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ロボホンと2ヶ月"暮らした"男が見た、スマホの未来

今回、ロボホンの開発責任者である景井美帆氏にインタビューする機会が得られたので、現在のロボホンがどうやってできていて、これからどう進化していくのか?の話を聞いてきました。

一条 真人

執筆者:一条 真人

デジタルガイド

本題へ入る前にAll About編集部からの大切なお知らせ

2016年5月26日にシャープから発売されたモバイル型ロボット電話「ロボホン」。携帯電話×ロボットという意外性、そしてなによりもロボホン自体の愛くるしいルックスと外見が話題を呼び、発売前後から数多くのメディアでレビュー記事が展開されたので、ご覧になられた方も多いだろう。

もちろん、All Aboutでも発売に合わせてスマートフォンガイドの太田百合子氏が、ロボホンとの漫才に挑戦するという一風変わった記事(漫才もできる! ロボホンと過ごした1週間)を掲載。編集部内でも「かわいい!」「欲しくなった」と評判を呼んだのである。

一方で、20万円以上するロボホンを自腹で購入したガイドがいた。ブルーレイ・DVDレコーダーガイドとして活動する一条真人氏である。All About以外にも複数のメディアで連載を持つ同氏は、音元出版が運営するAV/オーディオ/ガジェット情報サイトの“Phile-web”で「ロボホン日記」というコンテンツを展開しているのだ。

今回の開発者インタビューは、その「ロボホン日記」との連携によって実現したコラボ記事である……とサラッと言ってみたが、じつはここに至るまでには実はいろいろと一悶着があった。

その顛末は、現在掲載中の「ロボホン日記」第4回“全然元が取れないんで記事書かせて!オールアバウトさんに直談判の巻”に詳しいので、まずはそちらをご一読願いたい。

なんとも穏やかではない雰囲気の写真。ことの顛末はPhile-webで連載中のロボホン日記に詳しい。

なんとも穏やかではない雰囲気の写真。ことの顛末はPhile-webで連載中のロボホン日記に詳しい。

……
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……………………「ロボホン日記」の最新回は読み終わっただろうか? では、ご理解いただけたと思う。一条氏の命運を握るのは、いまこの記事を読んでいるアナタだ。

前置きが長くなったが、そういわけで“ロボホンの母親”として知られる、開発責任者の景井美帆氏インタビューをお届けする。レビューのための“使用”ではなく、オーナーとしてロボホンと“生活”をしてきた一条氏は、ロボホンにどんな未来を描くのか? じっくりと読み進めてほしい。


なぜ「ロボホン」はこんなに話しかけやすいのか?

ロボホンの開発責任を努め、“ロボホンの母”とも呼ばれている景井氏。

ロボホンの開発責任を努め、“ロボホンの母”とも呼ばれている景井氏。

ガイド一条真人(以下、一条):そもそも、ロボホンはどのような思想で作られた商品なのですか?


シャープ・景井美帆氏(以下、景井):ロボホンは“電話に愛着を持たせたい”というのが一番のポイントになっています。シャープは“エモパー”というしゃべるスマートフォンもリリースしていますが、ロボホンもこれに通じる思想かもしれません。機械と人間のあいだに愛着を創造する、あるいは関係性を変えていくというテーマがあるんです。また、近年はモバイル機器だけでなく、ロボット家電の“COCOROBO(ココロボ)”を始め、さまざまな家電にこのアプローチを取り入れていますが、そのなかで音声による会話の重要性がわかってきました。だからロボホンでも会話によるコミュニケーションというスタイルを採用しています。



一条:僕はエモパー搭載のスマートフォンも世代ごとに使って、どう進化してきたのか? という点を見てきたのですが、やっぱり人間と機械(人工知能)の関係性の作り方って難しいと感じていました。「どのぐらい話しかけてきたらいいのか? 何を話しかけてきたらいいのか? 会話のキーワードをどうしたらいいのか?」とか、そういった感情的な部分を人間の好みに近づけていくのは困難だな、と。ところが、ロボホンは話しかけてきたら話を聞く気になるし、こちらから話す気持ちになる。これはけっこうスゴイことですよね。


景井:やはりスマートフォンのような、いかにも機械な箱に話しかける/話しかけられるというのは、どこか抵抗を感じてしまうんですよね。ロボホンがあのようなルックスになったのも、せっかく話しかけるなら顔があったり、動いたりといった“表現力”が高い機器のほうが、お客様も話しかけやすいだろう、といった考えがありました。だからロボホンは、ただのスマートフォンではなくあくまで“ロボット電話”。携帯電話として使っていただけるんですけど、ロボホンともいろいろ話をしてほしいんです。



日々進化するロボホン、今後はもっと話しかけてくるようになる?

