スズキ・アルトターボRSは、やはりAMTに足を引っ張られている?
久々に登場した「手頃な価格で買えるスポーティモデル」であるアルトターボRSの試乗会が行われた。果たして期待通り楽しいクルマなのか? それとも普通のアルトでも厳しく評価されている、日本では圧倒的に人気の無いAMT(マニュアル5速の変速機を油圧で動かす。スズキはAGS【オートギアシフト】と呼ぶ)に足を引っ張られるか?ということで、さっそく試乗してみた。セレクトレバーをDレンジにして走り出す。すると典型的なAMTである。すなわち「スタートしてある程度の速度になったら自動でクラッチが切れ、油圧で2速にシフトアップ。続いてクラッチ繋いで駆動力掛け加速」を4回繰り返す。ドライバーが意図していないタイミングで変速するということ。
ガイドは以前『スマート』というAMTタイプのATに乗っていたけれど、最後まで慣れず。いや、正確に表現すると「手放すまで不快」でした。とにかく変速中の「全く加速しない時間」がイヤな感じなのだ。おそらく多くの日本のユーザーは私と同じ感性なんだと思う。AMTタイプのATで人気のあるモデルなど存在しない。
アルトターボRSも「ぐわーっ」っと加速し、カンペキに無反応の時間あり、再び勝手に「ぐわーっ」っと加速する。スズキが何でアルトターボRSのような「走りを楽しむクルマ」にAMTを採用したのか、その意図は全く解らない。理由を聞いてみたら「生産台数が少ないので」。だったら普通のマニュアル5速かCVT(無段階変速機)で良いと考える。
どうやらAMTを開発して普通のアルトや商用車に搭載してみたが、あまり評価されない。だったら人気車になること確実のアルトターボRSに付けてイメージアップしようという作戦らしい。これは明らかに間違いだと思う。むしろAMTのフィーリングの悪さを宣伝しているようなもの。とにかく失望しかしなかった。
変速していない時の加速は素晴らしく、登り勾配でもグイグイ加速!
ところが同業者のレポートを読むと絶賛しているケースもある。私だけ違和感があるのか、それとも普通に違和感はあるのに絶賛しているのか、気になる方はぜひともディーラーで試してみたらいい。Dレンジでなくマニュアル操作モードでギアを変えても、やっぱり変速タイムラグ大きい。この一点だけでもアルトターボRSの魅力を大きく落とす。一方、潜在性能という点からすれば高い。普通のアルトより重くなっているとはいえ車重が670kgしかない。変速してない時の加速感たるや「素晴らしい」。登り勾配の多いワインディングロードでもグイグイ加速していく。ホンダ入魂のスポーツカーであるS660より200kg近く軽いのだ。このくらい動力性能なら、スポーティモデルと言って問題なし。
そうそう。AMTだけでなく足回りもイマイチだった。高い性能を持つタイヤを履いてるためにコーナリング速度こそ高いものの、ステアリングの操作力が妙に渋く、路面感覚を掴みづらい。サーキットのように多少滑っても問題ないようなコースなら良いけれど、狙ったラインをキッチリ走りたい時は不安。乗り心地もゴツゴツしていて質感無し。
ただ129万3840円という価格は大いに魅力的だ。だからこそ「売りたいから」というスズキ側の都合のAMTでなく「欲しい」というユーザー側の希望を汲んで普通の5速マニュアルにして欲しい。もしATのニーズが大きいなら、これまたCVYでOK。S660のCVTに乗ったら楽しかったですから。遠くない時期にマニュアルを追加すると思う。
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