よくわかる政治

更新日:2005年02月21日

悲劇の国 スーダンってどんな国?

ビジネス 編集部 写真

日本がスーダンPKO(国連平和維持活動)に参加する方針です。名前はちょくちょく聞きますが、いったいどんな国なんでしょう。どうも独立の時から内戦の絶えない国のようですが・・・詳しく解説します。

1ページ目 【イギリスの南北分断統治がのちの内戦の種に】
2ページ目 【北部主体のスーダン独立と2度にわたる南北内戦】
3ページ目 【国際社会から「忘れられた土地」ダルフールの悲劇】

【国際社会から「忘れられた土地」ダルフールの悲劇】
 

アフリカ系とアラブ系が共存していたダルフール

ダルフールは、1ページ目でも書いたとおり、フール人の国です。ダルとは、国、という意味で、フール人の国、これがダルフールの語源です。フール人はアフリカ系の黒人です。

ダルフールは、17世紀(16世紀という説もあり)に王朝が作られ、イスラムを取り入れて発展しました。

とはいっても、ダルフールはフール人だけが居住しているわけではありません。マサリート人、ダジュ人、ザガワ人、バルティ人などと共存しています。その多くは定住農耕民族です(ザガワ人は遊牧民という情報もありますが)。彼らもまたイスラムを取り入れています。

そして、ダルフールにはさらに、アラブ系のリザイカート人(またはバッカーラ人。バッカーラ人をさらに分けてリザイカート人)が住んでいます。当然イスラムです。彼らは遊牧民なので、フール人たちとは違いあちこち廻って生活しています。

ダルフール紛争の開始

このフール人とリザイカート人の対立は前々からあったようです。砂漠化の進行でリザイカート人の牧草地がなくなったため、リザイカート人が徐々にフール人の居住地に接近するようになったころから、両者の緊張関係は増していったようです。

1975年くらいから紛争は起こっていたようです。1980年代にはダルフールの自治が認められたりしたようですが、1985~88年には早くも内戦化していました。

そして1990年代になると、アラブ系民兵ジャンジャウィードによるフール人・マサリート人村襲撃が起こるようになり、2001年からは頻発するようになります。しかし、アラブ系スーダン人の多い北部政府は、なにも手を打ちません。

そうしたなか、スーダン解放軍(SLA)正義と平等を求める運動(JEM)が2003年、相次いで蜂起し、ダルフール紛争が本格化したのです。

そして、ジェノサイド(集団虐殺)へ

フール人とマサリート人の反攻に対し、ジャンジャウィードは、同じアラブ系が中心の政府空軍の空からの援護を受け、攻撃をエスカレートしていきます。当然、圧倒的にジャンジャウィードが有利で、次第にダルフールは黒人虐殺・虐待の舞台となってしまいました。

ダルフールでいったい何人死んだのか、正確な数字はわかりません。7万人という数字が出ていますが、どうでしょう。「莫大な」というしかありません。160万人の難民が生まれています。

(スーダンの人口が約3700万人。フール族は『スーダンにおける国民統合』(富田正史著、晃洋書房)によると人口の2%といいますから、ざっと74万人。難民数が事実とすると、被害にあっているのはフール人だけではないのでしょうか。)

そして、「民族浄化」、つまり女性へのレイプが頻発しています。これも実数はつかめませんが、NGO「国境なき医師団」の日本語サイトの情報などをみると、1つの診療所で1ヶ月10数名のレイプ被害者を治療しているといいます。ダルフールなんてそんなに人が住んでいるところではないので、これは異常な事態です。

ご存じの方も多いと思いますが、アフリカはHIVの感染者が多いところです。被害を受けた女性は望まない妊娠だけでなく、HIV感染の脅威にもさらされているのです。もちろん、レイプされた後殺害されたと見られる女性も見つかっているようです。

遅きに失した国際社会の対応

国際社会も動き始めています。アメリカが一番先鋭的で、ダルフールの悲劇を「ジェノサイド(集団虐殺)」と明言し、スーダンへの制裁と、加害民兵たちを対象にした戦犯法廷の設置を訴えています。

国連調査委員会は、少し引いて「ジェノサイドの意図があった」と報告しています。これには、制裁に反対する中国の感情を考えたものです。中国はスーダンに石油利権があるため、制裁には及び腰です。もっとも中国は先進国の内政干渉には敏感ですが。

それにしても、なんでここまで来るまで、国際社会はなにもしなかったのでしょう。「できなかった」ではすまされません。いろいろな国際紛争があったなか、ダルフールは大きな紛争が起こる徴候がありながら、「忘れられた」地域だったのです。

ダルフール紛争が本格化したのはイラク戦争開戦より少し前です。アメリカなどの先進国は、ダルフールで一方的に殺害・暴行・レイプされている黒人たちよりも、フセイン政権の圧制の下でも、なんとか最低限の市民生活を送っているイラク人たちを救いたかったのでしょうか。

何と言い訳したところで、結果的にはそうなってしまっているわけで。日本もアメリカに同調した国ですから、道義的責任は免れません。

※ユニセフがダルフール緊急募金を募っています。こちらをごらんください。一番下に振込先がありますが、できれば最初から見ていただいた方がいいと思います。

◆各国情勢・紛争についてはここをチェック! 各国情勢・紛争

●こちらも要チェック!
政治についての基本知識と基本用語
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(執筆者:辻 雅之)

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