素朴な母の味と日本文化の発信拠点、やすこの台所

本物のおふくろの味に笑顔がもれる、トゥルクの名物日本食レストラン
やすこの台所

トゥルクの目抜き通りであるウュリオピスト通り（Yliopistonkatu）の一角に、本物の鯉のぼりたちが目を引くレストランが！ ここは、トゥルク市民はもちろん、フィンランド国内の日本愛好家たちや在住日本人、そして日本人観光客からも愛され続ける日本料理レストラン「やすこの台所」。

旅先では、もちろんご当地の味を楽しみたいけれど、滞在日数が長くなるほど、誰しも無性に故郷の味が恋しくなる瞬間が訪れるもの。海外旅行とはいえ、旅のエネルギー補給をするためにも、日本人がプロデュースするおいしい日本料理レストランをチェックしておくのも大事ですよね。

やすこの台所は、オーナーの片山安子さんが、かねて縁のあったフィンランドという国で日本文化の発信拠点を生み出したい、という思いで渡航を決意し、2004年に日本料理レストランという形で実現させた、まるで本物の「かもめ食堂」のようなお店。現地語もまったくわからないところからのスタートだったそうですが、いつでも周囲の優しく協力的なフィンランド人たちに助けられながら、何不自由なくここまでやって来れたと安子さんは振り返ります。

フィンランドでも近年は寿司ブームの勢いがあり、今やSushiを知らないという人は少なくなりましたが、それ以外にも世界に誇れるバラエティ豊かな日本食メニューがあることは、まだまだ浸透していません。安子さんは、日本の食卓でより身近に愛されているメニューを、現地で手に入る安心な食材を駆使して生み出す名人。素朴な「日本のおふくろの味」に誰もがほっと一息つけるようなレストランを目指すうちに、もともと日本に興味のあった市民や在住日本人はもちろん、これまで寿司以外の和食に挑戦したことのなかったような一般市民のリピーターも増えたといいます。さらに口コミで評判は広まり、今ではトゥルクに来訪中の日本人旅行者にも人気の立ち寄りスポットになりました。

メニューには寿司はもちろん、うどんから丼もの、串かつまで！

お店のオープン当初は日替わりメニューだったそうですが、通ってくれるフィンランド人たちの反応やリクエストに応えるうちに定番メニューが生み出されてきて、現在では常時人気メニューの並ぶリストのなかから選ぶ形式になりました。

日本食文化の導入として欠かせない寿司各種はもちろんのこと、親子丼やカレーライス、うどんに串かつ……と、まさに日本の大衆食堂を思い出させる、肩肘張らないメニューがずらり。

すべてのメニューには、お茶と自家製お味噌汁がサービスで付き（うどんには味噌汁の代わりにおにぎりとお新香）、デザートにも抹茶ケーキなどの和スイーツや、安子さん自身がフィンランドの森で摘んで保存しているベリーをつかったケーキなども。また、メニューの多くはテイクアウトも可能です。

料理以外のリアルな日本文化を伝える活動も活発

やすこの台所では、食文化だけでなくさまざまな古き良き日本の伝統文化をフィンランド人に伝えていくために、まるで小さな日本文化博物館のような別室を用意してあります。そこには、着物やお茶道具、掛け軸、季節を伝える雛人形など、すべて日本から持ち込んだ本物の伝統工芸品がずらり！ フィンランド語での丁寧な解説付きで、リアルな日本文化の姿を市民に伝える役割を担っています。

レストランに併設されたスペースでは、日本で本格的に茶道を学んでいたフィンランド人を講師に迎えた茶道教室なども開催。その他にも震災復興支援イベントや日本人アーティストを招致して音楽イベントを企画したりと、まさに渡航当初に安子さんが思い描いていた、日本とフィンランドとのあいだの太い架け橋が、ここにトゥルクに築かれつつあるのです。

＜DATA＞
■やすこの台所（Yasukon Keittiö）
住所：Yliopistonkatu 26 C 2F, 20100 Turku
TEL：+358 44 033 5507
アクセス：マーケット広場から徒歩約5分
営業時間：月～金曜12:00～18:00、土曜12:00～17:00
定休日：日曜日
平均価格：10～16ユーロ、デザート3～4ユーロ
※アルコール類は、ライトビールのみ

※上記データは記事公開時点のものです。