認知症の親の不動産は売却できない?売却するときに取るべき方法

親が高齢になり、不動産の相続が気になってきたら、親の生前に売却してしまった方がいい場合があります。しかし、高額で権利関係が厳密な不動産売却は高齢の親には難しいこともあります。

親が元気なうちに親が自分で署名捺印して売却できればいいのですが、高齢になると認知症になってしまうこともあります。認知症になってしまった場合には、身体は元気でも、理解したり記憶したりする能力が衰えるために、不動産売却への判断が難しくなります。

本人の同意を得たつもりでも、認知症であることが確認されたら、売買契約が無効化されてしまう恐れもあります。認知症の親が所有する不動産を売却するのは、とても難しいことですが、方法がないわけではありません。

この記事では、認知症になった親が所有する不動産についてお困りの方に、認知症の親の不動産を売却する方法や注意点を詳しく解説します

リナビス
リナビス

あなたの家の適正価格が分かる
【完全無料】一括査定

リナビス
step1
リナビス
step2
リナビス
step3
リナビス
step4

認知症の親の不動産は売却できないのか

親が認知症になってしまった場合、原則的に子どもや親族が勝手に不動産を売却することはできません。身体の健康状態は良好である場合でも、認知症という診断が下ってしまったら、不動産の売買契約をしたとしても無効化されてしまいます

できない理由

認知症の親の不動産売却ができない理由は、不動産売買には法的な契約となるためです。法的な契約は、所有者の明確な意思に基づいた契約書への署名捺印であると確認できなければ、その契約は無効となってしまいます

認知症になった親に無理矢理ペンと実印を持たせて、売買契約書に署名捺印させても、その契約書は無効です。

また子どもや親族、弁護士などを代理人にして売却することもできません。その理由は、代理人の指名も本人の明確な意思が必要なためです。正常な判断能力に欠く認知症患者は、代理人の指名も難しいと判断されてしまい、代理人を立てての売却もできません。

認知症の兆しが見えたらできることがある

高齢の親が忘れ物をよくするようになった、話のつじつまが合わなくなってきた、同じことを何度も聞いてくるようになったなど、認知症の兆しが見え始めたら、自分や家族だけで悩まずに、まずは専門家に相談しましょう。

認知症についての相談は専門の医師へ相談して、正式な診断を仰ぎ、診断書を発行してもらいます。その診断書に基づいて、親に売買契約が可能かどうかの判断を登記を依頼する司法書士へ相談します。

医師と司法書士が本人の売買契約が可能であると判断した場合には、医師と司法書士立ち会いの下で、売買契約書へ署名捺印してもらうこともあります。このような場合には、認知症が進んで判断能力がなくなってしまう前に売却する必要があるので、できるだけ急いで売却を進める必要があります。

成年後見制度を利用して不動産は売却できる

親が完全に認知症になってしまい、一切法的な契約ができなくなってしまった場合には、青年後見人制度を利用することで、不動産を売却する方法が残されています。こちらでは、成年後見人とはどのような制度なのか詳しく解説します。

2種類の成年後見制度とは

成年後見人には、任意後見制度と法定後見制度の2種類があります。

任意後見制度とは、認知症になる前に本人が将来の支援者を決める制度です。本人の判断能力がしっかりとしているうちに、誰に何を頼むのかを決めて、公証人役場で契約を結びます。

法定後見制度とは、認知症になってしまった後で、家庭裁判所が財産の管理を任せる人を選出する制度です。本人の認知能力の低下がみられる場合に認められます。法定後見制度を利用する必要があるかどうかは、医師の診断書を元に家庭裁判所で審理されます。

本人にどのくらいの判断能力が残されているかによって、成年後見人は、後見人、補佐人、補助人のいずれかに任命されます。

3つの法定後見人の特徴

法定後見人には、後見人、補佐人、補助人の3種類あります。一口に認知症と言っても、その進み具合は人それぞれです。本人に残されている認知能力によって、どの種類が割り当てられるのかが決まります。この3種類はそれぞれ与えられる法的な権限が異なります。

