メキシコじゅうが生き生きと輝く「死者の日」とは?
2003年に「死者に捧げる先住民の祭礼行事」として、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのが、メキシコのお盆にあたる「死者の日」(Dia de muertos)です。毎年10月31日~11月2日の3日間に、故人の魂がこの世に戻ってくるとされ、各家庭に祭壇が設けられたり、先祖の墓を飾り付けたりします。この時期は町じゅうがカラフルな切り紙の旗、楽しく笑うガイコツの人形や、鮮やかなオレンジのマリーゴールドで彩られます。墓地ではマリアッチの演奏も行われる
死者の日の骸骨メイク
2018年公開のディズニー/ピクサー映画『リメンバー・ミー』ではメキシコの美しい「死者の日」が描かれました。 (C)2018 Disney/Pixar
キャンドルがあふれかえる、 美しい墓地。 (C)2018 Disney/Pixar
死者の日の飾り付け
死者の日の祭壇は故人の魂が訪れて、飲食をし、休憩する場所です。供えられるものや、飾り付けのひとつひとつに意味があります。■マリーゴールド 死者の日を象徴する花が、オレンジ色のセンパスチル(cempasúchil)ことメキシカン・マリーゴールドです。無数の花びらがあることから、先住民言語ナワトルでは、ひとつの花のなかに20の花が詰まっているといわれ、太陽の色と熱を込めていると信じられてきました。祭壇や墓の前に、強い香りと色を持つセンパスチルの花びらを並べておけば、故人の魂が迷うことなく戻ってくるとされています。センパスチルと供に赤いケイトウや白いカスミ草も飾られます。
■死者のパン 祭壇に欠かせないのが、死者のパン=パン・デ・ムエルト(Pan de Muerto)。地方によってパンの形は異なりますが、代表的なものは丸く、中央に骨を象ったものがついていて、砂糖がまぶしてあり、ほんのりとオレンジの風味がします。先スペイン期では、アマラント(ヒユ科の種子)または、トウモロコシの粉をマゲイ(竜舌蘭)の蜜や、ハチミツで味付けし、蝶の形をしたものを祭壇に供えていました。それが、カトリック教の普及により、イエスの体をパンに例えたことに由来して、小麦粉のパンに替わりました。
■カラフルな切り紙の旗 室内や祭壇に飾られるカラフルな切り紙の旗(パペル・ピカド=Papel Picado)の由来は、メソアメリカ文明で、アマテの木の樹皮からできた紙に絵を描き、神に捧げる祭壇を飾り付けていたものです。この飾りは、スペイン侵略後に、薄いシフォンのような紙を使用するようになり、メキシコの祭事に使用される旗となりました。見た目は中国の切り絵に似ていますが、まったく異なる製法で作られており、一枚一枚をハサミで切っていくのではなく、50枚ほど重ねた紙に、たがね、のみ、ハンマーを使って、抜き切りながら柄を作りあげていきます。
■コパル 先スペイン期より使われるコパル(Copal)の木から採れるお香で、いぶしたような強い香りが特徴。悪い精気を浄化する力があり、故人がつつがなく家へやって来られるようにします。
■ろうそく ろうそくの火は故人の魂を導き、迎えるための光、恩恵、希望の意味が込められています。かつては、オコーテ(松の一種)の葉を燃やしていましたが、現在は蝋燭を灯すようになりました。
そのほか祭壇には、塩(空気を浄化するため)、水(命の根源。故人の魂が長い旅による疲れを癒し、また天国へ戻る際の英気を養うため)、故人の写真や故人の好物(大人であれば酒の瓶、タバコなど、子どもだったらおもちゃなど)、フルーツ、さとうきび、カカオとスパイスで作ったソース、モーレ料理や、飲むチョコレートのチョコラテなども供えられます。料理、チョコラテ、死者のパンなどの食物は祭壇に捧げられた後に、家族でいただきます。
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