男の靴・スニーカー/シューケア・手入れ

コードヴァンの革靴をケアする方法とは? 買い初めの守り方

お待たせいたしました。今回と次回の「シューケア技術向上講座」では、リクエストの多かったコードヴァンの靴のケアを探求します。まず今回はこの革の特徴のおさらいと、履き始め段階でのケアについて!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

<目次>
 

独特の光沢が魅力!

コードヴァンの靴
アッパーがコードヴァンでできた靴を、ズラッと並べてみました。どれも定番のバーガンディ色、のはずですが、見てのとおりケアの方法で光り方や風合いが微妙に変わってしまいました。でもこれが、また魅力なのです。


前回はスムースレザーのつま先や踵をキラッと光らせる、通称「鏡面磨き」に関するコツと最新情報をお話いたしました。コツを得るまでにはちょっと時間がかかりますが、要領を得てくると輝かせるのが無性に楽しくなってきますから、気長に取り組んでいただければと思います。

さて今回と次回はその「光沢」つながり、というわけでもないのですが、透明感ある輝き独特の風合いで靴好きならば誰しも一度は惚れるアッパー、コードヴァンを用いた靴のケアについて解説したいと思います。こちらも読者の皆様からのお問い合わせを多く頂いている案件であると同時に、ここ数年で効果的なシューケア用品が急速に増えているのも事実です。それらを踏まえ今回ならびに次回では、「目標別」にケア方法を解説してまいります。
 

馬の臀部の「裏革」です!

コードヴァンの靴の表面
こんなに光沢のあるコードヴァンですが、馬革の表面ではなく、実は裏面を削って出てくる層です。それが判明すると、ケア方法が解ったも同然!


コードヴァンのケアについてしばし問い合わせがあるのは、
「磨いても光沢が案外出にくく、むしろ曇りがちなのはどうして?」
とか
「水にあたった箇所が水ぶくれ状に跡に残ったのを解消するには?」
などなど。この2件は思い当たる方、結構多くいらっしゃるのではないでしょうか。これらはコードヴァンという革が持つ特質ゆえに起きてしまう現象ですので、具体的なケア方法をお話しする前に、まずその「特質」についてチェックしておきましょう。

コードヴァンが牛の革ではなく、馬の臀部の革であることはご存知の方も多いでしょう。でも違いは、単に供給源となる動物の種類だけではありません。牛のスムースレザーは革の銀面、つまり「生きている時には外側を向いている面」を素直に表面として用います。それに対しコードヴァンは全く逆で、革の肉側を削って出てくる面、つまり「生きている時には内側を向いている面」を表面として用いており、その意味ではむしろ、あの起毛しているスエードと類似しているわけです。

さらに、繊維組織が走る方向性も全く対照的です。牛のスムースレザーは繊維組織が水平方向に走って構成されていますが、コードヴァンはそれが垂直方向に走り、しかも前者に比べ遥かに緻密に構成されているのです。前者がシャープペンシルの芯を横長にややばらけて多数見た場合とすれば、後者はそれを径の側から垂直に、それこそギッシリ敷き詰められて見た場合にたとえられるでしょう。

そう、極論すると細かい針山のようなものがビッシリ詰まった面を半ば無理やり寝かせて鞣すことで、あの得も言われぬ輝きが生まれているのです。牛のスムースレザーに比べ履きジワが大胆にかつ綺麗に出るのも、その部分の寝ていた繊維組織が圧力で元に戻ろうと垂直方向に立ち上がってしまうから。また先の、「水にあたってしまった箇所が、水ぶくれ状に段差ができて跡になってしまう」理由も、もうお解りでしょう。寝ていた細かい繊維組織が水分で部分的に起毛状に立ち上がってしまったわけで、その周囲をきつめに絞った濡れ布巾でサッと拭くことで全体的に一度軽く「起毛」させ、その上で後述するケアを行えば、目立ちにくくなりますよ。

ここまで理解できれば、ケアの方針はもう解ってしまったも同然!乳化性クリームやブラシの選び方に一工夫すれば、原則この回通りのことをしていただいて特に問題ありません。その「一工夫」とはズバリ、革表面に露出する繊維組織を
「水や汚れから守る力が強いもの」
あるいは
「起毛させず寝かせる力が強いもの」
を選ぶことです。
 

新しいうちは、「守る」作戦!

アニリンクリーム&ローション
履き始めからまだ年月が経っていないコードヴァンの靴には、この2つがお奨め。左:M.モゥブレィ アニリンカーフクリーム \840  R&D。右:コロニル プレミアムローション \2,100 エス・アイザックス商会。


初々しく輝く新品のコードヴァンの靴。これを一度でも見てしまうと、誰もがこの透明感あるツヤをずっと維持したいと考えたくなるはずです。そう、履き始めのケアは素材が持つ本来特性を生かしながら、輝きを「維持する」「守る」姿勢で行くのが成功の秘訣。そんな状況でお奨めしたい代表例が、上の写真にある2つの乳化性靴クリームです。

M.モゥブレィ アニリンカーフクリームはもともと読んで字のごとく、「アニリン」という染料で染められた仔牛のスムースレザー(これを「アニリンカーフ」と呼びます)用に開発されたものです。地肌が透けるほどの透明感がありながら、その分色の定着力が弱く染みも起きやすいアニリンカーフの銀面を守るのが第一義のため、他の乳化性靴クリームに比べ油分や蝋分は敢えて少なめ(その分ムラ染みも起こしにくい)に設定しているのが特徴です。実は鞣す際に油分をたっぷり含ませるコードヴァンの場合も、新品に近い段階では加える油分や蝋分はこのクリーム位に穏やかな方が塩梅は良く、透明さを維持しながら水や汚れから革の表面をしっかり守ってくれるのです。

一方コロニル プレミアムローションは、靴だけでなく革の鞄や衣類・手袋などにも栄養を与えられる商品として開発されました。これらの商品にはご存知の通り、牛だけでなく鹿(ディアスキン)や羊(シープスキン)子羊(ラムスキン)山羊(ゴートスキン)の革なども多く用いられていますが、これらは必要以上に油分や蝋分を与えてしまうと、革のシボにそれらが残りかえって風合いを損ねてしまう場合があります。そのためこのローションも、他の乳化性靴クリームに比べ油分や蝋分が穏やかに効くよう設定してあり、また粒子の細かい乳液状なのでコードヴァンのような緻密な繊維組織にも成分が浸透しやすいのが特徴。新しいうちからのケアには、正にもってこいなのです。

いずれの製品も無色ですので、革の色を気にせず使えます。また、どちらもコードヴァンが本来持つ自然なツヤを十分生かした仕上がりとなりますが、前者の方がより落ち着いた感じに、後者は僅かにキラッとした表情になる傾向があるようです。これは別に良い・悪いのレベルではありませんので、お好みに合わせて選んで下さい。


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