後見人、補佐人、補助人のそれぞれの役割等は次の表の通りです。

本人の状態後見人の権限の範囲監督人
後見人判断能力がほとんどない広範囲な代理権と取消権を付与される。同意権は付与されない。本人の日常生活に関わる範囲を除く、ほぼすべての法的行為を取り消すことができる。後見監督人
補佐人日常生活は自分でこなせるが、法的な判断能力が著しく不十分包括的な同意権と取消権を付与される。代理権は基本的に付与されない。家庭裁判所への申し立てで必要な範囲内での代理権が付与される。本人が結んだ契約が妥当な場合には同意する。不利益が大きい場合には取り消すことができる。保佐監督人
補助人日常生活に問題はない。補助が必要な場合を個別に判断して法的にサポートする。代理権、同意権、取消権は付与されない。必要な場合には、事案ごとに権限の付与を家庭裁判所へ申し立てて、認められた範囲内で本人を保護する。補助監督人

後見人には必要に応じて監督人が付きます。監督人は家庭裁判所によって選出されて、多くの場合は弁護士や司法書士などの法律の専門家です。監督人は後見人が行った事務の内容をチェックして、定期的に家庭裁判所に報告します。

法定後見人ができること

法定後見人にはできることとできないことがあります。法定後見人が判断に関わっていいことは次の通りです。

  • 本人名義の預貯金の管理
  • 本人名義の不動産の管理
  • 確定申告
  • 生活保護の申請
  • ヘルパーなどの介護サービスの契約
  • 施設への入所の契約
  • 医療に関する契約
  • 要介護認定の手続きや更新手続き

一方で、法定後見人にできないことは次の通りです。

  • 医療の同意(輸血や延命措置など)
  • 養子縁組
  • 結婚・離婚

医療の同意などは親族が法定後見人であれば親族としてならできますが、法定後見人としてはできません。また、法定後見人は法的な権限のみなので、介護に関する契約はできますが、後見人として直接介護する義務はありません。

後見人は本人が生きている間の法的な管理をする人なので、なくなった後の葬儀などの義務も負いません。原則的に葬儀は親族が執り行います。ただし、生前に死後事務委託契約を締結しておけば、葬儀までお任せできる場合もあります。

法定後見人になれる人となれない人

基本的に法定後見には欠格事項がない人で、本人の財産の管理に適している人であれば誰でもなることができます。通常は次のような人が法定後見人に選出されます。

  • 親族
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 検察官
  • 社会福祉士
  • 市町村長

市町村長に少し違和感を感じる方もいるでしょう。法定後見人が必要な人に親族がいなかったり、親族が法定後見人の経費を負担できなかったりすることがあります。そうした場合には、公的な支援で法定後見人を立てることがあります。その場合に、市町村長が法定後見人を申し立てることがあります。

法定後見人になることができない欠格事項は次の通りです。

  • 未成年
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟を起こした者とその配偶者・直系親族
  • 行方不明の者

「家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人」とは、何らかの理由で過去に家庭裁判所から後見人を外された人です。また、被後見人と裁判で争ったことのある人とその親族は、利害関係で対立する可能性が高いと言うことで、法定後見人になれません。

法定後見人となって認知症の親の不動産を売却する方法

親が認知症になってしまい、相続協議の手間などを考えて、親の生前に不動産を売却した方がいいと判断した場合には、子どもが法定後見人となって売却することができます。しかし、通常の所有者本人による売却とは違い、まずは家庭裁判所に法定後見人として認めてもらうことから始めなければいけません

また、売却を進める過程でも、家庭裁判所の許可が必要です。法定後見人による不動産の売却は、通常の売却とは少し過程が変わります。こちらでは、子どもが認知症の親の後見人になって親の不動産を売却する流れについて解説します。

審判を申し立てる

まずは、家庭裁判所に成年後見人として認めてもらうための、「成年後見制度開始」を申し立てます。申し立てができるのは、被後見人本人、配偶者、4親等内の親族、検察官です。被後見人が住んでる地域を管轄する家庭裁判所へ申し立てを行います。

後見人を選定

申し手を受けた裁判所では申立書に記載された成年後見人の候補者が適任かどうかを審理します。後見人の候補者から事情を聴き、場合によっては医師による鑑定が行われます

候補者が適切でないと判断された場合には、弁護士や司法書士、社会福祉士など、法律や福祉の専門家が選任されることもあります。

被後見人の親族を後見人に選ぶ場合には、監督人も選出することがあります。監督人が付いた場合には、後見人は後見人として行ったことを随時監督人に報告する義務を負います。

