F1(フォーミュラ1)について

更新日:2009年11月04日

トヨタF1撤退、10年間の戦いに幕

世界の巨人、トヨタがF1からの撤退を表明した。2002年から参戦し、一度も優勝を遂げることなくF1から撤退を余儀なくされたトヨタのおよそ10年に渡る戦いの記録を振り返る。

多くの人の目にF1をPRした功績は大きい

お台場で開催されたモータースポーツジャパンでデモ走行したトヨタF1とテストチームの面々。ドライバーはこの日、正ドライバーとしての出場が発表された小林可夢偉。
【写真提供:Toyota Motorsport】
日本を代表するメーカー、トヨタの一番の功績はそれまでF1などのモータースポーツに見向きもしなかった人たちに「モータースポーツ」をPRしたことであろう。テレビCMはもちろんテレビ番組や雑誌、またはトヨタモータースポーツフェスティバルなどのイベントを通じて一般の人たちにF1活動をアピールしてきた。東京の巨大ショールーム「メガウェブ」でも若手ドライバーの育成についてもPRするコーナーを設けたり、様々な手法でモータースポーツの地位向上に尽力した。特に若い世代に向けてのPRに関しては積極的であったことは忘れてはならないだろう。
MEGA WEBでのデモ走行イベントは恒例のイベントとして人気を博した。
【写真提供:Toyota Motorsport】
残念なのは日本の既存のモータースポーツファンにそれらの活動がなかなか受け入れてもらえなかったことだ。日本人ドライバーの中嶋一貴、小林可夢偉など日本人若手ドライバーの育成には積極的だったが、外国人ドライバーばかりを起用し、参戦8年目の終盤2戦にしてようやく日本人を起用するなど、日本のファンに感情移入させるチャンスを作れなかったことが惜しまれる。

トヨタ系の若手にとってショックなニュース

先日のアブダビGPで好走し、6位入賞を果たした小林可夢偉の走りは素晴らしかった。今年のルーキー・オブ・ザ・イヤーと言ってもいいくらいの好走だった。今シーズンの新人ドライバーの中であれだけ長い時間、国際映像に撮られていた新人は他には居なかったはずだ。それだけに今回の撤退の決断は残念である。
トヨタのサポートを受けF3を戦う若手ドライバーたち。彼らに明るい未来があって欲しい。
【写真提供:Toyota Motorsport】
トヨタはTDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)という独自の育成システムを作り、レーシングカートで活躍したティーンドライバーなどをフォーミュラに乗せ、数多くのドライバーを海外のレースへと送り込み武者修行させてきた。

F1までの道程が無くなった今、心配されるのはF1まで上り詰めた小林可夢偉と中嶋一貴の今後である。来シーズン以降のエンジン供給の話はなく、F1からは完全撤退するということであるため、今後、彼らがF1に残れる可能性は非常に少ない。しかし、来シーズンからは自動車メーカー色の薄い「コスワース」エンジンが再参入してくるため、できれば彼らがメーカー色の弱いチームに残れるよう全力で面倒を見てあげて欲しいものだ。

何年か後の違う形での挑戦を期待

トヨタはF1からは撤退するが北米のNASCARや現在は南米で開催されるラリーのダカールラリーには参戦を続けるとしている。また国内でもSUPER GTでの活動は続けていく予定であり、今後は地域に根付いたモータースポーツ活動を行っていく意向である。

今年の6月にモータースポーツ好きで、自らドライバーとしてもレースに出場する豊田章男社長が就任したばかりだっただけに、F1の参戦継続には少し期待した部分があったが、今後はF1にこだわらずトヨタ独自のやり方で若者にモータースポーツやスポーツドライビングの楽しさを伝えて行ってくれるであろう。
東京モーターショーで発表されたコンセプトカーFT86
トヨタのF1撤退は残念だが、これは単なる通過点に過ぎないのかもしれない。単にF1を頂点としたヒエラルキーが崩れ去っただけではないだろうか。今後は国内のモータースポーツ業界も大きな変化が起こっていくであろう。これまでのように自動車メーカーが大金を注ぎこむようなことは無いかもしれないが、景気が上向いた時に新しく生まれてくる流れを少しでもサポートし、若者にクルマの楽しさ、モータースポーツの楽しさをこれまで以上に伝え続けて頂くことを切に願うばかりだ。


【関連リンク】
トヨタ モータースポーツサイト

Bridgestone Motorsport
↑F1全チームにタイヤを供給。サイトは情報が盛りだくさん

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辻野 ヒロシ

場内実況アナウンサーとして、サーキットという現場を知り抜いたスペシャリスト

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