出産観がガラリと変わる「出生前診断」の深層
賛否両論がある「出生前診断」。本来は、お腹の赤ちゃんの病気や障害を調べる一連の検査を指します。40年前に羊水検査から始まり、日本では1980年代に超音波検査が全国に広がりました。どこでも当たり前のように超音波検査が受けられる国は他になかなかないようです。ただ、超音波検査の画質が向上するにつれて、思わぬものが「見えてしまう」というデメリットも。
誰もが受けている「出生前検査」、それは妊婦健診のエコー。他にも必要に応じて羊水検査、絨毛検査、新型出生前診断(NIPT)、専門医による胎児ドック、コンバインド・テストなど、選択肢は実に多種多様。それぞれ、検査の目的も費用も異なります。検査の種類によっては、受けられる病院も限られています。
「遺伝カウンセリング」とは、どこで、何のためにするのでしょうか? 遺伝カウンセリングの対象となる女性は、 染色体疾患が増加する高齢妊娠の女性、自分や配偶者、その親族の遺伝性疾患の遺伝が心配な人などです。妊娠前から相談することもできます。
出生前診断は気になるけれど、受けることに罪悪感を感じる人も少なくないでしょう。「命の選別」という批判の声もあり、特に日本では出生前診断をタブー視する傾向にあるようです。その背景には、日本の「優生思想」という出産観の歴史が。誰が生まれるべきで、誰が生まれないべきかを国がコントロールすれば国民の質が高まる、という科学的根拠のない思想です。
出生前診断をするつもりはないと考えていても、妊娠すれば誰もが受ける超音波検査で「異常の兆候」を発見されることもあります。何の心の準備もない状態で「染色体疾患の確率が高い」と医師に言われたら、妊婦さんは大きな衝撃を受け、パニックに陥ることもあるでしょう。とはいえ、妊婦健診のエコーは安全なお産のために必要なもの。ここに「賛成か反対か」という単純な話ではないジレンマがあるのです。
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