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皮膚病で動物病院を訪ねるとき

臨床獣医学フォーラム05のレポート第2回は、「皮膚のトラブル」です。愛犬が皮膚病になって病院を訪ねるとき、飼い主はどんなことを獣医さんに伝えるべきか、その心得について聞きました。

執筆者:坂本 光里

毛が抜ける、かゆがるだけで皮膚病と判断するのは早計

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飼い主だけでなくAHTの参加も多かった
臨床獣医学フォーラム05のレポート第2回は、「皮膚のトラブル」への対処です。
最初の講師は、斉藤動物病院の(神奈川)の斉藤邦史先生。皮膚学会での発表も多い皮膚病のスペシャリストです。先生はまず、なんでもかんでも皮膚病と決めつけてしまうのはマチガイであることを指摘。犬には換毛期というものがあって毛が抜けるものであり、毛がよく抜けるからとか、かゆがっているから皮膚病ではないかと思いこまないようにとアドバイスをされました。

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家庭犬をとりまく環境は、その犬種が生まれた地域(国)の環境とはまるで異なるもの。環境、つまり毛や皮膚の働きに関係する「気温」「日射」「食事」「住環境」「運動量」などが違えば、それは皮膚にとっての“負荷”となって、毛が抜ける量を増やす原因になるというわけです。高温多湿の日本は、犬の毛の抜けやすい国であるということです。

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また、犬たちがよく見せるカイカイの仕草も、必ずしも皮膚病と関係あるものではないと先生は言われていました。
「犬には生理的なかゆみや病的なかゆみがなくても、かゆそうに掻く仕草をします。また、後ろ足で耳を掻く動作をしたら、みんなが注目したり『かわいいわね』と言ってくれたりした経験から、注目してほしいために掻いてみせるということもあります。さらに、カーミングシグナルとしてのストレスの回避行動や退屈しのぎで掻くこともある。これらをすべて皮膚のトラブルと考えてしまうのは間違いです」(斉藤先生)
加えていえば、暑さ寒さなどの気温変化や、皮膚が何かにこすれるといったような刺激によって生理的なかゆみが起こることもあります。この程度のことで過度に騒ぎすぎないようにということですね。

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たくさんの情報を重ねて総合的に判断

斉藤先生は、皮膚のトラブルで動物病院を訪ねるときの心得として、つぎのような話をされました。
「皮膚病は、診察時にとくに飼い主さんからの情報が重要になる分野だといえます。まず知りたいのは、その子の病歴、親犬や兄弟犬たちの病歴。こうした背景的なことがとても役に立ちます。さらに皮膚以外の気になる点や異常な状態、発症の季節性や発情との関係、食事の内容(現在だけでなく過去に何を食べていたかまで)、また性行動や排尿姿勢の変化などについても、できるだけくわしい情報をいただきたい。そして私たちは、これらを総合的に分析したうえで、どんな種類の皮膚病が考えられるかを判断していくわけです」(斉藤先生)

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斉藤動物病院の問診票を見ると、病変の様相やかゆみの程度、シャンプーの種類と回数、同居動物の有無、ノミの予防や不妊手術歴、家族にも似たような症状があるかどうかなどが書かれています。皮膚病の診断には、こうしたたくさんの情報が必要なんですね。

皮膚病とは何かを理解することが第一歩

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斉藤先生はまた、こうした総合的な分析と診断のもとに病気を確定できたとしても、簡単に治すことができないのが皮膚病なのだということを強調しておられました。
前述したように、犬たちの皮膚をむしばむ環境が亜熱帯の日本には多すぎるわけですから、これはやむを得ないのかもしれません。
「皮膚病は、多くの情報を総合して、鑑別診断リストから可能性のある病名を想定して診断的治療を行っていく代表的な疾患です。つまり時間がかかる。すぐに治してほしい、とりあえずかゆみを抑えてほしいと言われてハイそうですかと対処してよいものではありません。時間をかけて根気よく治療を続けていかなければならない病気ですから、その過程においては、飼い主さんと私たち獣医師、そして獣看護士との密なコミュニケーションが大切になります。ですから、わからないことや疑問に思うことがあれば、どんどん遠慮なく私たちに相談してください。動物の皮膚を治していくためには、飼い主さんが皮膚病とは何なのかを理解することが第一歩ということなのです」(斉藤先生)

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ただかゆみを抑えるだけではダメ

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