子育て/子どもの発達障害・グレーゾーン

発達障害児のメタ認知を高める自己理解ノート

発達障害など育てにくいと言われているお子さんに共通の問題は、自分自身を客観的に見ることが苦手なことです。心理学の用語では「メタ認知」といわれている、周囲が自分をどう見ているか、自分がどう見られているかを感じる力。それがトラブルの原因になっています。

原 佐知子

執筆者:原 佐知子

子育てガイド

発達障害児の「メタ認知」を高める方法とは

発達障害児のメタ認知を高めるには

トラブルを起こしがちなお子さんには特徴があります。

育てにくいと言われているお子さん・自閉症のお子さんには、下記2つの傾向により他人とトラブルになる場合があります。

・自分自身のことを、客観的に見ることが苦手
・自分の考えは言葉で伝えなくても、他人も理解していると思っている

本記事では、不要なトラブルを避け、他人との円滑なコミュニケーション作りに役立つ「自分を客観的にみる力を養う、自己理解ノート」について、くわしく紹介していきたと思います。
   

コミュニケーションが苦手な子どものトラブル理由

育てにくいと言われているお子さんに共通の問題は、自分自身のことを客観的に見ることが苦手なことです。心理学の用語では「メタ認知」といわれている、周囲が自分をどう見ているかを感じる力です。頭の中にもう1人の自分がいて、自分を見つめているようなものです。発達障害のあるお子さんはコミュニケーションが難しく、トラブルになることが多いといわれていますが、その根底には、自分自身についてよくわからないこと、他人と自分との境界線があいまいであることがその理由にあります。

例えば、「恥ずかしい」という感覚がありますね。その感覚は、周囲の人が自分を見て笑っているのではないかと思う気持ちです。その感覚を持つには、周囲の人の目で自分を客観的にみることが必要です。往来で転んでしまった場合、けがをしたところが痛いと思うよりも、恥ずかしいからその場を立ち去りたいと思うのが一般的です。しかし、メタ認知ができなければ、いつまでもその場にいて「痛い痛い」と泣き喚くかもしれません。

*一般的には、小学校3年ぐらいから自分の中のメタ認知が意識され、しっかりと働くようになるといわれています。
http://www2.nara-edu.ac.jp/CERT/nara-edu/outline/
発達障害のお子さんは、発達がほかの人より遅れていることが多いので、子どもの時はなかなかそれができないのです。
 

自分が考えていることはすべて他人も知っている!?

自閉症スペクトラムという障害の特性の中で最近よく言われるのが、自分と他人の境界がわからないことです。一般の人2.3歳ごろから、自分というものがわかってくると言われています。自分の考えていることと他人の考えていることは違うということを小さいころからわかっています。でも、発達障害や自閉症スペクトラムといわれている人はある程度大きくなるまでその感覚がわからないのです。

自分の考えていることは言葉で伝えなければ、他人には理解されないと考えるのが普通です。しかし、自閉症スペクトラムの人は、そうは思いません。自分の考えは当たり前のように他人にも理解されていると思い込んでいます。ですから、他人から理解されないことがわからず、理解されないことに怒り、他人を責めてしまいます。それは、理解されているという前提にいるため、誰かに意見されることを責められていると感じます。自分と他人との境界線があいまいで、自分と他人を同一化してしまうことが、人間関係がこじれてしまう原因です。
 

小さいころから自他の区別をつけるようにする

お子さんには、小さいころから自分の気持ちは言葉などで伝えないとわかってもらえないことを説明することが必要になります。世間の常識といわれるものや、ルールなどを、その子の年齢に応じて、わかるようにきちんと話すことで、自分と世間一般の考え方をする他人との違いを認識してもらうことが大切になります。小さいころから、親やきょうだい、友だちは、全く別の考えを持っていることを繰り返し伝えましょう。

そして、お子さんだけのスペースや持ち物をきちんと分けることも大切です。共有するものが多いと、他人との境界線があいまいになり、他人の持ち物についても自分のものであるかのように錯覚してしまいます。貸し借りが難しいということでトラブルになることも多いです。
 

トラブルを防ぐために自己理解ノートを作ろう

ノートを通して自己を理解する

お子さんがノートに書きながら、自分のことを理解していきます。

まず、自分の性格や考え方の特徴、自分が他人からどう見られているかなどを親子で話し合いましょう。絵本の読み聞かせをするように、同じノートを見ながら、お子さん自身のことを話しながら書いていきましょう。小さいころは絵本のような大きなスケッチブックのようなノートを用意しましょう。

表紙にはお子さんの似顔絵を描いたり、写真を貼ったりして、大きく「○○○ちゃんノート」とタイトルを付けましょう。そのノートがお子さんのものであることを視覚的に理解させることが大切です。

毎日、30分間や1時間でも時間を決めて、そのノートを真ん中にお子さんと向かい合い、話をしましょう。
 

お子さんの良い面を中心に書く

ノートに書く内容は、まずは、お子さんの良い面を中心にしましょう。
項目としては、
○好きなこと、やっていて楽しいこと
○好きな食べ物
○好きなお友だちとその理由
○よく見るテレビ、漫画、本など

そして、苦手な面、ほかの子に比べてできないところにも目を向けます。
○好きではない食べもの
○さわられて嫌なところ、されて嫌なこと、言われて嫌な言葉
○やるのが苦手なこと、なるべくならやりたくないこと

お子さんが、自分自身の特徴を把握しそれを他人に伝えられるようになることで、コミュニケーションのトラブルが減ります。そして、日々あったことを日記のように、今日楽しかったこと、できるようになったこともつづっていきましょう。ノートに書きながら、自分が少しずつ変わっていく、前に進んでいることも実感できます。
 

自分の内面を他者に伝える

機嫌が悪い時や落ち込んでいるときは、その原因となることも、話してもらえるようになります。誰かに話すことでお子さんも楽になります。そして自分の立場だけでなく、相手になった人の気持ちや状況を客観的に分析してお子さんにわかる言葉で説明することで、起きたできごとを、自分以外の視点で見る練習になります。

例えば、コミック会話※
www.manabinoba.com/index.cfm/8%2C19262%2C21%2C184%2Chtml
という手法があります。お子さんの思いや相手の気持ちを絵にすることで、他人の気持ちや、自分の気持ちが目に見えてわかりやすくなるものです。この手法を取り入れて、お子さんの気持ちと周囲の人の気持ちを絵にすることも有効でしょう。絵は上手でなくても構いません。お子さんとそのほかの人の区別がわかればよいのです。

お子さんの頭の中に浮かんでいるものや思いをお子さんが自分で言葉にしたり、文字に記したりできるようになれば、しめたものです。発達障害のお子さんは、なかなか自分で感情や想いを言葉にすることが苦手です。伝わったという経験が、伝えようとする意欲につながります。言葉で伝えることができるようになれば、トラブルも減っていきます。

また、気持ちが伝わった経験の積み重ねにより、人に心を開き、他人を信頼できるようになります。まずは、親子でノートを使って気持ちを言葉にしながら、お子さんの自己理解をすすめましょう。

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