世界遺産/世界遺産関連ニュース

2013年新登録の世界遺産

2013年6月、新たに19件の世界遺産が誕生し、世界遺産総数は981件となった。日本の物件では「富士山」が「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」と名称を変えて登録に成功し、17件目の世界遺産となった。今回は新登録の世界遺産全リスト(解説付き)、拡大された世界遺産、危機遺産リストの変更点等、第37回世界遺産委員会の概要を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

第37回世界遺産委員会速報!

紅河ハニ棚田群の文化的景観

新世界遺産「紅河ハニ棚田群の文化的景観」の絶景。フィリピンの「フィリピン・コルディリェーラの棚田群」、インドネシアの「バリ州の文化的景観:トリ・ヒタ・カラナ哲学に基づくスバック灌漑システム」に次ぐ、棚田を登録した世界遺産

2013年6月の世界遺産委員会で「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」をはじめ新たに19件の世界遺産が誕生した。これで世界遺産総数は981件となった。

今回は第37回世界遺産委員会の速報記事として、新登録の世界遺産全リスト(解説付き)、拡大された世界遺産、危機遺産リストの変更点等、その概要を紹介しよう。なお、本記事はUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の公式サイトの情報を参考に編集した。

[関連サイト]

新たに19件の世界遺産が誕生、世界遺産は計981件へ!

コインブラ大学

ポルトガルの世界遺産「コインブラ大学-アルタとソフィア」登録のアルタ地区。コインブラは12~13世紀の一時期、ポルトガルの首都として繁栄した都市。13世紀のコインブラ大学創立後は文化的中心として栄え、ポルトガルの政治・経済・芸術をリードした

毎年行われている世界遺産委員会。今年は6月16~27日まで、カンボジアのプノンペンで第37回が開催された。今年もここで新しい世界遺産が誕生した。

新登録の世界遺産は19件で、そのうち文化遺産が14件、自然遺産5件。また、3件の拡大が承認された。これにより世界遺産総数は981件、うち文化遺産が759件、自然遺産は193件、複合遺産は29件となった。今回拡大を含めて30件が審議されたので、通過率は約73.3%だった。

はじめて世界遺産が誕生したのはカタール、フィジー、レソトの3国。これで、世界遺産条約締結国で世界遺産を保有していない国は30か国に減少した。

国別の登録数では、イタリアが2件増やして49件で不動の1位。今回、中国がスペインを抜いて2位(45件)へ浮上した。中国の伸びは世界一で、この10年で登録数を16件も伸ばしている。日本は14位16件から13位17件へ順位を上げた。

危機遺産リストでは、1件がリストから削除され、7件が追加された。これにより、38件だった危機遺産は44件に増えた。

富士山、念願の世界遺産へ! 鎌倉は無念の辞退

河口湖から見た逆さ富士

河口湖から見た逆さ富士。世界遺産には河口湖を含め、富士五湖すべてが登録された

4月末にICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)から世界遺産リストへの記載勧告を受けていた「富士山 "Fujisan"」は、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉 "Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration"」と名称を変えて登録に成功した。日本の世界遺産としては17件目、文化遺産としては13件目となる。

勧告段階では以下のような問題点が指摘されていた。
  • 登録基準(iii)(vi)の価値は認めるが、(iv)の価値は証明されていない
  • 三保松原(みほのまつばら)は構成資産から除外するべきである
  • 周辺の開発や登山の制限など、2016年までに保全状況報告書を提出する
  • 「富士山」という名称を改め、内容と結びついたものにする
ほとんどは受け入れたものの、三保松原については一体登録を目指して除外を拒否。世界遺産委員会メンバーへのアピールが奏功し、委員会では多数の委員から三保松原の除外に反対する意見が出て、逆転登録に成功した。構成資産は以下。詳細は関連記事を参照のこと。

■「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産
富士山本宮浅間大社

富士山本宮浅間大社。1300以上存在するといわれる浅間神社の総本社

  • 山頂の信仰遺跡群
  • 登山道(大宮・村山口登山道、須山口登山道、須走口登山道、吉田口登山道
  • 浅間神社(富士山本宮浅間大社、北口本宮富士浅間神社、山宮浅間神社、村山浅間神社、須山浅間神社、富士浅間神社、河口浅間神社、富士御室浅間神社)
  • 御師住宅(旧外川家住宅、小佐野家住宅)
  • 富士五湖(西湖、精進湖、本栖湖、山中湖、河口湖)
  • 忍野八海(出口池、お釜池、底抜池、銚子池、湧池、濁池、鏡池、菖蒲池)
  • 溶岩地形(船津胎内樹型、吉田胎内樹型、人穴富士講遺跡、白糸の滝)
  • 三保松原
[関連記事] 一方、ICOMOSから不記載勧告を受けていた「武家の古都・鎌倉」は、文化庁と自治体の協議の結果、6月上旬に推薦を取り下げた。これは世界遺産委員会で不記載が決定された場合、再推薦が不可能になるための措置。これにより今後も日本の世界遺産暫定リストにとどまって、世界遺産登録を目指すことになる。

なお、2014年の第38回世界遺産委員会では「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産登録を目指す。
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