爬虫類・両生類/ヤモリ・イモリの飼い方

有尾類(有尾目)とは!サラマンダー、サンショウウオ等の飼育

今回ご紹介するのは「有尾類(有尾目)」です。サンショウウオやイモリなど、マイナーでありながらも根強いファンが多い、この種類の魅力を語ります。小規模の飼育が可能などのメリットから、“飼育設備は簡単だが、飼育自体は難しい”という注意点までしっかり押さえておきましょう。

執筆者:星野 一三雄

有尾類は飼育して楽しい?

有尾類は飼育して楽しい?

マイナーでありながらも、根強いファンが大変多い、「有尾類」の魅力に迫っていきます。
   

有尾類とは!サンショウウオやイモリの魅力

両生類には大きく分けて3つの仲間に分類されます。ひとつはカエルの仲間「<無尾目」、もう一つは最もマニアックなアシナシイモリの仲間「無足目」。そして3番目が今回紹介する、日本ではサンショウウオやイモリ、海外ではニュート、サラマンダーといった「有尾目」の仲間たちです。

カエルと同様に、彼らの一生は基本的には寒天質に包まれた軟らかい卵を体内または体外受精することから始まり、オタマジャクシのような幼生時代を過ごし劇的な変態を経て成体になっていきます。おもしろいのは変態の時に、カエルの場合は後ろ足から生えてきますが、有尾類は前足から生えてきます。
 

有尾類は意外にバラエティ豊か

日本では有尾類というのはあまり一般的でなく、私も今までに何度も
私「サンショウウオ飼っているんだよねー」
友人「えー、サンショウウオって天然記念物だろー?いけないんだー」
私「ええっと、だからそのサンショウウオじゃなくて...小さいんだよ」
友人「ああ、子供のサンショウウオね。でも子供でも天然記念物だろ?」
・・・・
などというじれったさを味わっています。
このように日本では有尾類はイモリ・オオサンショウウオくらいしか一般に知られていませんが、実は意外にもバラエティは豊かなのです。一般に私たち愛好家は有尾類を見るときに、以下のような線引きをして考えているのではないでしょうか。

◇完全水棲種
オオサンショウウオの仲間やサイレン、アンヒューマ、マッドパピーなど。分類上はごちゃまぜですが、いずれも一生を水中で生活する種類です。オオサンショウオを代表に大型の種類が多いのも共通点です。
ヘルベンダー

◇小型陸生種(サンショウウオ・サラマンダー)
要するに小型で変態後は基本的に陸上で生活をする種類です。日本の17種類のサンショウウオをはじめ、ポピュラーなタイガーサラマンダー、美しいファイアーサラマンダー。ミットサラマンダーやイボイモリなどもこの仲間でいいでしょう。
マダライモリ

◇小型半水棲種(イモリ・ニュート)
日本のアカハライモリに代表されるように、変態後も水に対する依存性が強いグループです。最近、人気のクシイモリを含むヨーロッパイモリの仲間も半水棲種が多いようです。
トルコスジイモリ

◇番外・・・メキシコサラマンダー(ネオテニー)
何のこっちゃ?という方もいるかもしれません。「ウーパールーパー」のことです。ウーパールーパーはメキシコサラマンダーという有尾類の幼形成熟(ネオテニー)個体のことです。つまり、本来はウーパールーパーは変態して普通のサラマンダーとなって陸生になっていくのですが、それが変態せずに幼生の外見のまま成体になってしまっているのです。
メキシコサラマンダー

生物学の実験に使われるため、古くから養殖が盛んでいろいろな品種も作出されています。
相変わらず根強い人気の種類ですが、野生の個体はCITESIIの対象として規制されている絶滅危惧種であることも覚えておきましょう。
 

有尾類の楽しみ方

バラエティが豊かな有尾類ですから、その魅力も多岐にわたります。
◇小規模の飼育が可能
一部の水棲大型種を除けば、一般に有尾類は小型で不活発ですからケージなどが小さくてすみます。
また一般に両生類飼育には爬虫類ほど紫外線に対して神経質になる必要がないと言われます。紫外線が不要と言うことは、それだけでも飼育設備が簡素になります。
さらに有尾類は代謝が不活発ですので、給餌頻度も少なくてすむのも楽と言えば、楽です。後から話しますが、逆にこれが有尾類飼育の最大のネックでもあるのですが...

◇水棲種は観賞魚飼育のノウハウを流用
一方、水棲種の飼育に関しては観賞魚飼育のノウハウが流用できます。観賞魚の飼育技術は、一般に両爬飼育よりも進んでいる面が多く、飼育機材なども充実し流通量も多いため安価に済む場合が多いのです。そういう意味では他の両爬よりも飼育しやすいと言えるかもしれません。

◇幼生と成体で二度おいしい!!
某有名雑誌で使われたフレーズをそのままパクってしまい、申し訳ないのですが、幼生と変態後の成体飼育で「一粒で二度おいしい」のが両生類飼育の醍醐味でもあります。もちろん有尾類でもそれは当てはまります。

◇コレクションの楽しみ
コレクション的な飼育には賛否両論ありますが、有尾類飼育に関しては否定できない事実であります。
有尾類は不活発で移動能力が小さいために、生息地が異なれば、違った特徴を持った個体群になりやすい、と言った傾向があります。
このため有尾類は多くの別(亜)種が存在していたり、産地による色彩の変異などが大きい場合があります。これが特にマニアゴコロをくすぐってしまうのです。
さらに飼育が小規模ですみますので、大量飼育が可能なこともコレクション飼育に向いていると言えるでしょう。
さらに日本の有尾類を見るとわかるようにまだまだ未知の種類が発見される可能性などもあることも楽しみのひとつであります。

