最近のモニタ事情
液晶モニタの解像度と言えば「1280×1024程度」だったのも今や昔。ノートPCから高解像度化の波が訪れたが、最近ではすっかり「フルHD」(1920×1080ドット)以上の高解像度が当たり前のものとなった。こうした高解像度化が進んだのは、やはり地上デジタル放送の普及が大きな要因だろう。デジタル放送の解像度は最大1920×1080ドット(=フルHD)のため、この放送をそのまま表示するためにはフルHDもしくはワイドUXGA(1920×1200ドット)以上の解像度が必要になる。PC用の地デジチューナーが登場したこともあり、フルHD以上の液晶モニタがどんどん値下がりしている状況だ。
ただし、地デジやBD(Blu-ray Disc)タイトルの再生用に利用したいのであれば、一つ注意点がある。それは地デジやBDタイトルを表示する場合、グラフィックカードやモニタが「HDCP」と呼ばれる著作権保護機構に対応していなければならないということだ(PC用モニターとして利用するのであれば特に必要はない)。アナログ出力の場合はHDCP非対応でも大丈夫だが、ハイビジョン映像をデジタルのまま楽しみたいのであれば、グラフィックカードがHDCPに対応しているかどうかチェックしておこう。
まずは基本を押さえておこう
■駆動形式はTNが主流だが、VAがお薦め液晶パネルの駆動方式は「TN(Twisted Nematic)方式」「VA(Virtical Alignment)方式」「IPS(In-Place-Switching)方式」の3種類に分かれる。PC用液晶で最も多いのはTN方式で、VA方式がそれに続く。IPS方式はほとんどないといってもいい。
一般的にTN方式が最も低コストでIPS方式が高コストだが、静止画画質はIPS方式が最も高く、TN方式はこの中で最も低いと言われる。だが動画画質ではVA方式の方がIPS方式よりも応答性が高いため、動画画質ではVA方式の方が分があると言われる。TN液晶は水平方向と垂直方向の視野角が異なる場合が多く、垂直方向の視野角が水平方向に比べて狭いモデルはTN液晶と思って間違いない。
■接続方法はアナログの「D-sub」とデジタルの「DVI」「HDMI」
接続方法は、現在DVI形式のデジタル接続が主流になっている。以前のモニタはアナログ接続が主流だったため、アナログ接続でも十分な画質を実現していた。
だが現在はデジタル接続が主流になっているため、たとえデジタル・アナログ両対応でも、アナログ接続では思うような画質が得られない(にじみやゴーストなどが生じてしまう)場合がある。
モニタの対応解像度でデジタル出力すれば、にじみなどが生じる心配は全くない。そのほか、HDMI入力対応モデルも増えている。HDMIは映像と音声を1本のケーブルで伝送できる規格で、デジタルAV機器に多い。スピーカー内蔵のモニタを利用する場合などは便利な接続方法だ。
■解像度はフルHD以上が基本
これから購入するなら、視力が弱くて細かい表示が苦手な人は別として、迷わずフルHD(1920×1080ドット)以上の解像度を選んでおきたい。解像度が低いと、デジタル放送やBDコンテンツを楽しみたい時に不満が残ってしまう。
ワイドUXGA(1920×1200ドット)の方が垂直方向の解像度が120ドット多いが、フルHD解像度ならデジタル放送などを表示したときに上下に黒い帯が見えなくてすむ。デジタル放送やBDコンテンツを楽しみたいのであれば、それらのコンテンツをぴったり表示できるフルHD解像度の方がお薦めだ。
■大きさは21インチ以上がお薦め
フルHD解像度を選んだ場合、自動的に選択肢が21インチ以上のモニタ以外になくなってしまう。「そんな大きなモニタはどうしても設置できない」というのでない限り、対応モニタを選んでおけば間違いない。24インチモニタも最近ではかなり安くなってきているので、より大きなモニタもお薦めだ。
■視野角は広いほどいいが……
モニタのスペックに表示される視野角とは、一般的に10:1のコントラストを再現できる角度のことを指している。コントラスト10:1というのは、「色が変わっていることが分かる」という程度で、その角度での実用性はないと考えていい。
スペックだけでは分からない部分もあるが、視野角178度のモデルと170度のモデルを比べてみると、178度の方がはるかに斜めからの視認性が高いことが多い。実際に見比べてみるのが一番だ。
■HDCP対応は必須
最近発売されているフルHD以上のモニタを選べばまず間違いはないが、著作権保護機構に対応していないとデジタル放送やBDコンテンツをデジタル接続で楽しむことはできない。購入する際は「HDCP対応」と明記してあるかどうかを必ずチェックしよう。
■スピーカー内蔵は便利?
モニタにはスピーカー内蔵タイプと非内蔵タイプがある。内蔵タイプなら別途スピーカーを用意しなくてすむし、いちいちスピーカーの電源をオン・オフしなくてすむので便利だ。ただし内蔵スピーカーは出力も低く、音質的には期待できるレベルではない。手軽さを求めるなら内蔵タイプ、音質を求めるなら非内蔵タイプを選ぼう。
■ピボット機能などはあると便利
液晶モニタの機能としては、そのほかに「スイベル」(水平方向の角度調整)や「チルト」(垂直方向の角度調整)などの機能を備えているモデルがある。すべてを備えるモデルとなるとかなり限られてしまうので、これらの機能は好みに合わせて選ぶといいだろう。
ただ一つあると便利なのは、モニタを90度回転できる「ピボット機能」だ。フルHD液晶であれば、通常は横1920×縦1080ドット表示なのを、横1080×縦1920ドット表示に変えることができる。PDFやワードなどで作成された縦長文書を表示する場合、ピボット表示はかなり便利に使える。これも好みに合わせて選ぼう。
いま初心者にお薦めの液晶モニタ
初心者向けであまり後悔しない無難な選択としては、以下のモニタがお薦めだ。【ガイドお薦め機種】
・マウスコンピューター ProLite B2409HDS
HDMI、DVI、アナログRGBの3系統入力を備える、TN方式の23.6インチフルHD液晶モニタ。視野角があまり広くないなどのマイナス面はあるものの、PC用途としては十分だろう。ピボット、チルト、スイベル機能を搭載しており、スピーカーも備えるのが魅力。
モニタ選びの3つのポイント
モニタ選びのために、ポイントを3つにまとめた。それぞれの解説をもとに、自分に合ったモニタを見つけてほしい。1. 画質で選ぶ
駆動方式はTN、VA、IPSなどさまざま。その中でお薦めの形式は?
2. 大きさで選ぶ
フルHD以上の解像度なら、24インチ以上がお薦め!
3. 使い勝手で選ぶ
画面の回転や調整機能が決め手の一つだ
モニタ選びの3つのポイント:1. 画質で選ぶ