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三溪ゆかりの隣花苑でおもてなし料理を堪能

横浜ゆかりの実業家、原三溪が開いた「三溪園」。その隣には、三溪ゆかりの古民家レストラン「隣花苑」があります。三溪の伝統の味とこころを受け継いだ、おもてなし料理が堪能できるお店です。

田辺 紫

執筆者:田辺 紫

横浜ガイド

三溪ゆかりの古民家レストラン「隣花苑」

隣花苑
隣花苑 玄関までのアプローチ
横浜ゆかりの実業家、原三溪が開いた「三溪園」。175,000平方メートルの広さを誇る日本庭園です。そのすぐ隣には、三溪の子孫が営む古民家レストラン「隣花苑」があります。実業家、美術愛好家のほか、食通としても知られ、客人をもてなすことが大好きだった三溪。その伝統の味とこころを受け継いだ、おもてなし料理が堪能できるお店です。
※追記:2020年8月2日に惜しまれつつ閉店

隣花苑の場所は、三溪園入口から徒歩約3分の静かな住宅街の一角です。電柱に道案内が出ているので、迷うことはないでしょう。「ここの奥です」という看板に従って進むと、入口がありました。手入れされた庭が、静かに迎えてくれます。さらに進むと、ここだけ時間が止まったような田舎家の入口にたどり着きました。
左:曲がり角にある看板 右:昔話に出てくるような玄関
 

まるで歴史博物館!

「ごめんください」──知人の家をたずねるように敷居をまたいで中に入ると、そこは囲炉裏がある土間でした。かまどや井戸など、歴史博物館でしか見たコトがない生活道具も置かれています。思わず、見渡してしまいます。
歴史博物館のような昔の生活道具が置いてあります

囲炉裏の後ろには、三溪直筆の書がかけてあります。
「隣花不妨賞(りんかしょうするをさまたげず)」
後で教えてもらうことになるのですが、三溪が好んで使ったとされる言葉で、「隣の家の花も自分の家の花も、皆で愛でられるようにしましょう」という意味だそう。この言葉が店名の由来になっています。
玄関を入ると囲炉裏が。店名の由来となった三溪の書がかけてあります

「お待ちしておりました」──ほどなく、笑顔のステキな女性が出迎えてくれました。この方が女将さんの西郷槇子さんで、原三溪のひ孫にあたる方。パンフレットで見た原三溪の写真と、どことなく似ていらっしゃいます。
 

600年もの歴史を刻んだ建物を利用

隣花苑の一室
江戸時代に増築されたとされる奥の間
隣花苑は、今の女将さんのおばあさま(原三溪の長女にあたる方)が住んでいらした家屋。静岡県にある広瀬神社の神官 西島家の家屋を移築したものです。なんと600年前、足利時代の建造物が母体となっているそう! 気が遠くなるほどの歴史を刻んできた建物に入り、食事をいただくことができるとは、隣花苑ならではの楽しみです。現在の女将さんのお母さまが、昭和38年に始められました。
 
隣花苑の一室
隣花苑にまつわる季節の書や絵画が飾られています
お部屋は全部で6室。大小さまざまなお部屋があります。基本的には足利時代の建物で、奥の二間は江戸時代に増築されたもの。季節の書や文殊観音など、さりげなく置かれた三溪ゆかりの美術品の数々も堪能できます。この建物を見るだけでも、「来てよかった」と思われることと思います。
 

基本は飾らない家庭料理

隣花苑の一室
どの部屋にも季節の花が活けてあります
原三溪は、食通としても知られています。日本料理はもちろんのこと、西洋料理、中国料理などあらゆる国のおいしい料理を食べ歩いたそうです。そして自らも料理を考案し、客人にふるまっていました。隣花苑では、そんな三溪ゆかりのメニューを味わうことができます。
 
