全国の両爬ファンのみなさん、コンニチハ!

またエライ久しぶりのシリーズ記事「新・両爬飼育入門コトハジメ」の登場です!

今回は、構想5年!結構、はじめの頃から書こう書こうと思っていた「駆虫」に関して迫ってみました!

ただし、先にお断りしておきますが、「駆虫」は両爬に対する医療と言える行為です。
ですからきちんとした知識や技術なしで行うものではないと考えています。ですから、今回はあくまでも「駆虫って何?」という解説であって、飼育者のみなさんに飼育している両爬に「自分で駆虫をする」ことを勧めるものではありません。
できる限り動物病院で獣医師の先生に相談をして、その指導のもと行って下さい。

駆虫の意味

駆虫は、飼育している両爬の体内に寄生している「寄生虫」を駆除することです。

野生で採集された両爬の体内には寄生虫が寄生していることは当然と考えた方が良いでしょう。また飼育下で繁殖したCB個体でも、よほど完全な管理下に置かれていない限り、外部からさまざまな要因で寄生虫を体内に持っている可能性というのは否定できません。

基本的に、野生動物が生きている限り、多かれ少なかれ寄生虫を体内に持っているのが普通で、野生ではその寄生虫によって宿主である動物が死んでしまったりすることはないはずです。
寄生虫から見れば、宿主に生きていてもらわなければ自分が死んでしまうわけですから。

宿主である野生動物は、これら寄生虫に対し免疫によってその増殖や活動を抑制してバランスを保っていると考えられます。

ところが、飼育下では自然環境の完璧な再現はできませんので「ストレス」、「栄養の偏り」、「不適切な飼育環境」あるいは「寄生虫の自己感染」などにより、寄生虫の活動と宿主の健康状態のバランスが崩れて病気に至ったり、最悪の場合は死なせてしまったりすることも考えられるわけです。

それを防ぐために、特に野生から採集されてきたWC個体に対し駆虫薬を使って寄生虫を体内からとりあえず駆除する行為が駆虫です。

寄生虫

寄生虫にはダニのように表皮などに寄生する「外部寄生虫」と回虫などのように体内に寄生する「内部寄生虫」があります。
外部寄生虫の代表であるダニに関してはこちらの記事を読んでいただくとして、ここでは「内部寄生虫」に関して焦点を絞っていきます。

一言で寄生虫と言っても、その種類は多岐にわたりますが、一般的に両爬では「線虫類」と「条虫・吸虫類」および単細胞生物のため「寄生虫」とは呼ばれず「原虫類」とよばれるグループの3つ程度にわけて考えればいいでしょう。

寄生虫の種類

・線虫類
爬虫類に寄生していた線虫類
画像提供:児玉どうぶつ病院

「線虫」とは分類的に「線形動物」に属する動物たちで、具体的には「カイチュウ(回虫)」「ギョウチュウ(蟯虫)」のように、昔からなじみの深い寄生虫です。またイヌの病気で有名な(人にも存在する)「フィラリア」も線虫です。
ギョウチュウは1cm程度の長さの細い虫、カイチュウは20cm程度の大きさになります。

生態は様々ですが、フィラリアやギョウチュウは「時間」を感じることができるようで、「夜間(特定の時間であることが多い)」になると体の中を移動して産卵を行うことが知られています。ひょぇぇぇぇ....

フィラリアはカなどの吸血性の昆虫類を介して伝染し、ギョウチュウは肛門付近を触ることで手を介して伝染します。
カイチュウは宿主動物の糞の中に卵を生みますので、それが野菜などの食物を介して伝染します。

・条虫・吸虫類
「条虫・吸虫類」とは分類として「扁形動物」つまりヒルやプラナリアの仲間で、寄生虫としてはサナダムシ、住血吸虫(ジストマ)、エキノコックスが特に知られています。
爬虫類に寄生していた吸虫類
画像提供:児玉どうぶつ病院


サナダムシはご存じのように、ヒトの腸管内に住む10mにも成長する長大な寄生虫です。
一方、住血吸虫(ジストマ)は名前の通り血管内で赤血球を栄養源とする小さな寄生虫で、かつての日本で脅威であった(今は撲滅された)日本住血吸虫に見られるように非常に恐ろしい病気を引き起こす種類もいます。

サナダムシやエキノコックスは糞便から、ジストマは水中で皮膚から体内に侵入して感染します。私も、どこでもかしこでもすぐに川とか池とかに入るのを控えなきゃ...

