葬儀の際、マスクの色の正解は?
マスクをつけるのが日常になった昨今。装着感のよいものを吟味したり、不織布と布を使い分けたり、メイクや服に合う色を付けたりと、人それぞれこだわりがあるようです。
服装にはTPOがあり、とりわけ冠婚葬祭ではフォーマルな装いが求められます。マスクも服装に合わせるとフォーマルな印象を引き寄せることができますが、具体的にどんな色がよいのでしょうか? 今回は、葬儀で着用するブラックスーツに合わせた、マスク色の事例を見ていきましょう。
英王室・故フィリップ殿下の葬儀は黒いマスク
2021年4月17日、英王室の故エディンバラ公爵フィリップ殿下の葬儀が、ウィンザー城のセント・ジョージ礼拝堂にて行われました。公務を引退しているアンドリュー王子とヘンリー王子に配慮し、男性は軍服ではなく勲章付きのモーニングコート姿。男性も女性も黒いマスクを着用していました。キャサリン妃は、英ブランド「ローラン・ムレ」のブラックドレスに、エリザベス女王から貸与された4連パールのチョーカーを付けた、エレガントな装いが注目されました。
パールは、1970年代にエリザベス女王が日本を訪問した際、日本政府から女王へ贈られ、王室御用達ジュエラーのガラードによってチョーカーにアレンジされたもの。日英の親善の歴史を物語るロイヤルジュエリーのひとつです。
フィリップ殿下の生前の意向で国葬とされず、感染対策による規定で参列者30人に限定されましたが、極めて格式の高いご葬儀だったよう。ブラックフォーマルに黒いマスクを合わせる英国王室のスタイルは、私たち日本人にとっても、ひとつの指針となるでしょう。
故中曽根康弘元首相の葬儀は白いマスク
欧米では、これまで健康な人が街中でマスクをつける習慣はなく、白いマスクをつけるのは重病人というイメージがあったようですが、一方の日本では、花粉症の時期にマスクをつける習慣があり、白はマスクの定番色として親しまれています。2020年10月17日、中曽根康弘元首相の葬儀に参列された皇族方は、ブラックフォーマルに白いマスクを合わせていました。
また、皇族方が葬儀で黒をお召しになるときは、ジュエリーは白いパールではなくジェット(黒玉)を合わせます。ジェットとは、海底に沈んだ木が炭化し、黒い化石になったもの。ドレスもジュエリーも黒なので、白いマスクをつけると清廉なイメージになり、視覚的なバランスも整います。
皇居内の神殿には、国中の神々がまつられており、国民の幸せを祈る祭祀が大切に受け継がれています。皇族方が白いマスクをつけるのは、国民の多くが皇室に対して清らかなイメージを抱いていることも背景にあるでしょう。
香港、フランスの著名人の葬儀のマスクの色は?
香港では、2020年7月8日から10日にかけて、実業家のスタンレー・ホー氏の葬儀が執り行われ、ブラックフォーマルにマスクをつけた政財界の大物たちが参列しました。マスクの色は、黒と白が半々くらい。人数は多くないものの、淡いブルーやグリーンの不織布マスクをつけている人も見受けられました。フランスでは、2020年12月4日、元ラグビーフランス代表クリストフ・ドミニシ氏の葬儀が行われました。近親者はブラックフォーマルでしたが、約400人の参列者の多くは普段着。マスクは黒と白が多いものの、ブルー系も多く見られました。
ドミニシ氏の自伝のタイトルは『心はブルー (Bleu à l’âme)』。なぜブルー系のマスクが多かったのか、その理由は定かではありませんが、故人にとって特別な色を身につけることも、弔意を示すことになるうるのではないでしょうか。
日本の葬儀のマスク色、正解は?
日本における葬儀は仏式が多く、弔いを意味する黒と白の配色が用いられてきました。葬儀では華美な装いは好ましくないと考える人が多く、ブラックフォーマルには、パールの一連のネックレスを合わせるのが一般的。パールの色は白のほかに、黒、グレーも推奨されています。マスクの色も同様に考えると、白、黒、もしくは、グレーが好ましいのではないでしょうか。
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