すじまきは蒔き床に箸などを使って浅い溝を等間隔につけ、そこに種を蒔いていきます。
ここで注意したいのは、種が重なったり一箇所に固まらないように蒔く、ということです。
ばらまきは文字通り、蒔き床に種をパラパラとばらまく方法です。
ビオラやアリッサム、キンギョソウなど粒が小さくて一粒ずつ点まきするのが難しい場合は、すじまきかばらまきにします。
細かい種を蒔くときは、種に増量剤として砂を混ぜて古ハガキを半分に折ったものの上に乗せ、トントンと手首を叩きながら蒔き床全体にばらまきします。あるいは増量剤としての砂を混ぜた種を、コショウなどの調味料瓶に詰めて振り掛ける、という手もあります。
(いずれも後で固まったところを見つけたら、ピンセットなどで少し広げておくと、次の間引きの作業が楽になります。)

種の覆土は、その種が好光性であればごく薄く、嫌光性であれば厚めにかけます。カンパニュラ、キンギョソウ、ベゴニア、ペチュニアなどは好光性、二ゲラ、ハナビシソウ、ジニアなどは嫌光性です。
種蒔き後の水遣りですが、嫌光性のものは発芽まで湿らせた新聞紙で覆い、その上から霧吹きなどで水遣りできます。好光性のものは、腰水(水を張った容器に育苗箱をつけ、下から吸水させる)につけます。腰水は嫌光性のものにも使えます。ただし、どちらの場合も浸けっぱなしにしておくと過湿になってしまうので、注意が必要です。
やがて芽が出て、双葉が重なり合うようになってきたら、一回目の間引きを行います。ピンセットや箸を使って、他の芽まで抜いてしまわないように注意して間引きます。
さらに、本葉が出てきたら二回目の間引きです。間引きの際、隣の根とからみあってうまく抜けないようなときは無理に引き抜かず、間引くほうの地表部を鋏でカットします。その後、本葉が3~4枚程になったら「鉢上げ」をします。別の育苗箱に間隔をあけて植え替えるか、ビニールポットに植え替え、しっかりした苗に育てます。鉢上げの際は、根についた土を落とさないよう大きめに掘り取り、茎や根を痛めないように、そっと扱います。
本葉が茂りポットに根がまわってきたら、いよいよ定植です。ここまでくれば、その苗は店頭で売られているものと同様に扱えるわけです。元肥を済ませた花壇に、あるいはコンテナにと思い思いの場所に植えてみましょう。やがてあなたの蒔いた種から、美しい花が咲くことでしょう。
さて、ここまで種蒔きの「基本」を述べてきましたが、この「基本」が何事にも肝心となります。ガーデニング初心者はまじめにテキストどおりに作業するので、結構うまくいくものです。しかし、ガーデニング歴ニ年・三年となってくると、どこかで手抜きをしたくなってしまうのです。「去年はピートバンに蒔いたけど、直まきでもいいかな」とか、「腰水は面倒だからジョーロでいいよね」、「間引きしなかった~」等々の手抜きで失敗してしまうことも少なくないようです。
蒔き床を変える等の実験は、時には面白い発見もあったりしますが、確実に育てたいのであれば、やはり基本に忠実にするのが一番です。
植物って、かけた愛情の分だけ美しい花で返してくれるのかもしれませんね。今年はベテランガーデナーの方も、初心に返って種蒔きしてみませんか?