「匠の技」に近づくために
――これまで様々なお役を演じていらっしゃいますが、特に印象に残っているのは?『キャッツ』撮影:荒井健
他には、『オペラ座の怪人』(タイトルロール)もチャンスがあればずっと歌っていきたい、演じて行きたい役ですよね。俳優は年齢とともに役が限られてくるので、いかにアンチエイジングが出来るか。頑張ろうという気でいないと負けてしまいますから、自分との戦いですね。日々のケアにどのくらい時間をかけるか。2時間半の舞台のために残りの20数時間をどう過ごすか、ということを意識しています」
――いい加減には過ごせない、のですね。
『キャッツ』撮影:佐藤アキラ
――観客としては、『オペラ座の怪人』にせよ『キャッツ』にせよ、長い間一つの役を極めていらっしゃることも嬉しく拝見しています。
「やはり作品、そして役の魅力が大きいですね。“この役をずっとやりたい”という思いが強い者が残っていける世界なのではないかと思います。そのために、できることを日々やっていこうと思っています」
――今後について、どんなヴィジョンをお持ちでしょうか?
「今やっていることを継続していくことが、自分に課せられた使命だと思っています。だから一回一回を大切に、レベルを下げないよう、自分を律していこう、と」
――それが音楽の才能を与えられた者の使命だ、と?
『オペラ座の怪人』撮影:上原タカシ
究極は、さりげなく、難しいことをさらっとやるのがプロだと思っています。ちょっと真似してみようと思っても絶対真似できない、凄いことをさりげなくこなせるのがプロ。そういう舞台ができるようになりたいですね。『サウンド・オブ・ミュージック』でも“一生懸命”ではなく、さりげなく大佐をやっていて、それが素晴らしく見える。そんな俳優を目指しています」
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「役者を目指している方、若い役者さんにはとても含蓄のあるお言葉です」と言うと、「いえいえ、こんなこと人さまには言えません」と照れ笑いを見せた村さん。20余年にわたって張りのある、圧倒的な美声を聞かせていらっしゃった方だからこその、自負と謙虚さの入り混じる穏やかな笑顔が印象的でした。そんな村さんの歌の“原点”である『サウンド・オブ・ミュージック』、必見と言えましょう。
*公演情報*『サウンド・オブ・ミュージック』1月31日まで上演中=四季劇場[秋]