損害保険/火災保険の入り方

借家人賠償責任保険特約、賃貸物件には必須?

借家人賠償責任保険特約(借家人賠償責任補償特約)は賃貸物件用の火災保険の特約です。家や部屋を賃貸するときに火災保険に付帯して加入した経験のある人も多いでしょう。借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)の基本となぜそれが必要なのかについてお話しします。

平野 敦之

執筆者:平野 敦之

損害保険ガイド

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借家人賠償責任保険とは?

借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)は賃貸向けの火災保険の特約補償です。家や部屋を賃貸するときに火災保険にセットで付帯して加入した経験のある方も多いことでしょう。
借家人賠償責任保険とは?

借家人賠償瀬金保険とは?

実はこれには理由があって、自分が賃貸している部屋や家で失火した場合の法律上の賠償責任が関係しています。今回は、これらの疑問の解説と大家さんと賃貸借契約を結ぶにあたり忘れてはならない借家人賠償責任保険特約(借家人賠償責任補償特約)についてお話ししましょう。

なお、「借家人賠償責任保険特約」、「借家人賠償責任補償特約」など言い回しが保険会社によって異なります。以下この記事では「特約」を入れずに記載するので、この点は考慮して記事を読み進めてください。

<借家人賠償責任保険 目次>  

借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)と賃貸した場合の法律関係

それでは基本事項から確認していきましょう。賃貸・持ち家を問わず、自分が火元になって火災が発生して隣家に類焼した場合、法律上の責任関係をみてみましょう。

故意や過失により他人に迷惑をかけた場合(不法行為)には、民法709条に基づき損害賠償をしなければなりません。しかし火災で類焼させた場合には、失火責任法(失火法)の規定により賠償責任を問われません(ただし火元になった人に重過失があった場合を除く)。

また賃借人が失火などにより借りている部屋や家を家主に返せなくなった場合、民法415条の規定により、家主に対して債務不履行責任が発生します。

本来、家主との賃貸借契約により、契約期間満了後は借りている部屋や家を元に戻して返すことになっています。家主から借りている部屋(債務)を返すことができないため(不履行)、民法709条の不法行為とは別の責任(民法415条、債務不履行責任)が発生します。

つまり家主に対しては法的な責任が関係するのです。
 

なぜ借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)に加入?

極端な話、賃借人の家財が燃えてなくなろうが、家主も不動産屋も困るわけではありません。そういう意味では、保険に加入するかしないかはその人の勝手です。

ただし、失火の場合には大家さんに対して責任が発生しますから、借りている部屋を火事で燃やしてしまったら元通りにしてもらわないと困る、というわけです。

それに対処するための保険が、借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)です。必ずしも強制されるわけではありません。しかし家主からすると何かあったときに責任は取ってもらわないと困るから、賃貸借契約に合わせて加入するように縛っていることがあるわけです。

実際にはこの保険は単独契約するものではなく、特約付帯が一般的ですから、火災保険にセットして加入します。そのため、賃貸借契約を結ぶ際、借家人賠償責任保険特約がセットされた火災保険の加入を勧められるわけです。これが賃貸家財の保険です。

不動産屋さんが保険代理店もしていて、仲介と一緒に火災保険を案内するケースが一般的です。保険を専業にしているわけではないので、手間がかからないように通常セットプランになっています。仲介された物件の重要事項などを聞いたあとに、火災保険の案内をされるでしょうから知識のない人からすれば、難しい話が続いて頭に入らないことも珍しくありません。

賃貸借契約に火災保険の契約を条件にしているケースは多いので、賃貸借契約を結ぶ際にしっかり確認するようにしましょう。
 

借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)の保険内容・保険料

借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償)は、賃貸している住宅などが火災、破壊・爆発事故などにより生じた損害について、法律上の賠償責任を補償する保険です。

最近はこの補償範囲が広がっていて、例えば漏水なども対象になっていたりします。加入するなら補償範囲は広い方がいいですから加入時に確認しておきましょう。

実務的には賃貸居住者向けに損害保険会社が家財を目的として、借家人賠償責任保険を火災保険とのセット保険として販売しています。

住宅の場合は通常賃貸借契約は2年間ですので、これにあわせて保険期間も2年間で掛金は一括払いになっています(月払で口座振替が残不足で保険料が入金されないと、保険金が支払われないことがあるため)。

なお借家人賠償責任保険の保険料は、保険金額(契約金額)に比例して高くなります。賠償責任保険なので、大きな損害が発生すると賠償額も高くなりがちです。賃貸しているものが広い部屋や大きな家ほど損害が発生したときの金額が大きくなります。

自分が加害者となるケースですから賠償関係の保険は節約の優先事項に入れない方がいいと考えますが、プランと保険料の差額などを見ながら検討してみてください。
 

個人賠償責任保険と借家人賠償責任保険は何が違う?

