「ネコと鳥インフルエンザ」
 
鳥インフルエンザの発症が日本で確認されてから、ほんの一部の人たちの間でですが、ペットとして飼ってた鶏や烏骨鶏を捨ててしまったり、殺してしまったり、と悲しい過剰反応が起きているようです。

ヒトが鳥インフルエンザに罹ると重篤になり、東南アジアでは死亡例も出ていますが、ヒトがこのウイルスで発病するには、発病している鳥とのよほどの濃厚接触がなければ発病は起こらないといわれています。流言飛語に惑わされて、安易にペットを疑うのではなく、その「ペットの健康をまず第一に考えて」の行動をお願いしたいと思います。

2月14日、タイの動物園でネコ科の希少動物であるウンピョウが鳥インフルエンザで死亡した、というニュースが入りました。
続いて、民家で飼われていた15匹のネコのうち数匹に、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)による死亡が確認されました。 今回の『ネコと鳥インフルエンザ』の記事では、ウイルスとはどんなものか?どうすれば感染の危険性を減らすことができるのか?もし、万が一疑わしい症状が出たらどう対処するのが一番良いか?などを書いていきます。
ネコやその他の動物たちがこれ以上の無用な被害に遭わないように、多くの方々が正しく理解していただけることを願います。

注)WHOは「ネコが鳥インフルエンザに感染しても、人間への影響はない」と発表しています。
WHOサイト(英文:2002/02/20の記事)

 

■ウイルスとは?
多くの方は、ウイルスや細菌は感染症を引き起こす元になるもの、ウイルスは細菌よりも小さい、といったことをご存じだと思います。

細菌は、あらゆるものの中(細菌の餌となるものや水分、温度などの条件さえ揃えば)で増殖しますが、ウイルスは生物の細胞の中でしか増えません。
もし細胞から離れると、ウイルスは増殖できなくなります。しかし、凍らせても、乾燥状態になっても、熱湯の中に入れても死なないウイルスもあります。
ただし、ウイルスの多くは太陽光(紫外線)や熱、ホルマリン、塩素系漂白剤、石けんやアルコールで感染力を失います。

ウイルスは、遺伝子情報をもった核酸(DNA-デオキシリボ核酸あるいはRNA-リボ核酸)と、それを取り囲む蛋白やそのほかの成分という単なる分子だけで構成されています。
ウイルスは他の生物に寄生して、その生物の細胞を利用するという、誠に効率の良い増殖方法を取ります。
 
続いて「ウイルスの侵入経路」と「鳥インフルエンザ」について→
 

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■ウイルスの侵入経路
 
ウイルスが感染を引き起こすためには、体内に入り込む必要があります。
クシャミ(唾、たん、鼻水ほか)や涙、汗、排出物(便や尿)、血その他から排出されたウイルスは、口、鼻、目、耳や尿道、肛門などや、皮膚の汗腺などの穴、その他極小の傷口から侵入します。

体内に入り込んだウイルスは、細胞と結合して細胞内へ侵入してゆき自分の遺伝子のコピーを大量に作り、感染を広げていきます。

しかし全てのウイルスが、全ての生物に同じように侵入できるわけではありません。
特殊なレセプター(受容器)の構造の相性が合わなければ、細胞に結合することができないからです。
そのため、ヒトに感染するが、ネコには感染しない(その反対もある)という一つの生物(種)だけに影響を与えるウイルスが一般的です。
ただし、元々の細胞の表面にある蛋白質をレセプターとして利用できるかどうかなので、その蛋白をレセプターとして利用できたウイルスは別の種でも侵入・増殖が可能になります。

このように基本的にウイルスが侵入できる種は限定されていますが、種の中にはどちらのウイルスにも反応してしまうものがあります。

インフルエンザウイルスのレセプターは大きくα2-3とα2-6の2種類に分けることができます。
ヒトのレセプターはα2-6です。
鳥インフルエンザウイルスのレセプターはα2-3なので、鳥インフルエンザはヒトには感染しにくい、と思われていました。

ヒト以外の動物は通常α2-3ですが、ブタだけはα2-3とα2-6の両方を持っています。このようにブタ(その他にはアザラシ、鯨、ミンク、フェレットなど)は鳥のインフルエンザウイルスにも、ヒトのインフルエンザウイルスにも感染します。ブタが、両方のインフルエンザウイルスに感染するとその細胞の中でウイルスの遺伝子が混ざり合い、今まで存在しなかった別のタイプのインフルエンザウイルスが発生する可能性があります。今世界中が恐れているのは、このような新しいインフルエンザウイルスの発生です。どの生物もこのインフルエンザウイルスに対する抗体を持っていないので、もし発生したら多くの犠牲者が出ると予想されています。

現在世界中で鳥インフルエンザに対して防疫体制が強化されているのは、このような新しいウイルスの発生を抑えるためのものです。

 
■鳥インフルエンザ(H5N1)
 

