飛躍的な進化を遂げた新時代のエアコン

三菱電機の『霧ヶ峰』が家庭用エアコンのスタンダードとなったのは、1968年のこと。当時の日本の住宅事情を鑑み、軽量・薄型ファンを搭載したことで、エアコンの普及率は格段にアップしたという。

そして2015年、『霧ヶ峰』は再び新たな時代を生み出した。その最新モデルに搭載された革新的な技術とは? 実際に製造の現場まで足を運び、その技術力を目の当たりにしたAll About「家電」ガイド、滝田さんに聞いてみよう。

All About「家電」ガイド:滝田 勝紀 フリーランスの編集者。モノ情報誌の家電品を約10年担当し、特にロボット系家電やスマート家電に精通する。ヘッドホン、スマホ&ウェアラブルなどの分野も取材。現在は『デジモノステーション』の白モノ家電担当するほか、多くのメディアで活躍している。

構造をゼロから見直すことで、かつてない快適を実現

エアコンの歴史に新たな1ページを生み出したのは、『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』。このモデルを「新時代のエアコン」と言い切る理由は、 内部構造を一新したことにある。

ひどく大雑把な言い方だが、取り込んだ空気を熱交換器によって暖め(あるいは冷やして)、ファンで送風するというのがエアコンの基本的な構造。このファンには“ラインフロー”と呼ばれる横長のものが搭載されており、これをぐるりと囲むようにして熱交換器が配されるのが、これまでのスタンダードだった。しかし三菱電機は、新たにふたつのプロペラ型ファンを持つ“パーソナルツインフロー”を上部に配し、その下に熱交換器を配置したのである。

滝田さん(以下敬称略)「そもそも三菱電機は、“ラインフロー”エアコンの基礎を築いたメーカー。しかしこのままでは限界があると気付き、もう一歩先を行くために新しくプロペラファンをつくり出したのは、本当にすごいことです。換気扇のメーカーとして“風”に精通し、高い技術をもつからこそできたことではないかと思いますね」

また、熱交換機自体にも滝田さんは注目しているという。

滝田「ファンを上部に配置したことで、熱交換器のスペースを広くとれるようなりました。でもそれだけに留まらず、熱交換器をW字型の形状とすることで、より表面積を広くして効率を高めたんです。このW形状にも大きな意味があります。熱交換器をW字にすることで、冷房時、熱交換器から流れ出る水を受けるドレンパン(受け皿)を小さくすることができ、スムーズに風が流れるようにしているのですね」

こうした内部構造の変更がもたらすのは、快適さ、そして省エネ性だ。

滝田「人はそれぞれ、快適と思う温度が違います。そんな二人が同じ空間にいるとき、ひとつのファンで別々の風を2方向に送るのは限界がある。でも、ふたつのファンを独立して制御し、風の強さを変えることができればこの問題を解決することができるのです。実際にこのモデルでは、暖房時の床温度差は左右で最大約3℃(※暖房“風あて”運転時)の違いが出るとか。シンプルと言えばそうなんですが、それを実現できる技術力、そしてそもそもの発想力はさすがですね」

思わず舌を巻く、革新的な技術の数々 >>

『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』の内部構造をイラスト化したもの。上部に左右独立駆動の“パーソナルツインフロー”、その下にW字型の熱交換器が配置されている。ファンに採用されたモーターもこのために開発されたもの。小型化と高出力・高効率を実現したことで、省エネ性の向上にも寄与する。
滝田「約半世紀前から続いた機構を捨てて新しいものをつくるのは、簡単なことではありません。しかも、スタンダードをつくったという成功体験があるにも関わらず、です。それでもステップアップのために敢行するという姿勢には、これからも注目したいですね」

上が“パーソナルツインフロー”を実現したふたつのプロペラファン。下が、従来のスタンダードである“ラインフローファン”だ。

『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』のスケルトンモデルに見入る滝田さん。初めて見たときは、「とにかくすごいことをやったな」という印象を抱いたそうだ。
滝田「プロペラファンもW字型の熱交換器も、見たことがない斬新さ。“ここまでやるか!?”と思いましたね」

個々の体感温度まで見極める、より進化した“ムーブアイ極”

人は寒いとき、臓器が集中する中心部へと血液を送るため、手先や足先などの末端部分は表面温度が下がるもの。その変化を“ムーブアイ極”がとらえ、それぞれが感じる暑さ寒さを見極められるのだという。

ふたつのファンが独立して動くことで、同じ部屋の離れた場所にいる人々を快適にする『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』。この技術を最大限に活かすのが、“ムーブアイ極”の存在だ。この高精度赤外線センサーが見極めるのは、その場所の温度だけではない。人の手先や足先といった細部まで、なんと360°の範囲を18392エリアにまで細かく分けてサーモカメラで見ることで、その人が暑いのか寒いのかを見極め、快適にするための風を送るという。

