郊外にも関わらず、都心価格で即日完売!?
今月初め、大田区蒲田へ取材に向かった。「プラウドシティ蒲田」が坪単価@320万円で第1期121戸を即日完売したと聞いたからだ。事業主の1社、野村不動産は7月にも「プラウドタワー立川」を同@342.5万円という高値設定で完売(第1期250)させている。共に駅直結の再開発物件である。同社住宅事業本部住宅営業三部長 下川秀明氏は、「駅前再開発の分譲マンションは周辺相場の2割~3割増のプレミアムが付く」と立川の記者発表会で説明していた。
たしかにJR「立川」駅は大型商業施設やオフィス、公園なども集積する都下エリアの中心地。短期的な不動産相場の動向に左右されにくい富裕層が注目しても不思議はない。一方、「京急蒲田」駅は事情が異なるように思えた。「駅近」評価よりも、羽田空港国際化に伴う交通インフラ再整備に資産価値の期待が集まったからではないかと考えたからだ。
しかし、予想はものの見事に外れた。購入者は京急沿線を中心とした「住み慣れた人たち」が「駅直結」を第一に評価しているという。現実的な利便性に基づく資産価値に理解を示しつつも、「蒲蒲線」構想などに過度な期待をかけての決断ではないようである。
再開発プロジェクトは、何が違うのか?
そもそも再開発プロジェクトは、一般的な分譲マンションと何が違うのだろうか。上記、立川と蒲田は都市再開発法に基づく市街地再開発事業に位置づけられる。国土交通省のサイトには、市街地再開発事業の目的が以下のように書かれている。要するに、敷地の大きさに合わせて建築基準法など法令や条例の制限の範囲内で設計・建設する一般的な建物(マンション)とは違って、街の機能や景観など魅力そのものを高めることを目的としているのが再開発事業だ。交通機関との物理的連携、商業施設や行政サービスなどの同居による生活利便の向上、そして何より立地上エリアナンバーワンのポジションを獲得できる可能性も高い。そもそも好立地ゆえ、特別なスキームで事業が司られるともいえる。市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地の統合、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行うことにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る
路線価が跳ねあがった「虎ノ門ヒルズ」の外周路
ちなみに2014年、最も世間の注目を集めた再開発プロジェクトのひとつは「虎ノ門ヒルズ」(森ビル)であろう。地上52階建て、高さにして247メートル。店舗、オフィス、住宅、ホテルが入居する複合超高層だ。最大の特長は環状2号線がビルの地下を通過していること。「新虎通り」は幅員40m、最大13m(片側)の歩行空間を有する道路でパリの「シャンゼリゼ通り」の如く、都心のメインストリートを目指すという。さて、この話題のビル、どれほどの資産価値を有しているのか。一部、分譲住戸のある「虎ノ門ヒルズレジデンス」は既存の顧客リストを対象にセールス活動がなされたようで、販売価格等は一切公表されていないようだ。そこで、路線価を調べてみた。
下のグラフは、港区におけるタワーマンション、高級マンション計34棟を対象に接道部の「路線価」指数推移を表したもの(2008年の価額を100とする)。ミニバブル後のリーマンショックを経て、折れ線グラフは全体的に下落して始まり、2013年に横ばいに、2014年に反転している。同じような軌跡をたどるなかで、非連続な伸びを示しているのが「虎ノ門ヒルズ」(2014年)。そして「アークヒルズ仙石山レジデンス」(2013年)、マンションのみの「パークコート赤坂ザタワー」(2010年)。いずれも都心部の大型再開発事業だ。
資産価値を求めるなら、再開発プロジェクトに限る―そんなセオリーが市場に定着しそうな予感がする。が、くれぐれも不動産購入は利用価値を総合的に判断されるようご留意いただきたい。
【参考記事】
分譲坪単価@320万円「プラウドシティ蒲田」、第1期121戸を即日完売
「プラウドタワー立川」分譲坪単価@342.5万円の根拠
マンションの資産価値と路線価<港区の場合>
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