世界の食料危機を救うかもしれないスゴイ食材「ユーグレナ」って?
飽食と言われる現代ですが、そんな時代の中にあっても、まだまだ栄養失調に苦しむ人々が少なくないのをご存知でしょうか? 飢餓とは、食事が食べられない人たちのことだけではなく、必要な栄養素を摂取できていない人たちも含まれます。世界で問題視されている栄養問題についてAll About「食と健康」ガイドの南恵子さんに解説していただきました。
提供:株式会社ユーグレナ
今回お話をうかがった方

NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演、商品企画協力等を中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する豊富な情報を発信していきます。
毎日ご飯を食べているのに、飢餓状態!?

食事をとっているのに栄養不良に…
世界には70億人以上の人々が暮らしています。その中で、飢餓に苦しんでいる人々は約8億500万人いるとされています※。一口に飢餓と言うと、気候変動などによる自然災害や農作物被害などが原因で、食事の量そのものが足りていない人たちを想像するかもしれませんが、食事は取っているものの、その内容は栄養が偏ったものになっている人たちも少なくないのです。
南さん「炭水化物、たんぱく質、脂質はエネルギーを作る三大栄養素です。炭水化物が不足すれば、疲労感やだるさが感じられるでしょう。筋肉や血液などの体を作る原料となるたんぱく質が不足すれば成長を妨げ、酵素なども作ることができません。私たちがダイエットに邪魔と思いがちな脂質も細胞膜やホルモンの材料となっています。
またビタミンやミネラルは、こうした栄養素の代謝に必要不可欠です。様々な栄養素がお互いに支えあって、生命活動が営まれているのです」
つまり、私たちが主食とするお米をいくらたくさん食べても、ビタミンB1など糖質をエネルギーに代謝するために必要なビタミン類が不足していると、エネルギーに変えられずに、体調不良につながることもあるというのです。
さらに、世界的な傾向として貧困層ほど栄養バランスが偏った食事内容になりがちだと南さんは指摘します。
南さん「人間は、エネルギーがないと動けません。そのため、私たちと同じように米や麦、トウモロコシ、芋類といった炭水化物を主食とする民族が多いアジアの場合、貧困層の食事はたいていエネルギー源となる炭水化物(糖質)が中心になります。その一方で、野菜や果物などから得られる体の調子を整えるビタミンやミネラル、また動物性食品などから得られるたんぱく質や脂質は不足しがちではないでしょうか。その結果、食事の量はなんとか足りているのに健康被害が出てしまう、ということがおこります」
※『世界の食料不安の現状 2014年報告』国際農林業協働協会
バングラデシュで見た、「栄養問題の本質」とは?

バングラデシュの子どもたちのために、ユーグレナを開発
例えばバングラデシュの一部の地域では、棒のような手足をした子どもたちが大勢います。実は彼らの多くは、きちんと食事をとっているのです。バングラデシュの国民食と言えばカレー。お腹がいっぱいになるくらいのお米は食べています。ではなぜ、そんなに痩せ細っているのでしょうか。
「彼らの体形は、彼らが慢性的な栄養不足だということを示しています」と南さんは言います。カロリーは足りているかもしれませんが、野菜や肉、魚、豆類、果物などはほとんど口にする機会がない。そのため、成長や健康維持に必要な栄養素が得られないのです。
こうした問題に対して、少しでも力になりたいと挑戦を続ける、あるバイオテクノロジー企業があります。
その名は株式会社ユーグレナ。
社長である出雲氏は、大学1年の時に参加した学外活動でバングラデシュの食生活を見たことがきっかけとなって、この会社を立ち上げたといいます。「穀倉地帯のバングラデシュに乾パンを送るようなこれまでのやり方では、この問題は根本的には解決しない。漫画『ドラゴンボール』に出てくる『仙豆』のように完全な栄養を持った食品はないものか」と探し続けた結果、ある食材に行き着いたのでした。
それこそが、この会社の社名にもなっている「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」です。
ユーグレナは世界の飢餓を救う可能性を持ったスーパーフード