・原虫類
「原虫」は、細菌類ではない「単細胞生物」と考えればいいでしょう。アメーバが代表です。
寄生性の代表はクリプトスポリジウム、マラリア、トキソプラズマ、鞭毛虫類などがあります。基本的に非常に小さいので最低でも光学顕微鏡を使わなければ見ることはできません。
多くは病気を引き起こすようなことがない生物ですが、上に挙げたような種類では強い病原性があり、合併症を引き起こして致命的になることもあります。
線虫同様、糞便や吸血性の昆虫類によって感染します。
爬虫類から見つかった原虫類のコクシジウム類のシスト
画像提供:児玉どうぶつ病院


えーと、ここまで書いてなんかマジで気持ち悪くなってきた...
寄生虫のことなんて調べていると、マジで気が滅入ります。あー、だからあんまり書きたくなかったんですよね...
でも、頑張って最後まで書こう。
おぇっぷ。

駆虫の方法

駆虫の必要性についての議論は後回しとして、ここから駆虫の実際を解説していきますが、最初に書いたようにあくまでも医療行為ですから、必ず獣医師の指導の元で行なって下さい。

上に挙げたように、寄生虫と一言で言っても、いろいろな種類があるわけです。
ですから、両爬の飼育個体に駆虫を施そうとするには、まずその個体がどんな寄生虫を持っているかを調べる必要があります。

方法は基本的に糞便を調べることになります。

まず第一に、爬虫類の駆虫を行ってもらえるのかは聞く必要があります。
それを引き受けてもらえそうだったならば、検査に必要なもの予約の必要があるかを聞きます。

次に通院予定日が決まったならば、その日に合わせてなるべく新しく新鮮な糞便を持って行きます。
新鮮でないと、糞便中の寄生虫の形が変わってしまったり活動しなくなって確認できなくなったりするからです。

糞便は乾燥させないように湿らせた脱脂綿やティッシュにはさんでジップロック式のビニール袋などに入れて冷蔵庫で保存します。

こうして採取した糞便を動物病院に持っていき、顕微鏡を使ってどのような寄生虫がいるかを調べてもらうわけです。糞便を調べ、駆虫が必要かどうかを判断してもらい、薬を処方してもって指示通り両爬に与えていきます。

駆虫薬

一般に原虫類の駆除に対してはメトロニダゾール(いわゆるフラジール)を使います。これはイヌやネコの駆虫剤としてもよく使われていますので、動物病院では普通に準備されています。
メトロニダゾールは原虫類のDNA合成を阻害する効果がありますので、原虫類が繁殖するのを抑制します。
ですから、一回の投与で死滅するわけではありませんので、一般にはメトロニダゾールを数日間連続して口から飲ませるという方法を中心に行います。

それに対して線虫類の駆除にはフェンベンダゾールという薬を投薬します。これも駆虫薬としてはよく知られています。
フェンベンダゾールは線虫類に対してエネルギー合成などの生理的機序を阻害して殺虫的に効きますので一回の投与で線虫類の大部分を一掃できますが、卵に対しての殺虫効果はありません。したがって体内に残っている卵から幼虫を孵化させてから駆除するために数日の間隔をあけて数回投与することが多いです。

また条虫・吸虫に対してはプラジクアンテルが使われます。これは条虫・吸虫類の細胞膜合成を阻害して殺虫的に効果がありますから、フェンベンダゾールのように数日の間隔をあけて数回投与する方法が基本です。

なお、これらの薬品の投与方法はもちろん駆虫の対象や生体の状態などを鑑みて臨機応変にさまざまな方法がとられることは言うまでもありません。

駆虫期間中の飼育

駆虫の期間中の注意事項も獣医師の先生から指示がありますので、それに従いますが、一般的には

・温度・湿度の管理を徹底する
これを行わないで駆虫のための投薬を行うことは、逆に状態を悪化させることにつながります。

・再感染を防止する
排泄物の迅速な除去や飲み水をいつでもきれいなものにするなど、清掃や衛生環境の整備を行って再感染しないようにします。特に生体自身に糞便がくっついていないか注意を払います。

・個体の状態を観察して、必要な治療や管理を行う
駆虫が必要な個体は状態が落ちて感染症などにかかっている場合や脱水症状などが見られるような場合も多いので、併行して必要な治療を行っていきます。

・投与方法や投与量などを守る
薬を使うわけですから当然のことでしょう。もちろん「確実に」投与するあるいは投与したことを確認することも大切です。

・再検査を実施する
薬品の投与が終了しても、必ずしも十分な駆虫ができていないこともありますので、必ず再検査をしてもらいます。

駆虫は「治療」である

ここまでを読めば理解していただけると思うのですが、「駆虫」という行為は単なる「駆虫薬の投与」という作業ではなく、「総合的な治療行為」であるということです。
つまり、そう簡単な作業ではないということです。

ですから、そんな意識や知識を持たないまま駆虫に臨むことは駆虫の失敗だけではなく、それこそ生体の健康へのダメージ、そして最悪の状況だって引き起こしてしまうかもしれません。

人間だってそうでしょう?
病院の医師の話を無視して「自分の体のことは自分が一番よくわかっているんだから」なんて、いい加減な気持ちで治療をする人なんていませんよね?