・乾燥していない糞便を4℃で保存すれば40日以上生存
・気温が25℃以上で乾燥した糞便中では1日で死滅
・75℃、1分以上の加熱で死滅
・鳥の呼吸器や腸管で増殖
・ウイルスは唾液、分泌物、糞尿などの排泄物から排出
・十分な加熱(中心部まで)を行った鶏肉であれば食べても問題なし
・卵は70度以上、1分以上の加熱をすれば安全
・消毒-次亜塩素酸ナトリウム液、アルカリ液、ホルムアルデヒド液、クレゾール液などの消毒薬、逆性石けん、塩素系漂白剤(塩素系漂白剤を使用する場合には、餌や糞便のカスなどが残っていると効果が薄れるので、できるだけ取り除いてから使用するのが望ましい。また、ネコは塩素系漂白剤で中毒を起こしやすいので、部屋の換気等充分な注意が必要)
・ウイルスに汚染されているものを触るときは、マスク、ゴーグル、手袋、体表を覆える服、長靴などを着用して、体内に直接取り込まないよう防御
・死んだり弱った鳥を見つけたときは素手で触らず、すぐに保健所、警察、獣医師に連絡
・屋外で鳥を飼育している場合は、防御ネットなどで野鳥が近づけないように工夫
・犬やネコが鳥の糞便などで汚染された水を飲まないように注意
・犬やネコが弱っている鳥を食べないように厳重注意

本来鳥インフルエンザウイルスは、人間やネコのレセプターとは合わないはずですが、今回人やネコが発病したということは、強烈に活動中のウイルスを大量に体内に取り込んだ可能性があります。すなわち、人の場合ですと、ウイルスに発病中の鶏の糞などの排泄物を大量に吸い込んだ、内臓などを素手で触ってそれが体内に入った、ネコの場合ですと、ウイルスで弱っていた鶏の内臓を食べた…のかもしれません。

もし、ウイルスが確認されている地域にお住まいでも、通常であればそのような鶏と接触することはないでしょうから、一般人が感染する可能性もきわめて低いということです。

 
「予防対策」そして「もしもの時…は」→
 
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■予防対策
 

ズーノーシス(zoonosis-人畜共通伝染病)や動物由来感染症という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、どちらかというと、これを「動物から人間に感染するもの」ととらえられている方が多いのではないでしょうか?
しかし、完全室内飼いをされているネコの場合は、反対に「人間がネコにうつしてしまう」可能性の方が高いのです。

ウイルスは、手から体内に取り込まれることが多いので、頻繁な手荒い(流水+石けん)を一番に心がけましょう。
その他、衣服や靴などでも運ばれるので、外出から帰ったらすぐに着替える(洋服はネコの手の届かないところに)、靴は下駄箱に片づける前に消毒をすると効果的でしょう。(スプレー容器に薄めた塩素系漂白剤を入れておき、靴の底をスプレーして拭き取る、など)
玄関も薄めた塩素系漂白剤や逆性石けんで消毒しましょう。

現在鳥インフルエンザウイルスが確認されている地域にお住まいの方で、もしネコを外出自由にさせているのでしたら、せめて、ウイルスが下火になるまで、お散歩を禁じてください。
今回のタイでの発病ネコは、通常であれば感染しないはずのウイルスに感染したのですから、よほど大量の生きたままのウイルスを体内の取り入れるような接触をした(例えばウイルスで死にかけていた鶏の内臓をそのまま食べたとか)であろう、と想像できます。
あなたのネコがそんな鶏と出会う確率が少ないとはいえ、それでも実際に発病してしまったネコがいるのですから、安全とはいえません。

今まで自由気ままに外に出ることができたネコを室内に閉じこめるのはかわいそうだと思われるかもしれませんが、あなたのネコを守るためです。

 
■万一病気の兆候が見られたら
ネコにしろ、飼い主さんにしろ、何らかの体調変化が見られた場合は、至急診察を受けてください。
もし、感染が疑われる鶏と接触した場合は、2週間は体調変化に気を付けましょう。
現在接種できるヒト用のインフルエンザワクチンは、鳥インフルエンザウイルスには効果がありませんが、先に書いたように新しい強力なウイルスの発現を抑えるためにも、もし感染が疑わしい鶏と接触する場合は事前に接種が進められます。
また、現在A型インフルエンザの治療に用いられる抗インフルエンザウイルス薬(リン酸オセルタミビル)は、鳥インフルエンザにも効果があるといわれています。(接触して48時間以内に投薬)
 

参考図書:石田卓夫著 「ネコのエイズ」集英社刊

参考リンク:
鳥インフルエンザに関する情報 - 厚生労働省
高病原性鳥インフルエンザQ&A(東京都版)
鳥インフルエンザはどこが問題か
Kyodo News02/14
高病原性インフルエンザ(動物衛生研究所)
動物のインフルエンザ
ProMED情報(詳細)[1]WHO更新情報第28報:ネコ症例、疑い患者。
記事番号 20040221-0060
記事番号 20040222-0070
記事番号 20040225-0010
 

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