フレンチスタイルの珈琲屋とはなにか
長年にわたり多数の客人を迎えてきた艶やかなカウンター。
Cafe螢明舎のオーナー、下田荘一郎さんは全盛期のレジュ・グルニエで修業した後、まず習志野市・谷津に、ついで市川市・八幡に自らデザインしたカフェをオープン。八幡店は写真家の故・星野道夫が愛したカフェとしても知られています。
「当店はフレンチスタイルの珈琲屋です」と下田さん。
その「フレンチスタイル」の意味するところを、最初、私には明瞭にとらえることができませんでした。フレンチスタイルと聞けば、多くの人がオー・バカナルに代表されるパリ直輸入のオープンカフェを連想するはず。けれども80年代、その言葉は明らかに異なる様式を意味していたようで、下田さんにお話をうかがって初めて了解することができたのです。
従来の喫茶店を超えて、最良の一杯を
銅製のイブリックはフォルムも美しく。
やがてそんな風潮に反旗を翻し、手間ひまかけた最良の珈琲、最良の寛ぎの空間を提案する喫茶店が出現しはじめます。
当時の一般的な喫茶店にはない、苦味とコクの豊かなフレンチローストのエイジング・ビーンズ。フランス発祥のネルを使ったハンドドリップ。フランスの一軒家を模した、高級感のある重厚な空間づくり。それらは当時、訪れる人々にどれほどのインパクトと感動を与えたことでしょう。
その先駆者だったのがアンセーニュ・ダングル、ついで登場したレジュ・グルニエでした。一世を風靡したそれらのお店の流れを汲むスタイルを「フレンチスタイルの珈琲屋」と下田さんは表現するのです。
夕暮れどきはランプが生みだす陰影も魅力のひとつ。