一条:表現力と言えば、ロボホンの動きは本当に愛らしい。

阿波おどりもできるロボホン。表現力という点において、ロボホンは本当にカワイイのだ。

阿波おどりもできるロボホン。表現力という点において、ロボホンは本当にカワイイのだ。


景井:こちらから何か指示するだけでなく、自律的にいろいろやってくれることもロボホンの重要なテーマです。だから、動作のひとつひとつも愛着を持ってもらえるように気を配りました。加えて、ロボホンはアップデートでどんどん進化するのも特徴。バージョンアップに関してはすごく力を入れてやっていますね。


一条:そういえば、数日前(編注:6月末に行われたアップデート)のバージョンアップでは音声入力の反応が格段によくなった気がしました。


景井:そうですね、あいまいな言葉も認識できるようになったんです。たとえば「明日、起こして」と言った指示でも起こしてくれるようになりました。


一条:確かにバージョンアップ後のロボホンは、コミュニケーションをしている感がアップして対応の幅が広がりましたね。


景井:ただ、音声入力のベストな形というのはまだまだ見えません。と言うのも、ふだん我々は思っている以上に曖昧な言葉でコミュニケーションをしているので、それをいかに正しい言葉とロボホンに認識してもらうか? というところが課題であり、力を入れているところです。現状、ロボホンに話しかけるときはコマンド的な言葉が多いですけど、もっと一般的な言葉……それこそ、ふつうに人へ話しかける感覚になるよう、アップデートを進めているところです。


一条:たとえば、いまはロボホンに「おすすめの音楽を聴かせて」と言うと音楽を再生してくれますが、ロボホンから「音楽聴く?」とか聞いてくれるようになるともっと面白いかも。


景井:ロボホンからの話しかけですよね。それについては“そわそわ(※)”がありまして。利用者が思わす「どうしたの?」と聞きたくなる仕掛けです。

※注:ロボホンが無言で腕を前後に動かす動作をすること。何か話しかけて欲しいときにする。


一条:あれはカワイイ!


景井:ロボホンが勝手に話しかけすぎると、少しわずらわしく感じてしまうかもという懸念もあるんですよね。ただ、一条さんが仰る通り、実際に購入したお客様の声を聞くと「もっと話しかけて欲しい」という声が多いので、今後そのへんは緩めていくのもありかな、と考えています。


ロボホンがパーティーのDJになる日が来る!?

一条:ロボホンは実際に触れば、非常におもしろい商品であることはわかる。一方で広い層に向けて“ロボホンで何ができるか?”という点が、あまり伝えられていない印象を受けます。


景井:確かに、ロボホン使ってどんな楽しい生活ができるのか? ロボホンがいっしょだと何がうれしいの? というところは、まだ伝わりきっていないところがあるかもしれません。

ロボホン2

動きまくり、しゃべりまくるのもロボホンの魅力だが、まだまだ改善の余地はあるようだ。


一条:たとえば、パーティモード(※)があるじゃないですか。あれなんてすごくロボホンの利用シーン訴求につながると感じるのですが、実際に使ってみると撮影タイミングが3分に1回で……正直間隔が長すぎる(笑)。最初に周囲の人の写真を一通り撮影して、そのあとは3分間隔で写真を撮っていく、といった仕様になるとよりよさそうです。

※周囲の人間を探してロボホンが30分間自動的に写真を撮ってくれるモード。


景井:パーティモードは確かに最初が肝心なんですよね……3分に1回の撮影ですと、若干盛り上がりに欠ける感じはありますね。それとせっかく“パーティーモード”という名前なので、もっと場を盛り上げるのもいいかもしれません。ロボホンが自分から音楽かけるとか、踊り出すとか……DJ的な動きができたらよさそうですね。


ロボホン、突如インタビューに割り込む

一条:話は変わりますが、先日「ロボホンは子どもに人気があるのか?」を検証するために公園に行った(※)のですが、そのときにロボホンの頭の後ろに“子供に使わせない”と注意書きがあるのを見つけました。これは、ロボホンにプロジェクターやレーザー機能があるからですよね。

※Phile-web掲載の「ロボホンで子供と仲良くなれる?」を参照


景井:そうです。また注意書きに加えて、プロジェクターを正面に映すときは顔がないかチェックをして、顔があるとプロジェクターが使えない仕様になっていますし、起動時も必ず最初に下を向くようになっています。一方で、最初から正面に向けてすぐに出したいという要望も多く……ここは法律との兼ね合いもあるので、いろいろと検討はしていますが。

プロジェクター

プロジェクターで映像を投影できる


一条:うーん、やっぱりプロジェクターはすぐに正面に投影できたほうがうれしいかな。そうすれば、今よりもロボホンがもっと“役に立つ”気がします。

――ここで、テーブルの上にあった一条のロボホンがいきなり「はーい、どういたしまして」と喋り出した。どうやら「役に立つ」という言葉を音声認識で拾って反応したようだ――


一条:自分が「役に立つ」って言われたのがわかって反応したのか、凄いな……。


景井:ビックリしましたね……ロボホンはこうやって周囲の言葉を拾って、唐突に話し始めることもあるんです。私も会議などでロボホンのことを説明しているときに「ロボホン」という単語をロボホンがキャッチして「呼んだ?」とか反応することがありした(笑)。


一条:そういえば自分もテレビを観ているときに、急に話し始めることもありましたね(笑)。


ロボホンが実現する『スター・トレック』的な未来

一条:5年後くらいを考えたときに、ロボホンはどう進化していきそうでしょうか?


