脳・神経の病気

もやもや病の症状・診断・治療

「もやもや病」は、太い脳血管が閉塞し、細い側副血管が発達する病気です。脳出血ないし脳梗塞として発病します。出血、梗塞の治療を行いますが、新たな発作を予防するための血行再建術があります。専門的な治療が必要です。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

「もやもや病」とは

脳血管であるウィリス動脈輪が狭くなり閉塞してしまう病気です。血管閉塞に伴い側副血行と呼ばれる細い迂回血管が発達し、「もやもや」した細い血管が目立つことから「もやもや病」という病名がつけられています。英語でも「Moyamoya disease」となっており、同じ病名です。

ウィリス動脈輪

      脳血管のウィリス動脈輪が障害されます。


太い脳血管が閉塞し、細い毛細血管が発達する病気です。

血管造影

脳血管造影。太い血管の閉塞ともやもやした側副血管がみられます。


もやもや病の分類

  • 小児もやもや病
    10歳までに発症することが多く、虚血発作となる場合が多いです。
  • 成人もやもや病
    40歳前後に多く発症し、出血発作となる場合が多いです。

もやもや病の年齢、性差

発病のピークは10歳までと40歳前後の二つの年齢です。女性に多い疾患で2/3の割合で発症します。男性が残りの1/3となります。

原因としては、RNF213遺伝子の異常が関連するとされています。遺伝性疾患のひとつです。

もやもや病の症状

小児に多い虚血発作は過呼吸で誘発されます。過呼吸で血中の二酸化炭素濃度が減少すると血管が収縮し、もともと乏しい脳血流が減少し、虚血状態となります。進行すると脳梗塞を合併します。具体的な症状としては頭痛、痙攣、運動麻痺、精神発達遅延、知能低下などとなります。

成人では出血発作の場合、運動麻痺、痙攣、頭痛、意識障害の症状が出現します。虚血発作となった場合脳梗塞を合併することもあります。

もやもや病の診断

■CT
脳出血、脳梗塞の診断をつけることが診断に結びつきます。

CT

頭部単純CT像。脳出血の診断です。


小児で脳出血を認めた場合、もやもや病の可能性が高くなります。

■MRI
急性期の脳梗塞診断にはMRIが必要です。

MRI

                      頭部単純MRI像


MRIでは出血、梗塞以外の脳の構造がより明瞭に診断可能です。

■脳血管造影ないしMRA
もやもや病の確定診断及び治療のための診断には脳血管の詳しい情報が必要です。脳血管造影ないしMRA(MRIを用いた脳血管造影)が施行されます。

血管造影

脳血管造影。太い血管の閉塞ともやもやした側副血管がみられます。


もやもや病の治療法

脳出血ないし脳梗塞の治療を行います。しかしながら閉塞した太い血管の治療は薬物治療には反応しません。そのためいくつかの手術治療が選択されます。

■直接的血行再建術
浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術などの血流を増やす手術があります。
血管

浅側頭動脈中大脳動脈の血管吻合術


血管吻合の形式ですが、端側吻合という術式が用いられます。最終的に、二つの血管がT字型になります。

端側吻合

中大脳動脈の側壁に浅側頭動脈を縫合します。端側吻合という方法です。


■間接的血行再建術
血流が豊富な組織、硬膜、側頭筋、浅側頭動脈などの組織を移動し、脳に接着して血流を増加させる手術です。血管吻合が必要ないので、手術が比較的簡単にできるのが特徴です。

もやもや病の予後

もやもや病の予後は良好とはいえません。しかし血行再建術により予後が改善されることが証明されました。適応のある方は脳外科の受診をお勧めします。


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