ユーグレナの豊富な栄養分が、地球を救う
ユーグレナの最も大きな特長は、約59種類の栄養素が含まれていることです。実は、ユーグレナは藻の一種で、植物でもあり動物でもあるという不思議な生物。そのため、野菜に多く含まれるビタミンやミネラルなどの成分に加え、魚に多く含まれるDHA、EPAといった不飽和脂肪酸なども持っています。
これを食品に加工できれば、国連やさまざまな国がこれまで届けたくてもできなかった、新鮮な野菜や果物、肉や魚などの代わりとなります。バングラデシュの子どもたちに、さまざまな栄養のつまった食事を食べてもらうことができるのです。
また、ユーグレナに含まれているパラミロンという成分には、健康維持に役立つという研究結果も出ています。
さらにユーグレナは、それ自体を食べるだけでなく、植物の肥料や家畜や養殖魚の飼料としての活用も期待できます。高タンパクで栄養価が高いため、植物や家畜の成長が早まったり、病気に強くなったり、もともと持っている栄養価がさらにアップすることなどが分かっています。
まさに、バングラデシュをはじめ世界の飢餓を救う可能性を持った「スーパーフード」というわけです。
ある青年の熱意が、世界初の技術の実現に結びついた

ユーグレナが育つ石垣島の豊かな自然
そんなユーグレナですが、実はこれまでに何度もその栄養素と効果には着目されてきたそうです。しかし、効率的に大量培養をする方法がなく、実用化のめどがたちませんでした。
というのも、ユーグレナはあまりにも豊富な栄養を持つため、培養途中に他の微生物が侵入してきやすく、あっという間に食べつくされてしまうのです。1カ月かけて耳かき1杯くらいを採るのがやっとという状態では、何に加工するにしても手間もコストも見合いません。
出雲氏は大学卒業後に就職した銀行を辞めて退路を断ち、大量培養のヒントを得ようと日本中のミドリムシ研究者たちに会いに行きました。移動費と宿泊費を節約するため、いつも移動は夜行バスだったそうです。
「なんとしてもバングラデシュの子どもたちを救いたい」。そんな出雲氏の熱意に、最初は難色を示していた人たちも徐々に協力をしてくれるようになり、とうとう世界で誰も成しえなかった結果を出したのです。
今では石垣島で、ユーグレナの屋外大量培養が行われています。
スーパーフード「ユーグレナ」を、健康食品やクッキーで手軽に
現在、ユーグレナ入りの商品は私たちでも気軽に手に入れられるようになりました。例えば「ユーグレナ・ファームの緑汁」。粉末を水に溶かすだけで、ユーグレナが持つ豊富な栄養素とパラミロンを簡単に摂ることができます。

毎日おいしく飲める「緑汁」
もちろん、当初の目的だったバングラデシュの子どもたちへの支援も行われています。株式会社ユーグレナでは「ユーグレナGENKIプログラム」と題して、2014年4月からバングラデシュの小学校にユーグレナ入りクッキー(現地名「Euglena Nutrition Biscuits」)を配布するプロジェクトを始め、徐々に配布規模を広げています。
ただ渡すだけはなく、家庭訪問を実施して栄養改善調査を行うなど、きちんと結果に残るような取り組みにしたのは、本気で栄養問題を解決しようと願っているから。

ユーグレナGENKIプログラム
南さんいわく「この活動はバングラデシュにとどまらず、世界の栄養問題の解決の糸口になりえる可能性がある」とのこと。
南さん「吃緊(きっきん)の栄養不良などには、幅広く高い栄養価が一品で摂取できるというのは、有効だと考えます。またクッキーのような日持ち、携帯もしやすいという形に加工できる点も現地のスタッフにとって、利用しやすいでしょう」
さらに南さんは、「当面の緊急事態を脱したら、その後は多様な食品をとるように導いていく教育をしていく必要もある」とも言います。これまでは国連や他の国々が現地で栄養指導を行っても、そもそも手にいれることができない栄養素に対する関心は低いままでした。しかし、ユーグレナを通して、栄養バランスの重要性に対する意識が現地の人々に根付けば、今後の生活も少しずつ変わってくるかもしれません。
技術的にも世界中でユーグレナの生産は可能です。砂漠化が進んでいる土地でも、日照さえ充分にあれば、水をパイプラインで運んでユーグレナを生産することはできるからです。これは「未来の農業」といえるでしょう。
出雲氏がめざす「飢餓のない世界」は、ユーグレナという小さな小さな生物によって、着実に実現へと進められているのです。
【関連リンク】 ユーグレナ・ファームの緑汁