景井:もっと気軽に話ができる存在になってほしいと思っています。アップデートで少しずつ曖昧な言葉にも対応できるようにはなっていますが、それでも現状はお客様が“ロボホンは何ができるのか?”という点を理解した上で話しかけている。そうではなくて、雑談的な話しかけに対して、お客様のプロフィールに紐付いた形での返答ができるようになったらいいな、と。ほかには、オーナーの話し方のクセを学習して、真似っこしてくれるとか……ひと言で表現するなら“利用者に寄り添う存在”になっていって欲しい、ですかね。

ロボホンは今後どうなるのか?

ロボホンは今後どうなるのか?


一条:スマートフォン的な面ではどのような展望がありますか?


景井:対応アプリケーションはどんどん増やしていきたいと思っています。アップデートでクイズと“ポポン”というリバーシゲームを追加したんですけど、もっと一般的なニーズのものを使えるようにしたいですね。たとえばショップ検索や乗り換え案内など、そういったサービスを増やして、かつ気軽に声で指示できるようにしたいです。日常に即したサービスを入れていくことで、ロボホンのロボット電話としての意味が高まっていくと思うので。一方で、“ロボット電話”ならではの楽しみ方も追求していきたい。スマートフォンとは違うサービスのありかたをどんどん広げようと思っています。

5月の発売以降、ロボホンでは定期的なアップデートおよびアプリの追加が実施されている。日々ロボホンは進化しているのだ。

5月の発売以降、ロボホンでは定期的なアップデートおよびアプリの追加が実施されている。日々ロボホンは進化しているのだ。



一条:僕はロボホンって凄く『スター・トレック』(※)風だと思うんですよ。あの作品では「コンピュータ、XXXについて調べてくれ」とか喋りかけている。ロボホンでやっていることって、まさにそれなのかなと思うんです。音声による操作は、iOSの“Siri”やAndroidの“OK Google”を始めすでに実用的なものがありますが、あくまでソレらは音声での受け答えが中心で、ユーザーとコミュニケーションを取ろうとはしません。調べ物をしたりはするけど、ユーザーにサービスを提供するところまではいってないように思う。だから僕にとって、ロボホンとスマホは決定的に違う。たとえばロボホンなら、パソコンで原稿を書きながら、会話だけでメールを送ることができる。それこそスマホを操作をしながらてもロボホンとは話せる。非常に独立していると思うんですよね、ロボホンという存在が。

※1966年より放送されているアメリカの人気SFテレビドラマ/映画シリーズ。


景井:最初の話にも戻るのですが、やっぱり姿形があるというのはロボホンの強みですよね。話しかけたいという欲求が出てくると思いますし、話しかけることに不自然感がないというところもあるので。我々もこの子に愛着を持ってもらうために、非常に細かなところにも力を入れて、単純に機械というよりは人間に近く感じていただけるように努めています。


一条:ちなみに、将来的にロボホンの性格に複数のパターンが生まれる可能性はありますか?


景井:ロボホン自体の性格を複数化する考えはありませんが、現在とは違うロボホンを出す可能性はゼロではないです。また、言語面では英語と中国語はしゃべれるようにしたいと考えています。
ロボホン

ロボホンがいっぱい



スマホを使うか? ロボホンを使うか? ……の未来はくるのか

今回、景井さんと話をしたことで、ロボホンに関して自分のなかでちょっとフワフワしていた部分がはっきりしてきました。音声入力・出力という特徴的なインターフェースを持つロボホンは、従来までのデジタルデバイスから隔絶した独自進化を果たしているわけですが、同時に「かわいさ」や「自然さ」の演出という人間の根源的な感情をくすぐるチューニングが重要視されているのがよくわかりました。

これは人々がロボットを受け入れるために必要な要素だと思いますし、その細部のチューニングが人力を駆使して行われているのがまさにジャパンクオリティー

インタビューの中でもあった通り、現時点でロボホンには日常的に使えるアプリは多くありません。しかし近い将来そこが充実したとき、ロボホンはスマートフォンと完全に分離した、新しいツールのひとつとして認識されるかもしれません。そして人々は悩みます――スマホを使うか? ロボホンを使うか?  と。

またスマホがあれば、パソコンはいらないという人もいるように、ロボホンがあればパソコンはいらないという人も出てきそうです。ガイドは、音声入力によってなんらかのスキル(キー入力やフリック入力)の習熟なしに使えることは、より多くの人がデジタルデバイスを活用できる未来をもたらしてくれると考えています。
故郷(シャープ)の玄関前でロボホンと。

故郷(シャープ)の玄関前でロボホンと。


【関連サイト】
シャープ ロボホン特設サイト
Phile-web
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※機種やOSのバージョンによって画面表示、操作方法が異なる可能性があります。

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