動き始めた日本のスマートフォン - 海外と国内の格差 -

スマートフォンは、携帯電話の音声通話機能とPDAなどのスモールコンピュータの機能を合わせもった端末で、海外では携帯電話やPDAの未来形として普及が始まっています。
機能面では、日本の高機能携帯電話とよく似ているスマートフォンですが、電話よりコンピュータに近く、基本ソフト(OS)を搭載し、PCとのデータ互換や同期、アプリケーションの追加や周辺機器の拡張など、多様な可能性を持っている点が携帯電話との大きな違いとなります。

スマートフォンには基本ソフト(OS)が搭載されるのですが、マイクロソフトのWindows Mobile、ノキアのSymbian OS、PalmのPalm OSが主となります。
スマートフォンを電話器の側面からみると、既にノキア端末に搭載されているSymbian OS 7.0が電話機能とオペレーティングシステムの融合では優れているといわれています。また、Windowsとの連携や親和性、AV機能では、Windows Mobileが進んでいます。また、軽快な操作性とユーザビリティ、アプリケーションの豊富さでは、Palm OSが高い評価を得ています。
各OSには、それぞれ一長一短があるわけですが、Windowsとの親和性の高さや開発環境のサポート面などから最近はWindows Mobileを採用する動きが活発化してきているようです。Palmが自社のスマートフォン「Treo」で、Windows Mobileを搭載した「Treo 700w」を発表したニュースなども、今後の動向を感じさせる印象的なニュースでした。

ノキア、スマートフォン「Nokia 9300」を来年発売へ

  
スマートフォン「Nokia 9300」           Palm「Treo 700w」

こうした海外の動きに対し、大きく遅れをとっていた日本のスマートフォン状況ですが、ようやく昨年から動きが出てきました。法人向けですが、ドコモが2005年に「FOMA M1000」(モトローラ社製)を発売し、ウィルコムは、PHS通話とデータ通信、Windows Mobile 5.0を搭載した「W-ZERO3」を2005年12月に発売開始しました。特に「W-ZERO3」は、発売から1ヶ月足らずで約5万台を販売し、出荷目標台数を15万台に上方修正するほどの人気を博しています。 「W-ZERO3」の成功は、日本でもスマートフォン市場が成り立つことを証明した例としても大きな一歩だと言えます。こうした状況の中、ドコモでも先ごろWindows Mobile踏査端末の導入を発表しています。

Windows Mobile OS端末の導入について

  
FOMA M1000             W-ZERO3

国内のスマートフォンはどこへ向かうのか

現在の日本には、Symbian OSとWindows Mobileのスマートフォンが発売されているわけですが、まだPalm OSベースのスマートフォンはありません。日本でスマートフォンを開発・販売するのは簡単なことではありません。

ハードウェア面からみると、スマートフォンは音声通話端末に汎用OSを搭載し、OS上から通話機能とPDAやPC機能を一元で利用できるようにしなければなりません。そのためには、「W-ZERO3」のようにゼロから端末を作成するか、「M1000」のように海外で既に発売されている端末を日本語版として再開発する必要があります。

ゼロからの作成といっても、スマートフォンを作り上げるには、PDAなどの小型端末を開発したノウハウが必要で、販売するには音声通話機能を提供できるキャリア(移動通信事業)である必要があります。
現状では、スマートフォンを発売するには、キャリアがメーカーに依頼して端末を開発し、メーカーは開発した端末を提供し、キャリアから販売という形態になります。この方式は、端末の種類を増やすことが難しいので多様なニーズに対応した端末が用意しにくいというデメリットがある反面、キャリアは通話・通信サービスの新規加入者を確保できることで、端末の販売価格を端末単体販売価格に比べて低く抑えるできるという利点があります。

海外の端末をベースに日本語版を開発する場合ですが、PDA端末であれば海外の端末を日本語化するだけで日本語版をリリースすることはできますが、スマートフォンとなると、日本語化に加えて通話機能を搭載しなければなりません。この通信機能は、海外ではGSMやCDMA方式など、日本とは異なる方式が一般的ですので、海外の通信方式にあわせた端末を日本用にかえるには、日本の通信方式に載せかえる必要があります。
通信方式の変更は、ハードウェアの内部変更のほかに、通信端末認可なども必要ですので、海外端末ベースのスマートフォンであっても、時間も手間もかかることになります。

海外では、大手メーカーのWindows Mobile端末の多くは、専門のメーカーが開発して供給されています。将来的には、SIMシステムが普及し、端末と通話サービスが独立すれば、スマートフォンもメーカーによる端末のみの開発・販売も可能になるのでしょうが、まだそうした環境には至っていません。

ソフトウェア面からみた場合は、どのOSを採用するかが大きな問題となります。スマートフォンは、汎用OSシステムを搭載して外部プログラムを追加することで様々な拡張ができることが利点ですが、OSだけを日本語化すればよいというわけではありません。搭載する標準アプリケーションの日本語化から、発売後のサードパーティやソフトウェア開発者に対する開発環境の提供まで、ソフトウェア開発環境を提供・維持する技術とサポートも要求されます。

これらハードやソフトの開発は、技術面だけでなく、コストの面でも大きな負担となります。こうした背景を考えると、日本でスマートフォン端末を開発・販売していくには、各OS毎に負荷はかなり違っていそうです。
Symbian OSは、スマートフォンとして海外では、既にノキアからも発売さておりの標準アプリケーションやシステムの完成度は高いのですが、日本におけるソフトの開発環境やユーザによるソフトウェア資産は乏しく、発売後のソフトウェア環境やサポート面での負荷は大きくなりそうです。
Palm OSは、ソフトウェア資産は非常に多いのですが、日本語化や開発をサポートする国内法人が既に撤退しており、国内での開発面で難しさがあります。
Windoews Mobileは、ソフトウェア資産や国内の開発環境、マイクロソフトのサポートなど、現時点で他社のOSに比べて比較的バランスがとれているといってよさそうです。

現状の日本国内では、Windows Mobileデバイスのスマートフォン導入がしやすそうで、そうした流れもできつつあるように見受けられます。スマートフォンのように、まだ日本の市場が形成されていない端末で採算をとるためには、Windows Mobile端末導入へ向かうのは自然の成り行きなのかもしれません。普及のためには、より多くのスマートフォンが国内販売されることが必要ですので、Windows Mobile端末へ向かうとしても現段階では歓迎してもよいのでしょう。ただ、スマートフォンには、Palmの「Treo」やノキアのような優れた端末もあります。こうした優れた端末を日本のユーザが一日でも早く利用できる環境が実現する市場に成長することを期待したいと思います。

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