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年金支給開始68歳、夫婦の老後はどうなる?(2ページ目)

年金の支給開始年齢が68歳に引き上げされることが検討されています。その背景は? 夫婦でどう対処する?

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

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貰える年金600万円減少、その対処方法は?

夫婦で人生のワーク・ライフ・バランスを考える

夫婦で人生のワーク・ライフ・バランスを考える

現在、厚生年金(老齢基礎年金および老齢厚生年金)を貰っている人の平均受給金額は167,388円(「平成21年度厚生年金保険・国民年金事業の概況について」より)なので、支給開始年齢が3年引き上げられるということは、貰える年金額が約600万円少なくなるという計算になります。今回検討されている改革案が、老後の生活に与える影響がいかに大きいか、ご理解いただけるのではないかと思います。それでは私たちは、年金額の減少にどのように対処すれば良いのでしょうか?

■老後の備えとして600万円貯蓄を増やす
まず考えられるのは、少なくなる年金分だけ、貯蓄を増やすという選択肢です。30歳の人でリタイア年齢を65歳とした場合、貯蓄できる期間は35年間です。リタイアまでに600万円を貯蓄するには1年あたり約17万円、月あたり1.4万円の貯蓄が必要になります。今でも節約をしてなんとか家計をやりくりしている人が多い中で、さらに毎月1.4万円の貯蓄を増やすというのは、かなり厳しいのではないかと思います。

長期間の運用期間があるので、積立投資をしたらどうかと考える方もいらっしゃるかもしれません。仮に毎月1万円を積み立て投資する場合、35年間で600万円にするためには、2%程度の運用利回りが必要になります。2%の利回りが高いか低いかは、人それぞれ感じ方が違うと思いますが、投資を上手に行えば、毎月の積立の負担が少なくなります。

■働く期間を68歳まで延長する
次に考えられるのは、支給開始年齢の68歳まで働くという選択肢です。数年前までは、日本の企業では、60歳定年が一般的でした。厚生年金の支給開始年齢が65歳に段階的に引き上げられたのに合わせて、企業では、(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止のいずれかの措置をとることが、高齢者雇用安定法によって義務付けられました。従業員数が31名以上の規模の会社では、年金支給開始年齢までの雇用確保措置が実施されている企業の割合は、96.6%にのぼりますが、希望者全員が65歳まで働ける企業は46.2%で、半数に満たないのが現状です。

年金支給開始年齢がさらに引き上げられた場合、法整備による高齢者の雇用継続の推進はもちろん、企業自体の努力によって高齢者を積極的に活用する方向に進んだとしても、希望すれば誰もが68歳まで働けるような社会になるかは疑問です(個人的には、そのような世の中になることを望んでいる一人です)。また、平均寿命が伸び、60歳を過ぎてもまだまだ元気という人がたくさんいらっしゃる一方で、健康状態によっては68歳まで働けないという人もいらっしゃるでしょう。「長く働けば、なんとかなる」とは、単純には結論づけられないかもしれません。


働き方、暮らし方など価値観を変えないと対応できない

今までは、企業で定年まで一生懸命働いて、老後は退職金と貯蓄、そして年金で何とかなる、そんな時代であったかもしれません。大学を卒業して23歳で就職した場合、60歳定年までの働く期間は38年、それが68歳まで働くとすると46年に伸びます。人生の中で8年間という期間はやはり長いです。46年間、老後の生活のことを心配しながら一生懸命働き続けるのは、大変なことです。

あるテレビ番組のインタビューで、「ダンナに68歳まで働いてもらわなければ困る……」といったコメントをしている方を見かけました。人生をより豊かに安心して暮らしていくためにお金という視点で考えた場合、世帯の収入をいかに増やすかがポイントになります。夫婦共働きでいくのか、片働きでいくのか。今一度、夫婦で真剣に考える時期が来たのではないかと思います。

夫婦共働きでいくことを決めた場合でも、「46年間にフルに一生懸命働き、68歳以降は悠々自適の生活をする」「ほどほどの収入とほどほどの生活をしながら68歳まで働く」「50歳くらいまでは仕事に集中して、それ以降は少しペースを落として、生活を楽しむことに重点を置く」など、働き方や暮らし方の組み合わせはさまざまです。

これからの日本で豊かに暮らしていくために、人生全体を通してのワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)について、夫婦でしっかり話し合い、意識合わせをすることが、大切なことではないかと思います。

【関連リンク】
2011年以降の家計を占う、本当は怖い日本のお金の話
いくら貰えるの!?共働き夫婦の年金

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