厳しい就職戦線を乗り越えてせっかく入社した会社も、何らかの事情で辞めてしまうケースが少なくありません。『平成25年若年者雇用実態調査』(厚生労働省)によると、初めて勤務した会社をやめた理由は、多い方から順に「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(22.2%)、「人間関係がよくなかった」(19.6%)、「仕事が自分に合わない」(18.8%)、「賃金の条件がよくなかった」(18.0%)となっています。入社した会社の理想と現実のギャップから、会社を辞める様子が伺えます。中には、積極的に自分のキャリアを活かし、もっと良い待遇の会社に転職しようという前向きな気持ちで会社を辞める人もいるでしょう。
転職する場合、前の給料より増えることを希望するのが通常ですが、実際に転職した人の給料は、どのように変化しているのでしょうか? 『平成25年雇用動向調査』より、各年代別の転職者の賃金の変動を見てみましょう。20代は、賃金が増えた人が4割、変わらない、減少したがそれぞれ3割となっています。この傾向は30代後半まで続きますが、40代以降は賃金が増える人の割合が、急激に少なくなります。
20・30代であれば、積極的に転職して給料アップを目指すのも良いかもしれません。けれども、注意しなければならない点があります。一般的に日本企業の退職金制度では、勤続年数が長いほど有利になるように設計されています。そのため、転職するともらえる退職金が少なくなる可能性があるのです。
『ユースフル労働統計2014』では、転職による退職金の減少率を推計しています。減少率は、同一企業(製造業、従業員1,000人以上)に勤務し続けた人と、一度だけ転職した人とを比較したもので、転職年齢ごとに表わしています。25歳のときに転職した場合、大卒(管理・事務・技術労働者)の場合は7.4%、高卒(同)の場合は28.3%、もらえる退職金が減るという結果です。
また、転職は退職金だけではなく、生涯賃金にも影響します。25歳に転職した人の生涯賃金は、転職しない人に比べ2.4%減少するという結果でした。20代の転職は生涯賃金に大きな影響を与えませんが、年齢が高くなると生涯賃金の減少率が大きくなる傾向にあります。
※ユースフル労働統計 2014を参考に作成
※企業規模1,000 人以上の製造業男性労働者のデータを元に作成
※減少率は、同一企業に勤務し続けた者と、一度だけ転職をした者の比較
これまで見てきた転職による退職金・生涯賃金の減少率は、一度だけ転職した人のケースで推計されています。転職を何度も繰り返した場合、減少率はさらに大きくなるでしょう。転職を繰り返すことは、給料がアップしたというプラスの側面もありますが、生涯賃金の視点でみるとマイナスになる場合もあるので注意が必要です。
もちろん、働くことの目的は収入を得るためだけではないことは言うまでもありません。けれども、働いて収入を得ながら自身の夢や希望などのライフプランを実現していくという視点で考えると、収入が多いにこしたことはありません。自分に合った仕事と会社がなかなか見つからず転職を繰り返すことがないよう、20代の早い時期のうちに自身のキャリアプランをしっかり考えて、自分の理想に近い仕事・会社を見つけられると良いですね。
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