◇フォルムと動きの楽しみ
もちろん、有尾類の個体自体にも飼育者の心を惹きつける魅力が満載です。
大きく突出した目はつぶらで、視力の良い彼らは餌をもらうために、私たちをじっと見つめます。
特に幼生時代や水棲種ではにっこりと微笑んでいるような口元は、まさに癒し系と言えるでしょう。
意外にも手足は人間の赤ちゃんのような雰囲気ですし、尻尾の形は機能美とも言えるでしょう。
もちろん体色も、派手な美しさからいぶし銀のような渋いものまであり、使われていない色を探す方が難しいくらいです。
イタリアファイアサラマンダー
 

そんな有尾類を幸せにするために!飼育の注意点

では有尾類を飼育するにはどうすればいいのでしょう?
有尾類は「飼育設備は簡単だが、飼育自体は難しい」と考えた方が良いでしょう。
ここでは最もシビアである小型陸生種の飼育のポイントを3つだけあげてみましょう。
◇高温対策
有尾類のほとんどは「高温に弱い」と考えて下さい。もちろん、それほど神経質にならなくてもいい場合も多いのですが、それでも真夏には何らかの対策をしないとあっという間に弱ってしまいます。
特に日本の流水性種(ヒダ、ブチ、ベッコウ、オオダイガハラ、ハコネなど)は場合によっては何らかの冷却装置を必要とすることもあります。
外国産の種も生息地の環境などの情報を知ることで対策を立てましょう。
ブチサンショウウオ

◇湿度保持
両生類は皮膚呼吸をしますので、体表が乾いてしまうと、呼吸ができずに死に至ります。だからと言って「ただ湿らせればいい」わけではありません。カエルと同様に床材や水場などその種類の生態にあった湿度の保持をしましょう。

◇常に清潔に
両生類は哺乳類や爬虫類とは異なり、尿を有害なアンモニアで排泄します。
自然界ならば自然に浄化されるのですが、有尾類が飼育できるような狭いケージ内ではそれができません。しかも床材やケージ内の湿度が彼らの生活環境のすべてでもあるわけですから、そこが汚染されてしまっては、生きていくことができません。こまめな掃除が必要になります。

私は以前サンショウウオを飼育していたときに「掃除による環境の急変は彼らのストレスかな」と思っていたのですが、一回餌付いた有尾類は結構図太い神経を持つようで、環境さえよければ、また餌を食うようになり心配しなくていいようです。
 

そして有尾類飼育の最大の敵!!

私のように両生類も、爬虫類も、虫も、魚も、ハムスターも...などという無節操な飼育者にとって、有尾類飼育の最大の敵は高温でもないし、湿度の保持でも、拒食でもありません。
有尾類飼育の最大の敵は「彼らのアピール性のなさ」です。(特に陸生小型種)
つまり、あまりに彼らの性格が陰性であり、飼育設備が簡素で照明もなく、毎日の給餌の必要がないという、いわゆる手間がかからないため世話をするのが後回しになってしまうのです。で、気づいてみたら糸くずのような細い体になってしまって殺してしまう、という失敗が、恥ずかしながら過去幾度となく繰り返してしまいました。
そもそも「アピールがないから世話が後回しになってしまう、などと言うのは言い訳であり、そんな奴に生き物を飼育する資格はない」と言われたら、返す言葉もありません。
しかし、それほど彼らは不活発で地味なのです。

◇イボイモリの失敗
最近イボイモリがちょっと流行しています。実は私も以前はイボイモリの持つ特異な形態に惹かれ、ずーっと飼育を憧れていました。あるきっかけで中国産のイボイモリ(日本産とは別属)を飼育する機会を得たのですが、はっきり言って飼ってみてガッカリ。
とにかく動かない。もちろん飼育環境の不備があったのかもしれませんが、本当に生きているのか死んでいるのかわからないような生き物だったのです。餌も、ミールワームの動きにさえついていけないようなスローさでした。
もともとイボイモリにそれほどの思い入れがなかった私は、そのまま他の生き物の世話に没頭することになり、結局イボイモリを何匹か殺してしまったのです。
モトイボイモリ

日本のイボイモリは絶滅が危惧されている生き物です。また沖縄本島産はすべて天然記念物に指定されています。安易に飼育して殺してしまってはいけません。アカハライモリのように産卵期になれば、その辺の田んぼでたくさん見られる、というようなイモリではありません。
イボイモリは飼っていて、おもしろい生き物ではありません。それを知っていてもなお、どうしてもイボイモリでなければダメなんだ、絶対に俺の手でイボイモリを殖やしてやる、くらいの思い入れと気合いがある方しか飼育してはいけません。

イボイモリに限らず、多くの有尾類(特に陸生小型種)は、飼育しても意外につまらないし、飼育下での繁殖法も確立されていません。そして何より、生息環境の悪化などから絶滅が危惧されているような種も多いのです。

タイガーサラマンダーなどの一部の種のように、飼育に向いていて、アピール性も高く、CB化が進んでいるような種類以外は、「本当にこれでなきゃダメなんだ!!」と言う熱烈なファンの方にのみ飼育が許される、そんな生き物たちが有尾類なのかもしれません。
タイガーサラマンダー

有尾類飼育は「所有する優越感」を飼育者が持つことを否定できない趣味です。しかし逆に言えば、有尾類の根強いファンの方は、「所有する優越感」の真の意味を理解している方たちなのかもしれません。他の人から見たら「これのどこが...」というような種にも全力を注ぐことができる。そんな方たちに飼育されれば、静かな生活を好む有尾類たちも幸せに飼われてくれるかもしれません。


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