爬虫類・両生類/ヘビの飼い方

ヘビの毒ってなんだろう? 毒ヘビについて知ろう!

「ヘビ」と言えば「毒」って考えている人も多いようです。もちろん毒を持っているヘビも多いのですが、そもそも「ヘビの毒」ってなんでしょう? 毒ヘビの種類や、咬まれた場合の対処法など、勉強してみましょう! ぜひ参考にしてみてくださいね。

執筆者:星野 一三雄

ヘビの毒について

ヘビの毒について

<目次>

毒ヘビは2つのグループに分けられる

一般の方に「ヘビ」と言ったら「があるんでしょ?」などと言われてしまうことが多いのですがヘビの中で特に有名な毒ヘビは2つのグループに限られます。
ひとつはマムシやハブを含む「クサリヘビ科」、もうひとつはご存知コブラの仲間「コブラ科」です。
他にも無毒のグループである「ナミヘビ科」にも一部、毒ヘビが含まれています。

面白いのは、この毒ヘビの二大勢力はそれぞれ別の毒を持っているのです。
つまりクサリヘビ科は主に「出血毒」、コブラ科は主に「神経毒」を主成分とする毒を持っているのです。
「出血毒」は主に血管を破壊する成分の毒です。ですから咬まれると血液が循環できなくなってしまい、組織が壊死してしまいます。
「神経毒」は主に神経を麻痺する成分の毒です。咬まれた場合は呼吸不全などの神経障害が起こります。

毒ヘビを分類するのに毒牙が口の中の前の方にある「前牙類」と口の奥の方にある「後牙類」というのがあります。クサリヘビやコブラの仲間は前牙類、ヤマカガシのようなナミヘビ類の毒ヘビは後牙類です。

また毒牙の構造にも特徴があり、クサリヘビでは牙がストローのように管状になっている「管牙」、コブラでは牙の表面に毒が通る溝がある「溝牙」があります。特にクサリヘビの管牙は普段は折り畳まれており、咬む時に立ち上がる「可動式」になっているのも特徴です。
 

毒の目的

毒ヘビの毒は何のためにあるのでしょうか。これはむしろ身を守るためというよりも「餌を捕らえるため」なのです。ですからもちろん我々人間に害をなすためにあるわけではありません。
実はヘビの毒というのは、本来は「唾液」に由来するものなのです。特に出血毒のヘビに言えることですが、消化液でもある「唾液」を「牙」を使って餌の体内に打ち込み、餌を内側からも消化できるように進化した結果が毒ヘビであるとも考えることもできます。もちろん咬まれた獲物が運動能力を制限されるため、ヘビの捕食にとって毒が極めて役立っていることは言うまでもありません。

また毒は単一の成分ではなく、さまざまなタンパク質によってできています。その中には、今後の医療に役立ちそうな物質も含まれているそうなので、将来、ヘビの毒から不治の病の特効薬なども生まれるかもしれません!!
 

毒ヘビに咬まれたら

毒ヘビを個人で飼育することは勧められませんので飼育下での事故はあえて触れないでおいて、野外ではとにかく「咬まれない」ようにするのが一番です。そのためには毒ヘビがいそうな場所では「咬まれる前に毒ヘビを見つける」ことです。見つけたら静かにその場所を離れましょう。決して咬みつくために追いかけてきたりはしませんので。
それでも、もちろん沖縄県のハブ咬症のように毒ヘビに咬まれる事故は存在しています。
もしも毒ヘビに咬まれたら
・何回も咬みつかれないように、すぐにその場を離れる。
・すぐに病院に行く。

が基本です。よく言われる「傷口よりも心臓に近い場所を縛って毒の循環を防ぐ」と言うのは神経毒を持っているヘビの場合は有効ですが、出血毒のヘビに咬まれた場合はよくないようです。またヘビの毒はタンパク質ですので、口で吸い出して、万一飲み込んでも害はありませんが、なるべくなら吐き出して、後でうがいをよくしましょう。やっぱり、毒の飲み込むのって、あまり気持ちの良いものではありませんから。
 

血清とは

毒ヘビに咬まれた時は「血清(抗毒血清)」を打つ必要がある場合があります。
現在では、馬に微量の毒を、約半年をかけて注射し体内でその毒の「抗体」を作らせて「血清」として利用します。大体一頭の馬で300本ほどの血清を作ることができるそうです。将来はバイオテクノロジーを駆使して微生物から血清を大量に製造できるように研究を進めているようです。

ただし血清は体質によってはうまく作用しない場合もあります。また日本の一般的な医療機関では「マムシ血清」か「ハブ血清」しかありません。外国の毒ヘビなどに咬まれたときは、まず血清は手に入らないでしょうから、そういう意味でも毒ヘビの個人での飼育は厳に慎むべきでしょう。
 

最後に

ところで毒ヘビに咬まれても「血清を打てば治るんでしょ?」などとタカをくくっ
て「飼育しちゃえ」などと考えているあなた!甘いです。
私の友人が仕事中に孵化直後くらいの小さな小さなサキシマハブに咬まれた時の話ですが、その痛みは
指の先から肩までをカナヅチで思いっきり叩かれ続けているような、今までも、そしてこれからも経験できないような激痛
だそうです。
さらに出血毒の場合は筋肉の壊死が起こるため後遺症が残り、関節が曲げられなくなったり、腎臓や循環器系に障害が起こりひどいときには死に至る場合もあります。

確かに毒ヘビというのは飼育欲をそそられます。特にクサリヘビの仲間の凶悪そうな表情は、いかにもヘビを飼育している、という緊張感を持たせてくれそうです。
しかし自分はもちろん、周りの人たちにも迷惑をかけることになるのは火を見るより明らかです。脱走されてしまって、無関係の人が咬まれてしまってからでは遅いのです。すべての爬虫類飼育者のためにも、人の迷惑になるような飼育はやめましょう。

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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