気になるあの人にお金突撃インタビュー/貯金1000万円以下でも老後を乗り切るFP・畠中雅子さんインタビュー

現役時代を不幸にしない!老後のお金の準備は何歳から始める?

老後の資金計画や具体的な生活のシミュレーションは、早ければ早いほどいい? 答えはNO。ハッピーな老後を送るためのお金の貯め方、計画の立て方をFPの畠中雅子さんが指南します。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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老後の資金計画や生活のシミュレーションは、どれくらいの年代からするべき?

“老後資金は、最低でも3000万円必要”――。そんな定説が語られていますが、必要な額は人によってさまざま。老後を考えるには、まず自分にとっての必要額をざっくり見積もることが大事です。ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに、シンプルな見積もり方法から「老後破産」を防ぐスキルまで、全4回にわたり、老後の描き方を指南してもらいます(第3回『「老後破産」に陥りやすい人の特徴は?こんな人は注意』から続きます)。

――老後の資金計画や生活のシミュレーションは、どれくらいの年代からやっておくべきなのでしょう? やはり早いほうがいいのですか?
老後のお金の準備は、いつから始めればいい?

老後のお金の準備は、いつから始めればいい?


畠中雅子さん:シミュレーションをする分にはいいと思いますが、あまり早い段階から具体的な計画を固めてもその通りにはいかない場合も多いです。ですから、50歳くらいまでは今の生活の中でできる範囲の貯蓄をコツコツ続けることが大切。時々、老後に対する強い不安感から、今の生活を犠牲にしてまで貯蓄に励む人がいますが、若い方が老後を迎える数十年先には、社会や制度も変わっているでしょうし、時代の二―ズに合ったサービスも出てくるはずです。特に、30~40代は、子どもの教育などにお金がかかり、資金計画が崩れがち。あまり具体的に老後の計画を固めすぎていると応用がきかなくなってしまうケースもあるので、今できる範囲で貯めていきましょう。50代になれば、「ねんきん定期便」で老後もらえる実額が予想できるようになりますから、具体的な計画を練るのはそこからでも遅くありません。

老後が不安なのはよく分かりますが、あまり先のことばかりを考えていると今が楽しめなくなってしまいます。老後だけを楽しむことを目的にした資金計画では、バランスの悪い人生になってしまい、ハッピーとはいえません。

――確かにそうですね。20代の人たちからも“老後が不安”という声を多く聞きますが、不安に駆られて今を置き去りにしてしまうのは本末転倒になってしまう気も……。

畠中さん:実は、私も以前までは、“ある程度のお金を貯めて、老後にゆったりと海外旅行を楽しもう”と考えていたんですね。ですが数年前、大切な友達を病気で亡くしたり、他にもここ数年で、友人らがステージ4のがんになるなど、思いもしなかったことが起き、考え方が変わりました。“誰もが必ず健康体で老後を迎えるわけではない”ということを思い知らされたんですね。

多くの人は、老後が健康であることを前提にライフプランを練っているけれど、ひとたび病気をしたらライフプランを大幅に修正せざるを得なくなる。ですから、できる範囲で老後資金を貯めつつ、今を楽しむことも大事です。私もやりたいことを少しずつ前倒しでやろうという考えに切り替え、数年前から世界中のミニチュアパーク巡りを始めています。すでに400カ所以上訪ねました。また、観光列車に乗るのも大好きなので、ある程度体力のあるうちに楽しんで、老後にそのままつなげていければいいなと思っているんですよ。

――生活の中でどこかに楽しみがあれば、お金を貯めるモチベ―ションにもなりそうです。

畠中さん:そうなんです。自分がやりたいことや楽しみたいことがあれば、逆にそれ以外の浪費は減っていく。ストレス買いの浪費などはなくなるし、やりたいことのためにお金を使いたいと思えれば、日々のお金の使い方にも意識が向いて、無駄遣いも減ります。やりたいことのためなら、人は楽しくお金が貯められるんです。

――「なぜ貯めるのか?」と聞かれたときに、「老後が不安だから」「いざという時のために」という答えしか浮かばないのと、“前向きな目的のために貯めるんだ”と思えるかでは、エネルギーが違いますね。

畠中さん:ほとんどの人は、自分がどんな老後を描きたいのかということを具体的にはつかめていなくて、お金さえ貯めればなんとかなる、明るい老後が待っていると思いがちです。でも、思いもよらないことが起きることも少なくない。自分の好きなこと、やりたいことを見つけて、家計のバランスを考えながらルールの範囲内でお金を使う。それが働く意欲にもつながるし、人としても魅力的な生き方ができるのではないでしょうか。

ですから、30~40代のうちは、今できる貯蓄から少しだけ老後用に回すなど、無理のない範囲で貯める。老後までまだ時間があるのでiDeCo(イデコ)などを活用して、積立投資でコツコツお金を増やすという方法も有効ですね。50代になったら年間の赤字を見積もって具体的にシミュレーションし、60代になったら住み替え先や終活を含め、自分の導線を決めていくのがいいと思います。

教えてくれたのは……

畠中雅子さん
 
 

ファイナンシャル・プランナー。大学時代からフリーライターとして活動し、出産後にマネー分野を専門とするライターとなりFP資格を取得。新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載やレギュラー執筆を持つとともに、セミナー講師、講演などを行う。「教育資金作り」「生活設計アドバイス」「住宅ローンの賢い借り方、返し方」「オトクな生命保険の入り方と見直し方」などのテーマを得意としている。近著に『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』『50歳からのハッピーリタイア準備』など、著書、監修書は70冊を超える



取材・文/西尾英子




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