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目立ちたくない名探偵?小市民シリーズの謎(2ページ目)

かつての自分を捨てて、1人は笑ってごまかし、もう1人は隠れることで平穏無事な高校生活を目指す。ユニークな小市民コンビと甘いお菓子の組み合わせが絶妙な青春ミステリー!

執筆者:石井 千湖

気になる!小市民シリーズの謎

モンブラン
『春期』はいちごタルト、『夏期』はトロピカルパフェ。どうやら『秋期』はモンブランらしい。
小市民シリーズで一番大きな謎は、小鳩君と小佐内さんはどういうきっかけで互恵関係を結び、小市民を目指すようになったのかということ。どうやら鍵は彼らが中学3年生のときの初夏にあるようなのですが、詳しくは語られていません。『夏期』の結末をふまえて、次回作の『秋期限定モンブラン事件』(※著者公式サイトの予定一覧を参照。確定情報ではありません念のため)で、おそらくそのあたりの経緯にふれるのではないかと予想しているのですが。

何があったのか、手がかりになりそうな台詞を抜き出してみます。

【謎を解きたくないわけ】
「仮に、解いたとして。それを伝えるのが、嫌なんだよ。こうこうこうで、こうなりましたっていう、あの解説がさ」…『春期』P93

【中学のときに何があったのかについて】
「カウンターでストレートをもらって、ロープから跳ね返ったところにフックをもらって、崩れかけたところにアッパーをもらった。(中略)文句なしノックダウンさ。ぼくは小賢しかった、けれどそれは自慢になるようなものじゃないって、心底思い知ったんだ。二度と調子に乗った知恵働きはしないって決めるのに、充分な打撃だったよ」…『春期』P199

夏目漱石『草枕』の有名な冒頭、〈智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。〉という文章を思い出しました。集団のなかで突出したのがきっかけで、傷ついてしまう。いつの時代も、変わらない悩みなのかも。

とにかく、今後の展開が楽しみなシリーズなのです!

<関連リンク>
汎夢殿米澤穂信公式サイト。シンプルなテキストサイトで、見やすいです。最新情報は「お知らせ」「近況報告」をどうぞ。著者による登場人物一覧リストもあります。
渋 皮 栗小市民シリーズの美しい装画を描いている、片山若子公式サイト。2006年5月2日~7日まで福岡のギャラリーで個展を開く予定だそうです。日記に情報が掲載されています。
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