最初に、このたびの新潟県中越地震により犠牲となられた方々にご冥福を、そして被害を受けられた皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。
今なお続いている被災者の方々の辛い状況に、改めて地震の恐ろしさを考えずにはおられません。私自身、いつ大きな地震が起きてもおかしくないと言われ続けている静岡県に15年以上住んでいたにもかかわらず、自分自身が災害に対しどれだけ認識が甘かったかを痛感させられました。
さて、ネコと同居中の皆様にとっては人間の安全だけでなく、「もしも」の時、ネコをどうすればよいのか?が大きな心配事の一つではないでしょうか?
ネコを完全室内飼いしている場合と、外出自由にしているネコでは当然対応も変わってくるでしょう。
様々な「もしも」を想定していても、想定通りにならないのが災害です。
しかし、頭の中でいろんな事をシュミレーションしてその時々にどう対処するのがよいか考えておくことで、とっさの時にとれる行動も違ってくるのではないでしょうか?
日本は災害大国です。
いつどこでどんな状況で、自分自身が家族が、飼っているネコが、災害に巻き込まれるかわかりません。私だけは大丈夫、という希望的観測の上にあぐらをかいている場合ではありません。いつか必ず災害に遭うもの、と想定して、できるときに準備を整えておきましょう。
災害に遭ってから防災への備えをしておかなかったことを悔やむより、使わないですませられればそれは有り難いことなのですから。
地震、と一口に言ってもそのときの自分が置かれた状況によって取ることができる行動が限られてしまうでしょう。
身一つで、命からがら逃げ出すしかない状況もあれば、身の回りのものを整理して余裕を持って避難所に行くことができる場合もあるでしょう。
とにかく最初は自分と家族の安全を第一に優先して行動するしかありません。
「もしも」の後に…
もし、少し余裕を持って避難することができる状況であれば、最初にしなければいけないことは、きっとネコを探すことだと思います。建物が崩壊しておらず、外に飛び出していないことが確認できても、パニックをおこしたネコは、人の想像も付かない場所に身を潜めてしまっているでしょう。
ネコがどこに隠れているか探し当てることができたら、まずはラッキーと思った方が良いかも知れません。
一度パニックを起こしたネコは、ひどい子になると3日-1週間、飲まず食わず、排泄せずの状態で、自分が隠れた場所にじっとうずくまったまま死んだように影を潜めます。
砂漠の生き物であったネコは、かなりの長期間、エネルギーを消耗しないよう身体の機能を押さえて持久することが可能です。
揺れが収まって、ひょっこり顔を出してくれたり、もし隠れているところを見つけることができたら、取りあえずネコをこれ以上隠れられないように確保する必要があります。
地震には必ず余震がつきものです。今回の新潟中越地震の被害にあった知り合いの飼いネコは、最初の揺れで隠れてしまい3日間出てこず、その後も余震の度に隠れて、飲まず食わずを繰り返し飼い主をずいぶん慌てさせたそうです。その後発見しケージの中に確保、ケージの周りを布で覆ってあげたところ、ネコは猫ベッドの下に長い間潜っていたそうですが、ちゃんと食事も排泄もしていたとのことでした。またこのネコは、最初の揺れの恐怖を体験した後、余震前の人間には感じられない前兆を敏感に察知するのか、余震の揺れがくる前にさっさと隠れてしまうそうです。
ネコを確保できたら、まずパニックを起こしたネコの神経を休めることが先決です。
ネコをケージの中に入れ、ケージの中には段ボール箱でも、タオルでも毛布でもかまわないので、ネコが身体を隠せる場所を用意する、そしてケージの周囲を毛布や何か大きな布等で覆い隠し、ネコが少しでも安心できる空間を作ってあげてください。空いたスペースに水・餌・トイレも置いてあげましょう。ネコは食餌やトイレがすぐそばにあることで、余震の合間に利用することができます。
倒壊のおそれが少ないと思われる被害状況であれば、ネコをそうしたケージの中に入れて飼い主は避難することができます。
ケージに慣れてもらおう
常日頃から閉じこめるためのケージではなく、自分が安心して過ごせる場所だ、という認識を持ってもらうために、ケージを用意しておきましょう。
ケージに1日中閉じこめるのではなく、食餌などネコが嬉しいと思う習慣性の行動をケージの中で行います。
(※我が家には食餌内容が他の子と異なるネコがいます。その子だけケージに入れて食餌をさせていますが、お皿を持って行くと、その子は自主的に喜んでケージに入り食餌を待ちます。そのケージに入れない子たちは、うらやましそうにその光景を見ています…。ケージも使い方次第で、ネコにとってあこがれの場所になるかも知れません。)
食餌が終わればケージの扉は開け放ち、ネコがいつでも自由に出入りできるようにします。大きめのケージであれば、トイレもそこに置いて、ケージの中のトイレを使えることも覚えてもらいましょう。2段、3段のスペースのあるケージであれば、上の段にネコのベッドを置いてあげたり(ベッドは落ちないように工夫して下さい)、ハンモック等を設置してあげると、開けっ放しのケージに入ってそこで休むようにもなります。冬はケージの中にペット用ヒーターやアンカ等を置いてネコの好む環境にしてあげることも一つの工夫です。
こうして、ケージはネコにとって安全な自分のテリトリーの一部であると認識してもらうのです。
ネコをケージに入れているときは、ケージの中でネコが不愉快に思いそうなことは一切しないでください。常日頃からそうしてケージをネコのテリトリーの一部にしておけば、恐怖におびえたネコも、限られた空間であるケージ内に身を置くことで、少しは安心し、ストレスを最小限に抑えることができるのではないでしょうか。
「もしも」の避難時に
もし倒壊のおそれのある家屋から避難しなければならなくなったときは、背負えるタイプのキャリーがあれば活用できます。避難するときはできる限り両手が自由になる事が必要です。倒壊のおそれがある場合で、もしネコを捕まえることができれば、その中に押し込んで、その場所から一刻も早く離れてください。
倒壊のおそれがないけれど、避難勧告が出て家を離れなければならない場合-そして隠れているネコを見つけられないときは、安全なスペース(ものが落ちてこないような場所)に水とたくさんのフードを置いて、扉を閉めて避難してください。ネコが勝手に家の外に出られないようにしておかないと、一度外に飛び出してしまったネコを探すことは不可能に近いでしょうから。。