セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

ゲイもノンケも愛せるスゴ本『じりラブ』

前職の歌川さんがコミック本を出しました! 笑って読めるのはもちろん、ツレちゃんとのほのぼのした日常にほっこりしたり、泣けたり、心の栄養にもなるような一冊。歌川さんの驚異的なパワーがみなぎるスゴ本です。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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じりラブ
" target="_blank">じりラブ
うたぐわ/集英社/1000円
もともとこのAll About[同性愛]のガイドを務めていた歌川泰司さん(うたぐわさん)。仕事の都合で昨年6月にガイドを辞めて以来、ツレちゃんや周りの濃いキャラの人たちとのドタバタを漫画にしてblog「♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です」に毎日アップしてきました。が、このたび、blogの記事に描き下ろし作品やエッセイを加えて一冊にまとめた本『じりラブ』を発表しました。

『じりラブ』は、うたぐわさんとツレちゃんの日常を描いただけでなく、世間の人たちを知らず知らずのうちにゲイのお友達にしてしまうような魅力と、自分自身も元気になれるような驚異的なパワーを持つエッセイ漫画です。

ふつうに漫画としてゲラゲラ笑って読めますし(毒がたっぷり!)、栄養も満点な(心の薬にもなるのです)スゴ本です。
騙されたと思ってぜひ、一家に一冊お求めください。

今回はこの『じりラブ』の魅力とスゴさについてお送りします。


愛と笑いが世界を変える


じりラブ
昔からこのサイトを読んでくださっている方はご存じだと思いますが、うたぐわさんはもう10年もいっしょに暮らしているツレちゃんというアイカタさんがいます。2人ともリーマンですが、ご飯を作ったりするのはもっぱらうたぐわさん。一方、ツレちゃんが担当してるのは、茶助(ねこ)の面倒を見ることとダンスくらい(ツレちゃんはアイドル好き)。ツレちゃんが炊飯ジャーの内釜でお風呂の残り湯を汲んでしまうあたりは思わず吹いちゃう系。本当にオモロい「夫婦」です。と言いながらも、2人が21世紀を迎える瞬間のエピソードはとてもアツくて素敵です。

じりラブ
「男同士、じりじりするけど、愛がある」というキャッチコピーの『じりラブ』は、そんなうたぐわさんとツレちゃんのおもろラブリーな日常を描いた漫画です。と見せかけて、実際に読んでみると、もっともっといろんなことが描かれている傑作でした。
 
うたぐわさんはAll About[同性愛]のガイドとして新聞に名前と顔写真が載るという全国的なカミングアウトを果たしたツワモノ(2001年当時、相当な勇気が要ったことでしょう)。なので、会社の人も全員、彼がゲイだと知っています。
女性社員はすんなり味方になってくれますが(中には天敵みたいなキャラも登場しますが)、ノンケ男性社員の中には「オカマキモい」とか「俺は襲うな」とか「社員の誰が好きなんだ」とか、デリカシーのなさまるだしな人もいて…でも、うたぐわさんはめげません。ちゃんとみんなに平等に「デレデレ」してあげたり、笑わせたり、ときにはサシで食事したりして、ゲイのことを1つ1つ理解してもらい、みんなとなかよくしていったのでした。
上司がうたぐわさんを守ったり、その涙ぐましい努力が報われたときのうれしさ、絶対にゲイのことを悪く言わない味方が現れたときのエピソードなどは、思わずジーンとさせられます。

うたぐわさんは親戚の集まりでも、サイトを見た人からゲイであることを全員中にバラされてしまいます…その結末は…ぜひ本で確かめてみてください。

そして、二丁目のことを描いた最後の章では、いろんなキャラのゲイたちが登場し、二丁目のキホン(捨てるゴミなし、とか)をいろいろ紹介しつつ、家族にカミングアウトした人やパレードの感動話なども盛り込まれていて、見事なゲイガイドになっています。

もともとのblog「♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です」自体もそうですし、『虹色』での連載「ノンケのためのゲイのトリセツ」もそうですが、『じりラブ』は世間のノンケの方々にゲイのことを理解していただき、味方につけるための格好のテキストと言えます。なにしろ漫画なので小難しさも高飛車な感じもいっさいなく、友達や家族にカミングアウトする際のツールとしても絶大な威力を発揮するハズです。
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