり、低くなる場所でなければどこでも良いと思います。
ただし、あまり人の出入りが激しかったり、振動が多い場所は彼らが落ち着きませんので避けましょう。
また室内で飼育する場合は、できれば窓際などの自然光が入ってくる場所が良いでしょう。

飼育容器内の環境は、背甲が隠れるくらいの厚さに砂を敷き、水を張ります。この時の水深は、砂に潜ったスッポンが首を伸ばした時に水面に鼻先が届くくらいが良いでしょう。
これにその他の器具を設置すれば完成です。

・日光浴
本来は日光浴を好む種類ですが、飼育下ではなかなか陸地に上がらない場合も多いようです。
スッポンは、皮膚が弱いため日光浴で定期的に乾燥させないと皮膚病になることがあります。自分から陸地に上がらない個体の場合は、強制的に外に出して乾燥させる必要があります。
基本的には、一週間に一回程度、衣装ケースなどに入れて乾かします。この時は、乾かすことが目的ですので、直射日光に当てる必要はありません。特に幼体は、乾かせすぎて脱水して死なせてしまうことがありますので、短時間で行いましょう。

・多頭飼育
誰でも知っているように、スッポンは「咬む」動物です。したがって、養殖場のような広い環境ならまだしも、家庭の水槽程度の広さで複数を飼育すると、噛みつきあってしまいます。
複数を同じ飼育容器に入れて飼育をすることはできないと考えましょう。

・病気
実は、私も不十分な管理で5年間飼育したスッポンを病気にしてしまい死なせてしまいました。
私の場合は、秋の終わりの水温が下がってきた頃に、水換えを怠ってしまい、皮膚病にさせてしまいました。
皮膚病は、背甲や四肢、あるいは首などに白い潰瘍状のものができていくものが多く、ほとんどは体力が落ちて、免疫が低下した結果、カビなどの真菌類が原因となっているようです。
ひどくなると、食欲が低下して、そのまま衰弱死してしまいます。

初期のうちならば、
・保温する
・乾燥させる
・テラマイシン(テトラサイクリン系抗生物質)軟膏を塗る

などの処置を繰り返すことによって治癒することもできますが、基本的に病気にならないように普段からしっかりと管理することが大切でしょう。
 

スッポンの持ち方

私は、まだ経験はないし、経験したいとも思いませんが、スッポンに噛みつかれると大ケガをする可能性があります。さらに、他のカメと異なり背甲が軟らかく肌もなめらかですので、非常に持ちにくい生き物です。そのためスッポンを安全に持つ時は慣れが必要です。
もう、誰も言わなくなったけど...イナバウアー?...古っ!!!
首は後ろにも長く伸ばすことができる
写真提供:Herptile Lovers

写真を見ればわかると思いますが、スッポンは想像以上に首が長く、後ろに反り返っても背甲の真ん中くらいまでは伸びます。したがって安全のためには、いわゆる「エンペラ」と呼ばれる背甲の後縁を持つ必要があります。
しかし、こう持つと今度は後ろ足のツメでガンガンひっかいてきますので、それを覚悟して持ちましょう。
こう簡単に持たせてくれればいいんですけど...
スッポンの安全な持ち方
写真提供:Herptile Lovers

また水中から取り出す時は、このように都合良く持たせてはくれないでしょうから、観賞魚の用の「すくい網」を利用しましょう。

万一、咬まれた場合のことも考えておきましょう。昔から「スッポンは噛みついたらは雷が鳴るまで離さない」などと言われますが、もちろんそんなことはありません。たいていは、慌てずに水の中に入れるとすぐに離すようです。

スッポンは、ペットに適するカメかどうかといえば、答えはノーであると言えます。
大きくなるし、神経質だし、水質悪化や低温に弱いし。

しかし、その反面、非常に魅力的な生き物であることも事実です。ちょっとひょうきんな顔や、砂に潜ってのんびりしている姿などを見ると意外にも癒し系の生き物であることに気づかされます。

多くのスッポンが、食材として私たちに「食べる喜び」のために命を捧げてくれていますから、ほんの一部で良いから私たちくらいは食べ物としてではないスッポンを愛してあげてもいいでしょう。

いや、私は食べませんけどね。
卒倒しそうなくらいカワイイんですが...つーか、小せぇー
"プラチナ"と呼ばれる美しい個体。さらに後縁が赤く美しい
写真提供:EndlesZone

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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