要するに乾季がイヤ

マダガスカルの、このカメレオンが生息する地域はサバナあるいはステップ気候で、雨季と乾季が大きく別れています。

多くの生き物たちは雨季に繁殖や成長を行い、厳しい乾季は夏眠をしてしのぐという方法をとっています。

ラボードカメレオンは、この乾季をあえて経験せずに、どうせキビシイ季節なのだから、あとは自分たちの子どもたちに任せて、大人は舞台から降りよう、みたいな方法をとったのだと考えられます。
こうすることによって、繁殖可能な個体が繁殖前に乾季の間に命を落としてしまうことを防いでいるわけです。確かに、若くて元気なまま繁殖するのですから能率はいいでしょう。

進化の視点から

私は、悔しいことに生物学者ではありませんので、ここからは何の科学的根拠もなく、自分の想像力だけで話させていただきます。

そもそも、生き物がこの世に存在し、生きようとする理由というのは3つあると思います。つまり「個体の生命の維持」「子孫を残す」「種として進化をする」の3つです。

「個体の維持」とは、つまりその1個体が命を永らえるような働きです。
空腹だから餌を食う、眠いから寝る、寒いから日光浴をするという感じでしょう。

「子孫を残す」は生物の義務でしょう。
つまり、交配相手を見つけて、繁殖行動を行うために縄張りを張ったり、婚姻色を発色させたり、戦う力を強くしたり。こうして自分の遺伝子を残し、さらに新しい遺伝子を組み込むことによって、親世代よりより生き抜く力がある子孫を残していく、と。

「種として進化する」は非常に長いスパンの話ですが、遺伝子に多様性を持たせて、さまざまな環境に適応していく力を、種族として身につけていく、ということでしょう。これは、とにかくさまざまな遺伝子を取り込んで、蓄積することによって進むことです。

こういう視点から見ると、ラボードカメレオンの「短い寿命」というのは、どんな意味を持っているのでしょうか。

速い世代交代が進化を促進する?

おそらく、世の中でもっとも進化が速いのはバクテリアの仲間でしょう。
彼らの世代交代は、下手をしたら数時間単位です。つまり1匹のバクテリアが1日で、等比級数的に数十億匹以上に殖えるのです。

個体が新たに獲得する能力が、遺伝子の突然変異であると考えれば、繁殖するときこそが唯一の遺伝子の突然変異を起こすチャンスです。

ですから、バクテリアであるブドウ球菌などはあっという間に抗生物質に対する耐性というやっかいな新しい能力を身につけてしまうのです。

つまり、遺伝子に起こる突然変異が偶然の賜物であると考えれば、進化は確率論だけに支配されるわけですから、当然、世代交代が速ければ速いほど、短い時間内に突然変異を起こす確率もアップしますし、速く進化をすることができるでしょう。

そう考えれば、ラボードカメレオンは四足動物としては異例の速さで世代交代を起こすわけですから、より速く進化して種として繁栄していくのかもしれません。

もしかして速すぎ?

ただし、進化には遺伝子の変化だけでなく、環境の変化への適応も関係しているのは間違いないでしょう。

つまり先ほどのブドウ球菌のように、バンバン新しい抗生物質という環境の変化に直面するからこそ、進化をしてしまうわけです。

幸か不幸かカメレオンという生き物は、形態が非常に特殊でさまざまな環境への適応を起こしている生き物であると考えられます。
例えば、素早く変えることができる色彩、別々に動かして広い範囲を同時に見ることができる目、遠くの餌動物も確実に捕らえることができる伸びる舌、樹上生活に特化してしっかりと枝を捉えることができる指と尾...枚挙にいとまがありません。

そして、その結果、特別に新しい環境を求めるために必要な「強い移動力」というものを失っているわけです。
ということは、いくら世代交代が速くても、いつまでも同じ環境で生活をしているわけで、新しい環境に到達したり出会うヒマがないのではないでしょうか?