論理と精神からのセレクト10

将棋は論理と精神の勝負である。上達には棋書が欠かせない。そして、棋書はまぎれもなく論理の集大成である。では、精神とは何か。ある時は「不屈」であったり、また、ある時は「爽快」であったり、「切磋琢磨」や「奔放」であったりする。今回は羽生善治、渡辺明、畠山成幸、畠山鎮、米長邦雄、先崎学の6棋士に関する論理と精神の書、計10冊を紹介する。

永世名人・羽生善治から学ぶ「不屈」

★棋書:『羽生善治の定跡の教科書』
☆その他:『氷点』

『羽生善治の定跡の教科書』……盤上で会話ができる本

ガイドが主催する将棋教室「将星会」でも使っている棋書である。
 
この本、どんな手にも意味があると言うことをしっかり教えてくれるのである。つまり、駒の動きの意味がわかってくるのだ。

そうなれば、しめたもの。言葉なしに、駒を使った話ができるようになる。この盤上会話、将棋のおもしろさを何百倍にも広げてくれる。

初心から有段まで必読の書と言えますぞ。
 

出典: 羽生善治の定跡の教科書 | 羽生 善治 | 本-通販 | Amazon.co.jp

『氷点』……永世名人が愛した書


現在、プロ棋界の頂きに座す永世名人・羽生善治。長きにわたり君臨する、その類い希なる精神力。しかし、彼も人の子。その時々で苦悩はあった。特に前人未踏の七冠制覇から、失冠を重ねていった時期。想像を絶するものがあったであろう。そんな彼が愛した一冊が『氷点』である。

著者・三浦綾子の文壇デビュー作。キリスト教の説く原罪。それを日常の中で深くえぐり出す衝撃的な作品だ。その原罪を直視することにより、生まれる不屈の精神。

ここに、羽生と本書を結ぶものがある。
 

出典: 氷点(上) (角川文庫) | 三浦 綾子 | 本 | Amazon.co.jp

永世竜王・渡辺明から学ぶ「爽快」

★棋書:『爽快!3手詰めトレーニング200』
☆その他:『魔太郎がくる!!』

『爽快!3手詰めトレーニング200』……爽快こそモチベーション

たった3手詰め?と鼻で笑ったあなた。すでに、あなたは向上心という坂道を降り始めているかもしれませんぞ。

アインシュタインも語ったとおり、宇宙の真理はシンプルだからこそ美しい。3手詰めにこそ、宇宙があるのです。

その大いなる宇宙を人類史上初の永世竜王が見せてくれるこの本。トニックシャンプーのごとき爽快感を味わうべし。
 

出典: Amazon.co.jp: 爽快!3手詰トレーニング200 (マイナビ将棋文庫) 電子書籍: 渡辺明: Kindleストア

『魔太郎がくる!!』……明ファンの必読書

永世竜王・渡辺明。前人未踏の称号を手にした人類初の男である。その渡辺のあだ名が、この「魔太郎」なのだ。なにゆえ?本人も公認の通り、似ているのだ。天下の竜王が魔太郎に似ていると言われて、そうだなあと受け入れる器量の大きさ。これが、渡辺なのである。

画像やタイトルからおわかりいただけるだろう。少年少女を夜のおしっこに行かせなくした、正真正銘のホラー漫画である。ガイドも「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」という決めゼリフにゾゾゾとさせられた一人だ。お察しいただけるように、リベンジをテーマとした作品である。

勝利に不可欠なリベンジ魂。それを魔太郎から学べるやもしれない。もしかすると、読んだあなたに、大逆転の手が浮かぶかも。明ファンなら必読である。
 

出典: 魔太郎がくる!!―うらみはらさでおくべきか!! (1) (少年チャンピオン・コミックス) | 藤子 不二雄A | 本 | Amazon.co.jp

畠山兄弟から学ぶ「切磋琢磨」

★棋書:『いまさら聞けない将棋Q&A』、『横歩取りの教科書』
☆その他:『宇宙兄弟』

『いまさら聞けない将棋Q&A』……今だから聞きたいこと盛りだくさん

史上初の双子棋士、畠山成幸(なるゆき)と鎮(まもる)。超天才のみに許されたプロ棋士という門を、二人そろってくぐったのだから、驚異の快挙と言わざるを得まい。

本書の著者は兄の成幸である。幼い頃から磨き合う関係だったからこそ成し遂げた夢。子どもながらに、学び方を知っていたからこそ可能となった夢。夢を現実にした彼が、将棋の疑問に初心者目線で答えてくれる。