滝田「2015年モデルに比べ、4倍の解像度に進化したことで、より細部まで見られるようになりました。このきめ細かさは、他メーカーと比較しても群を抜いていると思います。チェックできる温度は0.1℃単位と聞くと、どうかしていると思うくらいすごい(笑)」

この0.1℃は体温計と同じ単位と考えれば、そのすごさは実感できるはず。ここまで細かくチェックできるので、暖房時にしっかり足元を温めてくれるのだ。

滝田「“ムーブアイ極”で見て、判断して、作動する。口で言うのは簡単ですが、実際にきっちり制御するのは至難の業です。いくら二気流の風でふたつの温度空間をつくれるとしても、センサーの精度が低くてはその性能は活かせないし、逆もまたしかり。どちらかが欠けても、このモデルがもたらす快適さと高い省エネ性能は実現しなかったと思います」

この「検知して」「考えて」「動作する」という一連の流れは、ロボットにも通じるという滝田さん。

滝田「ロボットの分野で有名な教授が以前、“日本の家電の中で最もロボットに近いものはエアコン”と仰っていました。それくらい精密につくられているんです、エアコンって。そういう意味では、『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』は最も有能なロボット家電と言えるかもしれないですね」

暖房性能の高さにも注目を >>

三菱電機の技術力の高さを改めて感じた、製造現場訪問記

21万平方メートル以上の広大な敷地を有する静岡製作所。生産だけでなく、通常は本社機能である企画開発部門、国内外販売戦略立案部門なども集約されている。

この『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』の発売を受け、滝田さんは実際に、製造されている現場へ訪れた。それが、三菱電機 静岡製作所。エアコンや冷蔵庫、コンプレッサーなどの生産拠点で、タイ、中国、イギリスの3ヵ国6ヵ所に置かれた生産拠点のマザー工場としての機能ももっている。

この工場内で滝田さんが見学したのは、『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』を生産するために新設された“Zライン”と呼ばれるエリア。台車が規則正しく行き交う中、組立から検査、外装取り付け、梱包などの作業が人の手を介して行われている。

滝田「さすがは最上位機種だけあって、最後まで細かくチェックされていると感じました。工業製品の場合、いくつか抜き出したサンプルだけを検査することもありますが、『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』は全品チェックを行っているとか。熱交換器に漏れがないかの検査も、1台1台、ヘリウムガスを通して確認されていました」

W字型の熱交換器は、配管構成が複雑。そのため、接合作業時は通常の2口バーナーではなく、どんな角度からも使いやすい1口バーナーが採用されている。これもまた、“Zライン”ならではのポイントだ。このほか、ファンの音をチェックするための防音スペースも用意。扉を閉めると工場内に鳴り響く機械音が全く聞こえなくなるこの空間では、時には聴診器を使って振動や音不良がないかの検査が行われるという。

滝田「さまざまな検査を見学しましたが、とにかく人が介在していることが印象的でしたね。このモデルはスクエアデザインで面が広い分、細かな傷が付く可能性が高いのですが、そのチェックも、人の目でじっくり見られていました。いくら工場がオートメーション化しても、上質なアイテムをつくるためには、最終的に人が入る行程が必要なんですよね。この“Zライン”で作業するのは、『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』のために招集された、高いスキルをもつ方々なのだとか。こうした人の高い技術力とモチベーションが、最終的に製品の完成度を決めるのだと、改めて感じました」

1年を通じて快適さを提供 >>

1台の製品に必要な部品を収納し、組立や試験を行うための台車。これが部品供給から梱包まで、作業の流れに沿って循環することで、導線の最適化が図られている。

滝田さんが見つめるのは、迷路のように複雑に入り組んだ熱交換器の冷媒配管。温度ムラを防ぐために、偏ることなく配置されているという。

外装を取り付ける前の工程が、中間検査。振動・音不良のチェックなどが、さまざまな検査項目の下で行われている。

新たな時代を切り拓く『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』

およそ半世紀を経て、大幅に構造が変更された『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』。製造現場を見た滝田さんが「やはり三菱電機は、技術の会社だと実感しました」と語るように、革新的な技術の数々が搭載されている。

今までのエアコンとは一線を画す、スクエアなデザインも印象的。これは住まいに合わせて生み出されたもので、柱や梁などの直線にカッチリとハマっている。

機能、省エネ性、デザイン。どこから見ても『霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ』は、これからのスタンダードとなり得る実力を備えた1台。このエアコンがもたらす快適さを、皆さんにもぜひ一度、体験してもらいたい。

霧ヶ峰ADVANCE FZシリーズ
MSZ-FZV4016S(適用畳数:14畳)/MSZ-FZV5616S(適用畳数:18畳)/MSZ-FZV6316S(適用畳数:20畳)/MSZ-FZV7116S(適用畳数:23畳)/MSZ-FZV8016S(適用畳数:26畳)/MSZ-FZV9016S(適用畳数:29畳)

暑がりさんも、寒がりさんも! 空調から考える快適なリビングのつくり方

提供:三菱電機株式会社
この情報は2015年12月18日現在のものです。