子供の病気/熱中症・熱射病・日射病

熱中症とは…熱射病・熱疲労の症状・治療・対応方法

【小児科医が解説】夏の外出時はもちろん、屋内や車内でも注意が必要な熱中症。一言で熱中症と言っても、熱射病、熱失神、熱痙攣、熱疲労などの種類があり、症状と重症度は様々です。それぞれの症状の特徴と、治療法・応急手当法を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

「熱中症」は総称……熱中症の種類と特徴

真夏の太陽

暑さで不調を感じた場合は我慢せず、すぐに適切に対応することが大切です

暑い夏の日、強い日差しの下や高温下で起こる「熱中症」。毎年医療機関に運び込まれる学童や高齢者は後を絶ちません。炎天下の日には、1日で10人以上の野球部員が運び込まれてくることもあるほどです。

熱中症は、体温や状態によって以前以下の4つに分類されていました。熱中症の新分類については後ほどご説明しますが、新分類でも捉え方は変わりありませんので、ここでは旧分類に沿ってどのような症状が現在「熱中症」として扱われているのかを解説していきたいと思います。
 
  • 熱射病(日射病):体温上昇により腎臓の機能が壊れ、尿が出なくなる
  • 熱失神:体温は平熱。顔色が悪くなり血圧が低下する
  • 熱痙攣:体温は平熱。手足の筋肉がピクピクする
  • 熱疲労:体温は平熱。気温の暑さで夏バテのようになる
熱中症はちょっとした工夫で予防できる一方、重度の症状になると命の危険も伴う怖い病気です。それぞれの特徴的な症状と治療方法を解説します。
 

熱射病・日射病の原因・症状・治療法

■熱射病(日射病)の原因
屋外・屋内に関わらず、暑さがひどく、特に人の体温以上の温度になった時に起こります。炎天下で車内に取り残された子供が救急車で運ばれるケースの多くは、「熱射病(日射病)」と考えられます。

体温を下げようと汗をかいても間に合わなくなる状態です。体温の上昇が早く、体温を下げる事ができなくなり、放置していると高温のため体温調節のメカニズムが崩れ、41度以上の発熱になることもあります。41度を超えタンパク質が壊れると、腎臓が機能しなくなってしまうため尿が排出できず、場合によっては命に関わることもあります。

■熱射病(日射病)の症状
大量の汗により血液の量が減るため、顔色が悪く、唇は蒼く、脈を触ると弱くなります。弱い脈が毎分100以上と速くなるのも特徴です。体温上昇により41度を越えると、顔などの皮膚が熱く、赤くなり、乾燥した状態になります。水分が大量の汗になって体から出ていきます。水分の減少により、血液が濃くなり血流が悪くなってしまうため、血の塊ができたり、内臓への血液が減って内臓が働かなくなったりしてしまうのです。

■熱射病(日射病)の対処法・治療法
とにかく、体温を下げることが大切です。氷やアルコールで体全体、または脇や足の付け根や首を冷やしたり、扇風機などで40度以下に冷やします。点滴を行い、脱水の改善も行います。
 

熱失神の原因・症状・治療法

■熱失神の原因
炎天下の屋外にいると、日差しで体表の温度が上がっていきます。すると、体表の温度を早く冷やそうと、皮膚側の血管が広がって血液がいつもより多く流れるのです。この体表を冷却しようとする血液が増えすぎて、内臓に流れる血液量が著しく減ってしまうのが「熱失神」。じっとしているときではなく、運動をしているときに多い症状です。

■熱失神の症状
体温は平熱。体の表面である皮膚は血液による冷却作用で冷やされるため、体温計で計ると平熱より低い場合もあります。血液量を増やそうと血管が広がっているために血圧が低下し、手首などで脈をとると、脈が弱く、速くなります。顔色も悪くなって血圧が下がったショックを起こしたような状態に。病院で血圧を測定してショック状態を判断します。

■熱失神の対処法・治療法
涼しい所で安静にし、水分を補給することで回復します。もし症状が重くショックを起こしている時には、医療機関に行きましょう。電解質を含んだ液の点滴を行って治療します。
 

熱痙攣の原因・症状・治療法

■熱痙攣の原因
運動時に多いですが、温度の高い室内で、大量の汗をかくことで起こります。汗をかくことで血液中の塩分が減少してしまい、手足の筋肉がピクピクと痙攣を起こす「熱痙攣」。塩分を含まない水ばかり飲んでいると危険です。

■熱痙攣の症状
体温は平熱。大量の汗と一緒に、血管から水分と塩分が出ていくため、血液の量が減ります。顔色が悪く、脈をとると脈が弱く速くなっている状態。病院で血圧を測定します。熱失神と違って、筋肉の痙攣を起こすのが特徴。

■熱痙攣の対処法・治療法
涼しい所で塩分を含む飲料を飲みましょう。筋肉の痙攣がひどい場合は、医療機関で塩分を補う点滴を行います。

 

熱疲労の原因・症状・治療法

■熱疲労の原因
名前の通り、暑さに疲れてしまった状態が「熱疲労」です。気温の高い日の運動時はもちろん、気温の高い室内で静かにしていても起こります。特に体調が悪いときの外出で発症しやすいです。

■熱疲労の症状
体温は平熱がほとんどですが、40度まで発熱することもあります。大量の汗で体の水分が減ってしまうために脱水症状を起こし、体がだるく感じるなどの自覚症状が出ます。例えば、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状ですが、疲労状態が進行して体温がどんどん上がると熱射病になります。

■熱疲労の対処法・治療法
涼しい所で安静にして、脱水状態の改善のため、塩分を含むイオン飲料、いわゆるスポーツ飲料の補給や医療機関での点滴を行います。
 

熱中症の新分類:I度~III度

熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病の旧分類はわかりにくいということで、現在熱中症は治療の必要性と国際的な評価から重症度をI度、II度、III度の3つに分類されています。
 
  • I度…軽症(熱失神、熱痙攣)
  • II度…中等症(熱疲労)
  • III度…重症(熱射病)
治療法も、それぞれに応じて行われます。詳しくは、「熱中症の重症度とその対処方法」をご覧下さい。
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