全世界遺産の22.7%が自然遺産!
世界遺産には文化遺産、自然遺産、文化遺産と自然遺産の特徴をあわせ持つ複合遺産の3種類がある。2011年7月現在、世界遺産計936件のうち、183件で19.6%を占めるのが自然遺産だ。28件存在する複合遺産も自然遺産登録基準を満たすので、22.5%の世界遺産が自然遺産の価値を持つことになる。自然遺産とはいったいどんなものなんだろう?
自然遺産ってなんだ?
「黄龍の景観と歴史地域」(中国)の五彩池
世界遺産に登録されるためには、10項目ある登録基準を1項目以上満たさなければならない。このうち、登録基準(vii)~(x)のみを1項目以上を満たした物件を「自然遺産」という。
■自然遺産の登録基準((i)~(vi)は文化遺産登録基準)
(vii) 類まれな自然の美や美的要素を有した自然現象、または地域を含むもの
(viii) 生命の記録、進行中の地形発達の重要な地質学的過程、または重要な地形学的・自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を示す顕著な例であるもの
(ix) 陸上・淡水・沿岸・海洋生態系・動植物群集の進化や発展において、進行中の重要な生態学的・生物学的過程を示す顕著な例であるもの
(x) 生物の多様性保全の観点から、重要な自然の生息・生育地があるもの。学術上・保全上の観点から、顕著な普遍的価値を有し、絶滅の恐れがある種を含むもの
なお、2005年以前は登録基準は文化遺産(i)~(vi)、自然遺産(i)~(iv)とナンバーが文化・自然それぞれに振られていたが、現在は上記のように通し番号になった。以前の自然遺産(i)は(viii)、(ii)は(ix)、(iii)は(vii)、(iv)は(x)に対応する。
「ロス・グラシアレス」(アルゼンチン)のペリト・モレノの青い氷河
これに加えて、世界自然遺産になるためには完全性を満たし(「世界遺産の基礎知識」参照)、さらに国内法によって保護されていなければならない。国内法については、日本では自然公園法が主にその役割を担っている。
自然遺産の内容については、世界遺産条約第2条で下記のように定義されている。
■世界遺産条約第2条
この条約の適用上、自然遺産とは次のものをいう。
- 無生物、生物の生成物、あるいは生成物群からなる特徴ある自然地域で、観賞上または学術上、顕著な普遍的価値を有するもの
- 地質学的、地形学的形成物及び脅威にさらされている動植物の種の生息地や自生地として区域が明確に定められている地域で、学術上または保存上、顕著な普遍的価値を有するもの
- 自然の風景及び区域が明確に定められている自然地域で、学術上・保存上あるいは景観上、顕著な普遍的価値を有するもの
「ハロン湾」(ベトナム)の奇観
自然遺産については、各国から推薦された物件が世界遺産にふさわしいものかどうか、NGO(非政府組織)であるIUCN(国際自然保護連合)が現地調査を行い、報告書を作成し、記載・情報照会・記載延期・不記載の4評価で判定を行う。これらの報告をもとに、毎年1度開催される世界遺産委員会で登録の可否が審議される。
IUCNでは、連続している自然の中でも特に重要な場所を「保護地域」と定め、管理を行っている。保護地域は、「生物多様性及び自然資源や関連した文化的資源の保護を目的として、法的あるいは他の効果的手法により管理される、陸域または海域」と定められている。この保護地域には6つのカテゴリーがあり、下記のように大別されており、世界遺産でもだいたい同じような概念が適用されている。
1.厳正保護地域・原生自然地域
学術研究もしくは原生自然の保護を主目的として管理される保護地域
2.国立公園
生態系の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域
3.天然記念物
特別な自然現象の保護を主目的として管理される地域
4.種と生息地管理地域
管理を加えることによる保全を主目的として管理される地域
5.景観保護地域
景観の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域
6.資源保護地域
自然の生態系の持続可能利用を主目的として管理される地域