飼育している両爬だって同じです。彼らの身になって真剣に駆虫に臨むことが飼育者に必要なことです。

駆虫の必要性

さて、最後になりますが駆虫の必要性について考えてみたいと思います。

果たして、駆虫という行為は本当に必要なのでしょうか?

正直に告白しますと、私は今まで飼育している両爬を駆虫したことはありません。
私自身に対しては、小学校の低学年の時にしましたが...
閑話休題。

で、それで問題がなかったのか、と言われれば、おそらく「あった」と思います。
今までWCのヘビやトカゲ、ヤモリなどを「それ」とおぼしき症状で殺してしまったことが何回かあります。
例を挙げると
・食っても食っても太らずにやせて死んでしまったマダラヘビ
・皮下に何カ所も硬い腫瘤ができたマダラヘビ
・皮下に明らかに線虫とわかるものが透けて見えていたヤモリ


などがありました。

それに、駆虫をすることによって他の健常な飼育個体に対する感染のリスクを低減させるだけでなく、何より一番大切な私たち人間への感染(ズーノーシスも防ぐことができます。
糞便、汚れた水や床材、ハンドリングそして餌昆虫の脱走や衛生害虫(ゴキブリやハエ、カ)などによって思わぬ寄生虫が私たち人間に感染する可能性だって否定できません。

いや、本当に私も一回病院に行って診てもらおうかと思っていますよ。

駆虫しないという選択肢

ただ、言い訳がましいのですが、まず近くに両爬の診療をしてくれる動物病院がなかったですし、個体自体が非常に小さく私個人が投薬できるかどうか不安があったことなどが理由で、飼育開始当初の駆虫に踏み切れなかったのです。

一方で、私がこれまで飼育してきた数え切れない両爬たちには駆虫なしで長生きして繁殖をしている個体がいるのも事実です。
それに、いくら動物病院の先生でも両爬それぞれの個体に対して、どのように駆虫を行えばいいのかの知見は十分とは言えないですから、駆虫薬の影響で本格的に拒食したり、トドメの一撃になってしまうことだってあり得るでしょう。

つまり駆虫に対して消極的になってしまう方々の理由として
・本来、野生の生き物が持っているから
・飼育環境がしっかりしていれば寄生虫は悪さしない
・方法が確立しているわけではないので、駆虫を行うことによって考えられるリスクもある

があるわけです。

しかし、理屈はどうであれ、ネットとか本とかで寄生虫の情報を集めてしまうと神経質すぎることはわかっているのですが「駆虫、絶対必要」って感じてしまいます。
これを書いている間にトイレに行ったのですが、いつもの3倍くらい手をよく洗いましたから。
それに何より死んでしまった両爬の解剖写真で「玉になっている線虫の集団」の写真とか見てしまったら「うちの飼育個体のおなかに中にこんなのがいたら...」って考えてしまいます。

というわけで、少なくとも
相談できる獣医師の先生がお近くにいるのでしたら飼育個体の駆虫は必要である
あるいは
お腹の中の虫を下して、いつもニコニコ健康両爬!!
という結論に達しざるを得ませんでした。

そして、できれば駆虫をされた方々はそれを記録に残して欲しいと思います。
両爬の種ごとの駆虫のデータなんてほとんどないようなものですから、これからのためにもぜひ蓄積して活用できるはずですから。

しかし、本当にマジでもうイヤ。ダニの時もそうだったけど、寄生虫の話なんて...
なんかおなかがゴロゴロしてきた...そう言えば、目もなんか見えにくくなってきたような...
病院に行こっと!

<参考ページ>
寄生虫ミニ辞典 from 財団法人 海外邦人医療基金
爬虫類症例集 from 児玉どうぶつ病院

<関連ガイド記事>
クリプトスポリジウム症 from All About両爬サイト
両爬のズーノーシス from All About両爬サイト
ダニ from All About両爬サイト
新・両爬飼育入門コトハジメ 直リンク集
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。