三溪麺セット
三溪麺(さんけいそば)セット4,042円(税・サ料込)……10月に訪れた際のメニューです。季節によって内容は異なります
今回は数あるコースのなかから、ランチタイムのみに提供されるリーズナブルな「三溪麺(さんけいそば)セット」をご紹介します。前菜・とうふ類・吸物・三溪麺・季節ごはん・漬物がいただけるコースです。

「料亭で板前さんが作る豪華な料理ではなく、旬の素材を使った家庭料理を、季節の器に盛り付けて、提供しています」と女将さん。家庭料理とはいうものの、前菜だけでも6品もあります。お吸い物には、サンマを細かくたたいたつみれが入っています。現代の家庭では、このような手間のかかった料理は出てこないですよね。どれも甘すぎず、辛すぎず、出汁がきいていて、ていねいに作られた味です。
左:手前からお椀(サンマのつみれ汁)、前菜(大豆甘煮)、前菜(いちじくゼリー寄せ、かぼちゃ茶巾しぼり、いんげんごま和え、しめじ茸、えのき茸、黄菊おひたし、柿・こんにゃく・春菊白和え) 右:松茸ごはん
 

和洋中がひとつになった三溪麺(さんけいそば)

三溪麺(さんけいそば)
三溪が考案したメニューのひとつ、三溪麺(さんけいそば)
さて、メインメニューである三溪麺についてご紹介します。三溪麺は、三溪が考案したメニューで、自信を持って客人にふるまったとされるメニューのひとつです。そのレシピが代々受け継がれており、「一人でも多くの方に三溪の思い出として残していきたい」という思いから、変わらない味で今に至ります。

「そば」といってもそば粉ではなく、小麦粉で作られた麺で、細いうどんという感じです。タケノコ、きぬさや、薄焼き卵、ハム、ひき肉、きのこなどが入った、とろみのついたあんがかかっています。「よくかきまぜて、どうぞ」ということで、お行儀悪く、ぐるぐるとかきまぜていただきます。

味は、一言でいえば中華風。とはいえ、和洋中がお椀の中でひとつになっている、という複雑な味です。当時は、ずいぶんとハイカラな食べ物だったにちがいありません。自信を持ってすすめる三溪翁の姿を思い浮かべながら、楽しく、おいしく、のんびりといただきました。
 
隣花苑
手入れされた庭。四季折々の風景が楽しめます
料理の合間には、女将さんやスタッフの方とメニューの話をしたり、季節の話をしたり、しつらえについて聞いてみたり。ここでは、忙しい毎日の中で忘れてしまっているような、ちょっとした会話が沸いて出てきます。600年の歴史を刻んできたお部屋と、四季折々の自然の中、そんな大人の時間を愉しんでみてはいかがでしょうか。

■献立一覧(1名~40名まで、要予約)
・三溪麺セット4,042円(15:00まで)
・7品6,352円
・10品9,240円
・12品15,015円
・15品20,790円
※すべて税・サービス料(10%)込
※16:00以降は10,000円~
※三溪麺コースは1時間、その他のコースは2時間の部屋代込
 延長の場合と19:00以降は、別途部屋代が必要となります。

隣花苑(りんかえん)※追記:2020年8月2日に惜しまれつつ閉店​​​​​​​
・所在地:横浜市中区本牧三之谷52-1
・営業時間:12:00~20:00(入店は18:00まで)
 ※ランチのみの三溪麺セットは15:00(L.O.)まで、要予約
・定休日:水曜日、夏期(8月1日~8月31日)、冬期(12月26日~1月6日)
・交通・アクセス:根岸駅より1番乗り場《市バス58・99・101・108・126系統 》10分 本牧下車・徒歩7分
横浜駅東口より2番乗り場《市バス8系統》35分 本牧三溪園前下車・徒歩3分
・地図:Yahoo!地図情報


【関連サイト】
記事:紅葉とともに愉しむ、横浜ランチ
記事:空に赤、地に黄色──秋の三溪園
横浜レストラン・グルメスポット
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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