不動産会社と媒介契約を結ぶ

後見人が選出されたら、後見人は不動産の売却に向けて動き始めます。売却の手続き自体は、通常の不動産売却とそれほど変わりません。不動産会社に仲介を依頼して買手を探してもらい、売買契約を結ぶのが一般的です。

まずは仲介を依頼する不動産会社を探して仲介の契約である媒介契約を結び、売却活動を行います。

被後見人が所有する不動産を売却できる場合とは、売却することが被後見人の利益になる場合だけです。維持管理が大変だから売却したいとか、本人の医療費や介護費用に充てると言った場合にだけ売却が認められます。

不当に安い金額での売却は、本人の利益に反すると言うことで家庭裁判所に売却が認められないことがあります。そこで、後見人による売却でも、できるだけ高額での売却を目指すことが大切です。

相場なりの適切な価格で売却するためには、複数の不動産会社の査定結果を比較して不動産会社を選ぶことが大切です。全国の優良な不動産会社と提携しているすまいステップを利用すれば、最大4社の良心的な不動産会社から簡単な手続きで査定を取り寄せられます。ぜひすまいステップを不動産会社探しに活用してみましょう。

家庭裁判所より許可を得る

不動産会社と媒介契約を結んで、売却活動を行い、買主が見つかったら、売買契約を結ぶ前に家庭裁判所の許可が必要な場合があります。被後見人が所有する不動産の売却に家庭裁判所の許可が必要な場合とは、売却する不動産が被後見人の居住用住居である場合です

投資用物件や別荘など、マイホームでない場合には家庭裁判所の許可はいりません。

マイホームは入院中や介護施設に入居中であっても、退院後に戻る可能性もあります。そこで、家庭裁判所に売却が必要な理由と、売却したお金をどのように使うのかを「居住用不動産処分許可の申立て」で説明して許可を得る必要があります。

売却価格が被後見人にとって不利にならないかどうかも審査されます。買主との交渉で価格にも注意しましょう。

後見人が売買契約を結ぶ

買主が見つかり、家庭裁判所の許可も下りたら、売買契約を結びます。通常は売主と買主が不動産会社に集まり、契約内容を確認した上で、契約書に署名捺印します。手付金もこの時に買主から支払われます。

なお、売買契約は家庭裁判所の許可を得る前に締結することも可能です。その場合には、売買契約書に家庭裁判所の許可を得られた場合に契約が有効になる、という内容を盛り込みます。

決済と所有権移転登記を行う

引渡し日になったら、代金の決済と所有者移転登記を行い、物件を引渡します。買手は住宅ローンを組むことが多いので、引渡しの手続きは買手が住宅ローンを借り入れる金融機関の会議室などを借りて行うことが一般的です。

司法書士が所有者移転登記の書類に不備がないか確認します。引渡しに問題がなければ、売却金額から手付金を差し引いた残金を、売手側の銀行口座へ入金します。その日のうちに、司法書士が法務局へ行き、所有者移転登記を行えば、不動産の売却が完了です。

法定後見人になるために必要な書類と費用

不動産売却をする時には、さまざまな書類や費用が必要です。不動産売却に関する書類や費用の他に、成年後見人制度を利用するためにも、準備するべき書類や費用があります。ここからは、成年後見人制度を利用するために必要な者に付いてみていきましょう。

なお、不動産売却に関する書類や費用は、このサイトの他の記事でもお伝えしているのでこちらでの説明は省略します。

必要な書類一覧

成年後見人制度の開始を申し立てるために必要な書類は次の表の通りです。

  • 成年後見人制度開始の申立てに必要な書類
必要書類取得場所
申立書申立てをする家庭裁判所
申立人の戸籍謄本申立人が居住する市区町村役場
申立書付票家庭裁判所
  • 本人についての書類
必要書類取得場所
本人の戸籍謄本本人が居住する市町村役場
本人の戸籍付票本人が居住する市町村役場
登記事項証明書本人の所在地の法務局
医師の診断書本人を診察した医師に発行してもらう
    登記事項証明書とは、本人がそれまでに成年後見人制度の被後見人として登記されていないことの証明書が必要です。
  • 成年後見人候補に関する書類
必要書類取得場所
候補者の戸籍謄本候補者が居住する市町村役場
候補者の住民票候補者が居住する市町村役場
身分証明書運転免許証など
  • 財産関係書類

必要に応じて、後見人が作成して家庭裁判所へ提出する。通常は次の書類を家庭裁判所から求められたら提出する。

  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 申立事情説明書
  • 後見人候補者事情説明書
  • 親族関係図