保険について調べたりしたことのある人は、個人賠償責任保険(特約)というものを聞いたことがあるはずです。この保険は、個人が日常生活において故意や過失によって他人に法律上の損害賠償責任を負った場合、対象となるものです。

これで借家人賠償責任保険の代りになるか考える人がいますが、残念ながらなりません

例えば賃貸マンションなどの共同住宅では、階下の人に水漏れさせてしまうことがありますが、こうした場合には個人賠償責任保険が必要です(借家人賠償責任保険は家主に対して損害賠償)。

誰に、どんなケースで損害賠償するのかで対応する保険も違います。そのため、借家人賠償責任保険や個人賠償責任保険、修理費用は賃貸住宅物件用の火災保険にはたいてい付帯されています。
 

借家人賠償責任保険と修理費用補償は何が違う?

もう一つ似た補償があるので確認しておきましょう。賃貸用の火災保険では、「借家人賠償責任保険」だけでなく、「個人賠償責任保険」さらに「修理費用補償」というものも大抵セットになっています。

個人賠償責任保険との違いはすでに記載の通りですが、修理費用補償との違いは何かというと、いずれも火災などにより借りた部屋に損害を与えた場合の補償という主旨に違いはありません。実際には以下の事が違います。
  • 借家人賠償責任保険:家主に対して法律上の損害賠償責任を負った場合が対象
  • 修理費用補償:家主との賃貸借契約に基づき賃貸している部屋などの修理をした場合が対象

もう少し具体的には次の通りです。
  • タバコの不始末でボヤをだして、床と壁に損害  → 民法415条に基づき家主に対して賠償責任発生>借家人賠償責任保険
  • 強風で飛んできたものが窓ガラスにあたり割れた → 賃貸借契約で窓ガラスの破損は賃借人が修理する契約であった>修理費用補償
補償として支払うものが家主に対する「損害賠償金」か賃貸借契約に基づく「費用」かということです。個人賠償責任保険もそうですが、補償する相手や補償するケースが違うのです。
 

大家さんの火災保険があれば、借家人賠償責任保険は不要?

家主の火災保険があれば借家人賠償責任保険は不要?

家主の火災保険があれば借家人賠償責任保険は不要?

ここまで記事を読んでカンの鋭い人は、家主(所有者)が加入している火災保険を使えばいいのではないかと思った人もいるでしょう。確かに不動産を所有している人であれば火災保険に加入しているケースは多いでしょう。

実は火災保険には、「代位求償権不行使特約」というものがついていることがあります。

専門用語ですが、「求償権」というのは相手に対して償いを求める権利です。部屋を借りている人が失火した場合、損害を受けた人(家主)の保険会社が火災保険から保険金を支払うことで家主の損害はカバーされます。

それによりこの求償権を保険会社が取得して行使することができますがこれを「代位」といいます。ややっこしいのですが、それを不行使する特約ということです。つまり請求しないということです。

但し、借家人の故意または重大な過失によって生じた損害に対し保険金を支払った場合を除かれますので、一概に借家人賠償責任保険が不要とも言えません。

失火による損害賠償額が数百万~数千万単位になることも考えられます。日本国内であれば賃貸物件所有するような人は火災保険に加入している確率は高いでしょうが、具体的な補償内容は分かりませんし、家主が火災保険に加入しているかも含めて相手任せにしないことです。

実務的にも大家さんが火災保険に加入しているなら、私は加入しなくていいですよね?とも言いにくい部分もあるでしょう。また借家人賠償責任保険だけでなく、自分の家財や第三者に対する賠償で保険が必要なケースもあります。賃貸借契約に火災保険を条件にして物件を貸すケースも多いので実際にはそんなに簡単ではないと考えます。

意外と軽く考える人もいますが、困ったときに誰かが責任を取ってくれるわけではありません。こうしたことを前提に検討してみてください。

※法律上の損害賠償については事案により異なることがあります。

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