11月、東京凱旋公演が開幕!
2013年4月に東京・帝国劇場で開幕し、博多、大阪、名古屋と各地を巡演してきた『レ・ミゼラブル』が11月、東京へと帰ってきました。『レ・ミゼラブル』2幕「彼を帰して」を歌うバルジャン(福井晶一) 写真提供:東宝演劇部
この日のバルジャン(福井晶一さん)は、これまで筆者が観た中でおそらく最も、言葉を聞かせるバルジャン。流麗なメロディに言葉を埋もれさせも雰囲気で流しもせず、歌詞を細やかに吟味し、立てるべき言葉を立てて歌っています。この歌唱はとりわけ序盤、激しく揺れ動くバルジャンの心情を浮き彫りにし、観客の心を一気に彼のそれへと引き寄せて効果的です。
『レ・ミゼラブル』エピローグ。写真提供:東宝演劇部
例えば映画版ではバルジャンの艱難辛苦が強調され、それに立ち向かう人間の魂の崇高さが印象付けられていたように、骨子は同じであっても本作がもたらす感慨は、主人公・バルジャンの造型によってさまざまに変化します。今回の福井バルジャンは、何より「愛する対象を持つこと」の幸福、そしてそれが時に(ジャベールが信じるところの)「正義」を凌駕するほどの強さを持ちうることを示すバルジャンであると言えるでしょう。
『レ・ミゼラブル』エポニーヌ(綿引さやか) 写真提供:東宝演劇部
ひとまずはこの凱旋公演で幕を閉じる、『レ・ミゼラブル』新演出版。公演中は毎回、当日券も出るそうです。舞台写真はもちろん、本作の生みの親ともいえるプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュへのインタビューなど、新たな要素も盛り込まれたプログラムも読みごたえ十分です。
*公演情報*『レ・ミゼラブル』2013年11月27日まで上演中=帝国劇場