起業・会社設立のノウハウ/起業・独立開業の準備

起業時のバーチャルオフィスの活用法と注意点(2ページ目)

起業家に人気のバーチャルオフィス。低価格の賃料で都市の一等地などに本店所在地を持てるなど多くのメリットがあります。一方、事前に知っておくべき多くの注意点もあります。会社設立後に後悔をしないためにも、注意点を事前に知った上で、上手に活用したいものです。また、乱立するバーチャルオフィスの中でどう選べばよいのかなど、起業コンサルタント(R)であるガイドが多くの起業支援経験で得たノウハウを公開します。

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド


バーチャルオフィス検討時に事前に知っておくべき注意点

バーチャルオフィスの弱点も事前によく知っておこう

バーチャルオフィスの弱点も事前によく知っておこう

このように起業家にとってメリットばかり目立つバーチャルオフィス。ただ、その一方で弱点や大きな落とし穴も多数あるのですが、バーチャルオフィス側で、契約前にそうした説明をしてくれるとは限りません。起業家がバーチャルオフィスを利用して起業を検討する場合、専門家に相談するなど事前に弱点も知ったうえで、これから展開しようとしているビジネスが、バーチャルオフィスの利用により問題が発生しないか、よく検討しておきましょう。

1.世間の信用
起業すれば誰しも、営業年数0年の会社という低い信用状態からのスタートです。そこでバーチャルオフィスを利用し、起業当初にも関わらず都心の一等地などを本店所在地として信用を補完することも可能になります。

ただ、その点が逆にデメリットにもなりえます。起業してすぐに都心の一等地に本店を構えること自体、相手によっては怪しい会社と思うかもしれません。また、バーチャルオフィスの住所でweb検索した場合、同じフロアを本店に持つ会社のwebサイトがズラッと表示されることになります。一般消費者や取引先がこうした検索を実施した場合、逆に不信感をもたれる可能性があることにも留意しましょう。

さらに昨今、振り込め詐欺グループによる犯罪が、バーチャルオフィスの住所を悪用して行われていたケースが発生し、今年に入ってから特にバーチャルオフィスが本店所在地である会社に対しての行政のチェックが強化されています。各種手続きを進める上で、そうしたチェックが負担になるという影響も出始めているため、注意が必要です。

2.会社銀行口座の開設
前述の犯罪への警戒などから、今年に入り、新規に設立した会社への金融機関の警戒も厳しくなっています。そのため、会社設立後に銀行口座を開設するだけでも容易なことではありません。

例えば、
  • バーチャルオフィスを利用していないケースで、会社設立後、都市銀行の支店に誰の紹介もなくふらっと銀行口座の開設に行ったところ、奥から支店長が出てきて何の審査もなく、口座開設を断られた
  • バーチャルオフィスを本店所在地として予定し、事前に都市銀行、地方銀行、信用金庫と5,6行に口座開設が可能かどうか相談に行ったところ、全部断られた
というケースも報告されています。

このような状況の中、バーチャルオフィスを本店所在地とすることで信用面でのハードルを上げてしまい、銀行口座の開設すらもなかなかできないという事態も多数発生しています。

金融機関や支店によって、審査基準や審査の厳しさはまちまちですが、一般的に新規に会社設立した会社が銀行口座を開設するにあたり審査される内容は以下の通りです。
  • 事業の内容(登記簿謄本の事業目的や事業計画書で確認)
  • その事業について役所の許認可を受けているかどうか
  • その支店との取引実績がゼロかどうか
  • 事業の実績(個人事業での実績など)
  • 信用できる紹介者がいるか
  • 本店所在地が支店管轄内かどうか
  • 代表取締役が信用に足る人物か
  • そのオフィスで実際に事業をしている形跡
  • 金融機関の職員による訪問調査 など
現在のこのような状況がある以上、バーチャルオフィスの契約前に、この点がクリアできる金融機関があるかどうか確認してから契約することをオススメします。また、バーチャルオフィス側が金融機関を紹介することが可能かどうかも確認してみましょう。

3.許認可
バーチャルオフィスの利用で、こんなはずではなかったという問題が後になってから起きる典型的なケースが許認可関係です。事業を進めるにあたり、近い将来も含み許認可が関係してくる可能性がある場合、事前に慎重に調べておくことをオススメします。例えば、一般派遣業、特定派遣業、有料職業紹介などの人材業では、バーチャルオフィスを利用しての起業・独立は要件を満たさない可能性があります。こうしたことが後から判明すると、許認可の取得を諦める、許認可のために本店移転を強いられるなどの余分な時間と出費が発生する可能性があります。行政書士、社労士などの専門家に事前に確認したうで、十分に注意して進めましょう。

4.創業融資
起業後に自治体の創業融資を受けたいという希望がある場合も注意が必要です。バーチャルオフィスを本店所在地にしていると、その自治体内に事業としての実態がないとみなされ、そのままでは審査を通過できないことがあります。自己資金内でのビジネスではなく、創業融資を受けたいという希望がある場合、バーチャルオフィスの契約前に専門家に確認することをオススメします。

5.社会保険、雇用保険など
社会保険や雇用保険への加入を予定している場合も注意が必要です。バーチャルオフィスを本店所在地としていると、事業としての実態がないとみなされ、新規適用手続きを受け付けてもらいない可能性があります。この点も事前に社労士などの専門家に確認しておきましょう。

6.コスト
バーチャルオフィスを利用する場合、通常の賃貸物件に比べて、コストを下げられることを期待する起業家も多いはず。ただ、オプション料金がかかりすぎて結果的に高額になるケースもあるため、注意が必要です。例えば、秘書代行サービスや面談スペースを多用してしまうケース。面談スペースは利用1時間あたり2,000円~1万円ほどのオプション料金が発生するため、毎日頻繁に利用するようであれば、基本料金と合わせると家賃7~8万円のワンルームマンションなど通常の賃貸物件の家賃よりも上回ってしまう可能性もあります。事前に利用方法とコストについてシミュレーションしてみることをオススメします。

7.スペースや荷物受け取りなど
ビジネスモデルによっては、オフィスに本人限定受取りの郵便物、書留郵便、大きな宅配便などが届くというケースもあります。こうした荷物の受け取りや保管も依頼できるかどうか、契約前によく確認しておきましょう。

8.契約内容
バーチャルオフィスによっては、1年契約の途中で解約する場合には残りの賃料を全額払わなければならないという、起業家にとっては酷な契約内容になっているところもあります。契約前に、必ず契約書、約款等を熟読して、慎重に契約されることをオススメします。

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