危ぶまれる5つの通貨
世界に投資するときに、そこには必ず明と暗、陽と陰があります。しかも、それらは日々変化を続けます。いま明るいのはアメリカと日本、そして暗いのフラジャイル・ファイブと呼ばれる5カ国です。フラジャイル・ファイブとは、ブラジル、南アフリカ、インド、インドネシア、トルコの各国通貨を指します。この5カ国は、高いインフレ率や経常収支の赤字で、成長資金を国外に頼る脆弱なマクロ経済構造を抱えている点で共通しているのです。
アメリカでのテーパリング(金融緩和の縮小)で悪い影響を受けると心配され、実際に2013年5月には通貨安が進行し、株価も大きく下げました。ですから、いまこれらの国の株式市場に関心を持っている日本人はほとんどいません。しかし、投資のチャンスはそこに潜んでいます。
中でも、一番にリバウンドを期待できるのはインドだと私は思っています。今回は、悲観の中にあるインド株の魅力をご案内します。
インドの魅力は人口動態
インドの人口は12億人で世界第2位。2050年には中国を抜き世界第1位となりそうです。しかも、平均年齢は今でも25歳ととても若い国なのです(日本は人口1億2千万人、平均年齢45歳)。人口と年齢は、インドの最大の強みです。インドのもう一つの特徴は、1947年までイギリスの植民地であったために、公用語は英語。教育制度や社会制度にもイギリスの良い影響が残っているのが、他の新興国とは趣きを異にするところです。
そのせいもあって、経済のグローバル化が進む中で、リーマンショックまでは世界の中でもトップ集団に位置する株価上昇率を記録してきました。
今回の危機を招いたのは政治?
現在のインド経済は、1991年に社会主義的計画経済から自由経済に政策転換したところからスタートしています。そこから、21世紀にはBRICsの一員として世界から注目される新興国にまで成長しました。しかし、政策が成長に追いつかなかったため、多くの問題が解決されずに積み残されていたのです。貧困層が多いこと、規制緩和が進まないこと、過度の補助金で生産性が伸びないことなどです。結果として、経済成長が壁にぶつかり、財政は悪化。国の債務が増加して、外資に対する依存度が増えてしまいました。
根本の問題は、政治にあったのかもしれません。
新しいリーダーの登場に期待も
そんな停滞したインドにも新しいエネルギーを感じさせるリーダーがいます。一人は、2013年の通貨危機の後にインド準備銀行(RBI)の新総裁に就任したラグラム・ラジャン氏です。51歳の経済学者。インフレ抑制に強い姿勢を示し、市場の信認を獲得しました。結果、インドルピーの下落に歯止めがかかりました。
もう一人は、新首相とうわさされる闘争民主党(RBI)のナレンドラ・モディ氏です。現在は、グシャラート州の知事ですが、外資誘致やインフラ整備で州経済の活性化に成功したことから、改革への実行力に期待が高まっています。
首相は2014年4~5月に予定されている下院選挙の結果によって決定されます。選挙の結果は分かりませんが、現状の調査ではモディ氏のRBIが断然の優位に立っています。
インド経済の強みは?
インド株に投資するとしたら、どんな分野が有望でしょうか?インドで期待される企業とはどんな業種なのがでしょうか?まずはソフトウェア産業です。インフォシスに代表されるインドのIT企業は世界をリードする技術力を持っています。
それから消費商品です。8億人いるといわれる貧困層が所得を持てば、一般消費財(食品、衣料、医薬品など)の需要が一気に高まります。同時に、金融業も多いに期待されています。今まで銀行に縁の無かった人たちが、銀行口座を必要とするようになるからです。
世界では、ウクライナ情勢と中国経済成長の鈍化が2つの大きな不安要因とされていますが、インドはこの2カ国との関係が比較的薄いことも、私はインドの強みだと思っています。
最悪期は脱した?
2014年2月から3月までの2ヶ月間で、インドの株価指数ムンバイSENSEX指数は、実に9%も反騰をしました。今後は、5月の選挙結果によっては、国内の景気回復と株価上昇に弾みがつくことも期待されています。投資の成果を10年、20年と待てる長期投資家であれば、今のうちからインド株を仕込むのも面白いと思います。上がりだしてから買うのでは、株価急騰の本当に美味しいところを逃してしまうからです。
私は、投資信託でインド株をバスケットで買っています。
皆さんも、国際分散投資の醍醐味を楽しんでください。