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任天堂とソニーの「宣伝」に見える明暗(2ページ目)

PS3の三倍も売れているWii。これほどの差がついた理由は色々ありますが、当記事では任天堂とソニーの「宣伝」の違いに注目して、これからの両陣営の動きを占ってみることにしましょう。

執筆者:川島 圭太

PS3「苦戦」のひとつの理由

すでに300万台以上を売り上げているWiiに対し、PS3は7月時点で約100万台の売り上げに留まっています(数値はこちらの記事より)。Wiiに大差をつけられてしまったPS3ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。「価格の割高感」「ソフト不足」など、理由はいくつか挙げられますが、どうやら「プロモーション」もPS3の苦戦に少なからず影響しているようです。

PS3の公式サイト。Wiiのような体験映像は少ないが、機能解説や開発者インタビューなどが充実。

PS3のコマーシャルといえば、『ガンダム無双』で無数の敵を蹴散らしていくゲーム画面を見せたり、『プロ野球スピリッツ4』の実写さながらの臨場感を伝えたり、『ぼくのなつやすみ3』の美しくも懐かしい田舎の風景を歩いて見せたりと、PS3の性能の高さを活かしたソフトであることをアピールする内容のものが多いという印象です。PS3の公式サイトでも、公開されているムービーの多くはゲーム画面中心の構成です。

SCEのこの姿勢は、コマーシャルの「キャッチコピー」にも表れています。任天堂は「Wiiのある生活」というキャッチコピーで、ゲームを楽しむ人の姿を中心に見せています。これに対してSCEは「世界でひとつ」というキャッチコピーを据えて、最高峰の性能を誇るPS3でしか遊べないゲームであることをアピールしていました。

ここで思い出してみてほしいのが、PS2時代のSCEゲーム機のコマーシャル。「ゲーム画面」を見せるよりも、「コマーシャルそのものの魅力」がゲームの魅力であるかのように、ある意味では錯覚させてくれる内容のものが多かったですよね。カタマリを転がして周りの家具やら清掃員のオバちゃんやらを巻き込んでいく『塊魂』の実写コマーシャル(2005年広告祭入賞)などは、まさにその代表例でした。

普段ゲームを遊ばない人に、ゲーム画面をただ見せるだけでは、なかなか興味を持ってもらえません。そこで、PS2時代のSCEは「コマーシャルそのものの魅力」を見せることで、現在の任天堂は「ゲームを楽しんでいる人の姿」を見せることで、既存のゲームファン以外の人たちにもアピールしていたんですね。

これに対して、「ゲーム画面」をふんだんに見せるPS3のコマーシャルは、ニンテンドーDS以前の任天堂ゲーム機のコマーシャルに近いものがあります。言いかたを変えれば、かつての任天堂が行っていたような「ゲーム画面重視」の戦略を、現在のSCEが行っているという逆の構図になっているのです。

もちろん、性能の高さ(ゲーム画面の綺麗さ)がPS3の大きなセールスポイントであることは間違いないわけで、それをアピールするのは当然といえば当然ですし、任天堂ゲーム機でも『フォーエバー ブルー』のように、ソフトによってはゲーム画面中心のコマーシャルになっている例もあります。しかしPS3の現状を見ると、なかなかWiiのように既存のゲームファン以外の人たちにアピールしきれていないようです。このことが、PS3の苦戦の一因になっていることは否定できないでしょう。

……そして、そんな現状を打破したい意図もあってか、最近になってSCEのプロモーションが変わってきているように感じます。好調に見える任天堂が抱えている課題とあわせて、つぎのページで両陣営の「課題」をまとめてみることにしましょう。

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