かかる費用

成年後見人の申立てには次のような費用が必要です。

必要な費用金額
収入印紙800円
切手代5,000円程度
登記費用2,600円

上記の費用は、成年後見人制度の申立てには必須の費用です。地域によって切手代などの金額が変わってきますが、1万円程度はかかると思っておけばいいでしょう。

この他に、本人に本当に成年後見人が必要か判断するための精神鑑定が必要になる場合には20万円程度の費用が必要です。また、弁護士や司法書士など親族以外の人に成年後見人を依頼する場合には、月に2万円程度の報酬も発生します。

法定後見人となるデメリット

成年後見人制度を利用すると、このように認知症になってしまった親の不動産を売却することはできます。しかし、成年後見人制度を利用することでのデメリットもあります。

デメリットを考えたら、成年後見人制度を利用して売却するよりも、親の死後の相続を待った方がいい場合もあるでしょう。成年後見に制度を利用することのデメリットをよく考えた上で、成年後見人制度を利用した方がいいのかどうかもしっかりと考えることをおすすめします。それでは、どのようなデメリットがあるのか詳しく解説します。

生前贈与ができない

節税のために、贈与税の非課税額の範囲内での生前贈与を親の生前に進めたいという場合があります。しかし、成年後見人制度を利用してしまうと、生前贈与ができなくなります。

年間贈与される側1人あたり110万円までなら非課税なので、相続人に毎年110万円ずつ生前贈与していく場合があります。しかし、成年後見人制度は、本人の財産を守るための制度なので、相続人への贈与であっても本人の財産を減らす行為はできなくなります。

非課税枠での生前贈与での節税を考えている場合には、成年後見人制度の利用は控えた方がいいでしょう。

役員等になれない

成年後見人を立ててサポートしてもらうことが必要であると、家庭裁判所から審判を受けてしまったら、その本人は地位や資格を失ってしまうことがあります。成年被後見人と認められてしまったら、失ってしまう地位や資格は次の通りです。

  • 株式会社等の法人の役員
  • 国家公務員
  • 地方公務員
  • 医師
  • 弁護士
  • 税理士
  • 貸金業・建築業の営業許可

上記の地位や職業には大きな責任や技能、知的能力が必要なので、被後見人になる状態で続けられるものではありません。しかし、本人の尊厳やプライドなども考えて、名前だけでもこれらの地位や資格を剥奪してもいいものかどうかも事前に考えた方がいいでしょう。

開始後はやめることができない

成年後見人制度の利用を開始してしまったら、不動産の売却が完了した後でも、後見人制度をやめることはできません。成年後見人制度を辞めることができるのは、本人の認知症が回復して、通常の判断能力が回復したときだけです。しかし、現在の医学では認知症は進行を遅らせることはできても、認知能力が回復することは望めません。

成年後見人制度を一度始めてしまったら、本人が亡くなるまで成年後見人制度は続きます。親族が成年後見人として認められた場合には、不動産売却後も定期的に預貯金や契約状況などを家庭裁判所に報告する義務があります。

弁護士や司法書士に依頼している場合には、本人名義の財産を弁護士や司法書士がずっと行い続けることになります。報酬も本人が亡くなるまでずっと払い続けなければいけません。

この点もよく考えた上で、成年後見人制度を利用してまで、本人の生前に不動産を売却した方がいいのかどうかを判断しましょう。

認知症となった人の不動産売却は法定後見制度を利用して売却する

親が元気なうちに、財産をどうするのかをしっかりと話し合っておければいいのですが、なかなかそういうわけにもいかないのが現実です。しかし、手続きは通常の売却よりも大変ですが、認知症になってしまっても、成年後見人制度を活用すれば、不動産を売却することはできます。

成年後見人制度の利用にはデメリットもありますが、親が亡くなるまで待ってからの相続よりもメリットが大きい場合には、利用する価値はあります

成年後見人制度で不動産を売却する時には、できることなら事前に他の相続人とも相談しておきましょう。一部の相続人だけで進めてしまうと、自分の相続分を横取りされたと思い込んでしまう人も出てきます。後々のトラブルを避けようとした売却が、かえって面倒くさいトラブルになってしまうこともあるので、親族間の調整も同時に進めることをおすすめします。

【完全無料】うちの価格いくら?