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女子トイレから逃げて捕まった男の罪名(2ページ目)

建設会社社長がのぞき目的で入った女子トイレから逃走して、利用者の女性に捕まったお粗末な事件。代償は県の1ヵ月指名停止処分。男の罪は何になるのでしょうか?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド


牽連犯~けんれんはん

このケースの男は、たとえば通りからたまたまどこかの建物をのぞいたということではなく、わざわざ女子トイレの中にまで入っていました。のぞきをするために建物に入ったのですから、軽犯罪法の「窃視の罪」を犯す目的で、建造物に侵入した時点で「住居侵入罪」が成立して、のぞき見たときに軽犯罪法の「窃視の罪」が成立します。しかし、この二つの罪の関係は、昭和57年に最高裁判所判決として、

「軽犯罪法一条23号の罪は、住居、浴場、更衣場、便所その他の場所の内部をのぞき見る行為を処罰の対象とするものであるところ、囲繞地~いにょうち(民法上、他の土地(袋地~ふくろち)を囲む周囲の土地)に囲まれ、あるいは建物等の内部にある上記のような場所をのぞき見るためには、その手段として囲繞地あるいは建物等への侵入行為を伴うのが通常であるから、「住居侵入罪」と軽犯罪法1条23号の罪とは、罪質上通例手段結果の関係にあるものと解するのが相当である」となっています。(判例時報1039号138p)

簡単にいえば、「のぞきをするために、手段として、まずは住居や浴場、更衣室、トイレなどに入るのだから、『住居侵入罪』と『窃視の罪』は手段と結果の関係にある」わけです。「住居侵入罪」は3年以下の懲役刑ですから、「窃視の罪」の拘留または科料よりも重い罪になります。そのため、牽連犯(けんれんはん)として、「住居侵入罪」のみで処罰されることになるのです。

※「牽連犯」とは、犯罪の手段・結果の関係にあるものが、それぞれ違う罪名の場合に、刑を科すときには一つの罪と見なして、それらの罪名のうちもっとも重い罪で処置する科刑上の制度のこと。

のぞきをしておきながら「住居侵入罪」とは、なんだか少し違うような気がするかもしれませんが、のぞきをするために建物に入った、「“のぞき目的の”住居侵入罪」とあるところが、せめてもの部分になりそうです。

男の代償

のぞきの代償は重かった
のぞきの代償は重かった
捕まったこの男は、建設会社社長でしたが、「のぞき目的の住居侵入罪」で逮捕されたことから、県管理課から「処分要綱の『不正又は不誠実な行為』にあたる」と判断されて、1ヶ月間の指名停止処分(工事の発注を受けることができない)を受けました。

女子トイレに侵入して捕まったのが、正しくないこと、誠実でもないことだと判断されて、社会的制裁をも受ける羽目になったのです。「魔が差した」だけでは済まない代償が待ち受けていたということです。

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