「なぜ、同じ戦法に負けるのだろう」
今だからこそ聞きたいことに明快に答えてくれる名著である。
 

出典: 今さら聞けない将棋Q&A (スーパー将棋講座) | 畠山 成幸 | 本-通販 | Amazon.co.jp

『横歩取りの教科書』……ビビらず攻めたい人に

この本の著者は弟の鎮(まもる)である。まもるが攻めると言われるほど、強烈な攻めを見せてくれる棋士だ。

ガイドは、著者の指導対局風景を見たことがある。小学生に対してのものだったが、それはそれは、懇切丁寧。説明時には、膝を曲げて子どもの目の高さに合わせてくれることもしばしば。さすがに兄弟で幼い頃から切磋琢磨してきた経歴の持ち主だと感動させられたことがある。

激しく難解な戦いとなるため避ける人も多い「横歩取り」。しかし、大丈夫。畠山鎮の懇切丁寧な指導をこの本で受けることができるのだ。
 

出典: 横歩取りの教科書 (将棋の教科書シリーズ) | 畠山 鎮 | 本-通販 | Amazon.co.jp

『宇宙兄弟』……最先端に伝統文化「将棋」登場

こちらは、宇宙飛行士を目指す兄弟の物語である。その切磋琢磨は畠山兄弟を彷彿させる。宇宙漫画なので、NASA、JAXA、ロケット、望遠鏡、ロボットなどなど、最先端のオンパレードである。

では、なぜに将棋?

実は、訓練シーンに将棋がちょくちょく登場するのである。しかも、エア将棋なるもの、つまり、盤駒をおかずに頭の中だけで対局するという高度な将棋まで。

そして、「桂馬のふんどし」や「両取り逃げるべからず」など手筋の格言も登場する本格的な描写なのである。

最先端漫画に登場する伝統文化。これを読めば、将棋の文化的価値をいっそう知ることになり、精進意欲につながるかも。

出典: Amazon.co.jp: 宇宙兄弟(1) (モーニングコミックス) 電子書籍: 小山宙哉: Kindleストア

米長と先崎、師弟から学ぶ「奔放」

★棋書:『将棋の必殺技』
☆その他:『人間における勝負の研究』『浮いたり沈んだり』

『人間における勝負の研究』……師は語る

ガイドはレッドゾーンを振り切った棋士として、真っ先に米長邦雄を挙げる。あらゆる面において、物議を醸すことでは他の追随を許さぬ男である。

「兄貴は頭が悪いから東大に行った。俺は頭が良いから棋士になった」そう豪語した彼は、その言に負けぬように振る舞う。こうして人生そのものが勝負になっていったのだ。

だから、彼の哲学は全て勝利のための指針となっている。本書を読むことによって、その破天荒さと先鋭性に満ちあふれた「奔放」を知ることになるだろう。

出典: 人間における勝負の研究―さわやかに勝ちたい人へ (ノン・ポシェット) | 米長 邦雄 | 本 | Amazon.co.jp

『浮いたり沈んだり』……弟子は語る

レッドゾーン振り切りの米長。彼が育てた弟子には、師同様に振り切る者がいる。その代表者として、この先崎学を挙げたい。

たとえば、師と一緒に裸踊りを披露した人間が先崎なのである。さすがに、その著書だけあって、ユニークこの上ない。

表紙のイラストからぶっとんでいる。ビーチベットに寝ころんだアロハな若者がマジックハンドで駒を操り、正装した棋士と指しているのだ。これ、いきなりなレッドゾーンでしょ。

肝心の中身である。師とスケールは違えども、日常における先崎の破天荒ぶりが十分に伝わるエッセイである。棋士仲間や編集者との絡みが嬉しい一冊だ。

さずがに勝負師は、小さなことにはこだわらないのだなあと思わせながら、重箱の隅をつつく、そんなアンバランスにもご注目。
 

出典: 先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫) | 先崎 学 | 本-通販 | Amazon.co.jp

『将棋の必殺技』……大人も読もう。奔放な子ども向け棋書

さすがに、その先崎の著書だけあって楽しい。
なにせ、曰く「必殺ワザシリーズ」なのだ。

もちろん子ども向けの棋書である。だが断っておきたい。本書は大人が読んでも十分ためになる。

奔放な先崎ゆえのまとめ方である。必殺技を身につけ、相手をぎゃふんと言わせたいあなたにピッタリだ

本書を読めば、駒たちが自由奔放に動き出し、盤上での大活躍が期待できる。

繰り返したい。大人も必読である。

出典: 将棋の必殺ワザ (キミにもできる!必殺ワザ) | 先崎 学, 伊東 ぢゅん子 | 本-通販 | Amazon.co.jp

おわりに

今回は「初心者に優しい」という条件をクリアーした棋書ばかりです。だから、安心してお読みください。その他の関連本も合わせて読んでいただくと、棋士達を身近に感じられるのではないかと思います。すると将棋の面白さがアップします。ひいては、腕が上がる。そんな期待を込めての10選でもあります。最後までおつきあい、ありがとうございました。オールアバウト個別記事もお読みいただければ、幸せです。