ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.14 中河内雅貴(3ページ目)

切れ味鋭いダンスと、少年から悪党まで演じわける“振り幅の大きさ”を武器に活躍中の、中河内雅貴さん。作家スコット・フィッツジェラルドと妻の愛憎を描く『スコット&ゼルダ』では、日本版オリジナルの難役に挑戦中です。「すごく面白くなりそう」という、本作の仕掛けとは? “初心貫徹”のその半生とともに伺いました。*観劇レポートをUPしました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


「これが無ければ生きている感じがしない」と思えるものに
15歳で出会い、単身師匠の住む町へ

「CLUB SEVEN 10th!」(2015年)写真提供:東宝演劇部

「CLUB SEVEN 10th Stage!」(2015年)写真提供:東宝演劇部

――中河内さんはお生まれは広島だそうですが、長野県のダンス・コンクールで何度も優勝されています。お育ちは長野なのでしょうか?

「いえ、ずっと広島だったけれど、15歳の時に単身、長野に引っ越したんです。きっかけは、受験勉強。僕はもともと机に座って勉強するのが嫌いで、体を動かしたりスポーツが大好きな子供だったから、母が受験勉強の励みになればと、ちょうど中3の夏に募集していた「半年間限定、ダンス経験のない男子のためのダンス講習」を勧めてくれたんです。やってみたら、見事にはまりまして(笑)。地元の公立高校には受かったんですが、ダンス講習が終わって生きてる感じがなくなってしまったんです。自分にはダンスがないとダメだ、と思ってその先生に連絡したら、先生が住んでいらっしゃる長野に来ますか?と言っていただけました。入学したばかりの学校に“今月いっぱいでやめます”と言って、一人で(先生のいる)長野に向かいました」

――普通、受験生を持つ親御さんなら“勉強に集中しなさい”と言うところを、お母様は中河内さんが好きそうなものを勧めてくれたのですね。

「子供がやりたいと思うことは借金してでもやらせたいというタイプの親なんです。でも当時は“ダンスが好きそうだから”ということではなくて、それを励みに勉強するようになれば、という思いだったのではないかな。結果的に、“これじゃないとダメだ”というものに出会わせてくれました。

長野ではバイトをしながら、学業も続けながら、週7日、ダンスに明け暮れました。クラシックバレエとジャズダンスを、幼児クラスで幼児と混ざり、小学生クラスで小学生と混ざり…と、少しずつステップアップしていきましたね。3年間修行して絶対プロになってやると思っていたから、全然苦ではなかったです。でも圧倒的に女子の方が多くて寂しく思っていたら、16歳の時に、久しぶりに見学に来た男子がいました。“男子GET!”と思いながらデモンストレーションをやって見せたらめでたく入会したのが、古川雄大。彼は2歳年下で、その時からのつきあいです」

――長野ではダンスコンクールにもたびたび出場し、優勝経験もおありですが、長野はダンスが盛んなのですか?

「クラシック・バレエは有名ですね。ローザンヌ(国際バレエコンクール)の優勝者も出ています。ジャズダンスだと、僕の居たスタジオはいいですよ!もう一つ、ライバルのスタジオがあって、コンクールでは優勝を争って切磋琢磨してました」
「まさかのchange?!」(2010年)写真提供:東宝演劇部

「まさかのchange?!」(2010年)写真提供:東宝演劇部

――3年間の修行の後、独り立ちされたのでしょうか。

「自分の中では“これだけ意識を高く持っているのだから、3年みっちりやれば絶対プロになれる”と思いこんでいたし、インストラクターとしてクラスも持たせてもらえるまでになっていたので、高校3年の時に師匠に“東京に出たいんですけど”と言ったんですけど、その時は“まだ早い”と言われたんです。昔は先輩方がいて目指すものがあったけれど、その時は自分がトップ。なんでまだ早いのか理解できず、“じゃあ海外に行かせてください”とお願いして、1か月NYに行かせてもらいました。

そうしたら、それまでスタジオにこもっていて見えなかった外の世界がよく見えるようになりました。得たもののなかで一番大きかったのは、やはり“自分自身が大事”だということ。アメリカはいろんな人たちがいて、例えば体型にしても大きな人、痩せた人がいるし、ゲイの人もレズビアンの人もいる。ライフスタイルもいろいろです。でもそういう“タイプ”に関係なく、みんな自分自身を大切に、人間として生きている。それが一番大事なんだと気づいたんです」

――中河内さんが大事にする“自分自身”とは?

「僕ってあまり裏表がなくて、時には失礼なことも言ってしまうけれど、それはそれで仕方ないかなと思うんです。世の中にはすごく体裁に気を使う人が多くて、それも大事だけど、場面によっては、そこにこだわるあまり、自分自身が行ける“マックス”の蓋を閉めちゃうことになる。だったらたとえ反感を買うとしても、結果を出すことを大事にやっていこうと思うんです」

――“出る杭は打たれる”と言いますが、これまで大丈夫だったのですか?

「打たれることはありますけど(笑)、そういうふうにやってきました。もちろん、失敗すれば反省して次に生かすことはできる人間なので、自分で気づくことさえできれば大丈夫かなと思います。NYに行ってから2年後に僕は東京に出てきたけれど、バックダンサーをやっているとメインのアーティストとの待遇の差が激しくて、なんで同じステージに立っているのに?という思いがあったんです。くっそう。俺も絶対あそこにいってやる、という反骨精神で、成長できた部分はありますね。歌だけでもダンスだけでもだめだし、芝居だけでもダメ。僕はエンターテイナーとして、すべてにおいて皆を凌駕したいという思いで、一つ一つの機会で学ばせてもらって、今があると感じます」

*次ページで中河内さんの「役者観」を変えた作品、そして今後のビジョンをうかがいました!

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます