飼い主の手から伝わる“愛情”こそが元気と信頼の源
タッチやマッサージは、犬の健康を維持・促進するのに役立つだけでなく、犬との信頼関係を築くにも有効な手段なのだ。

テリントンタッチとケーナイン・マッサージとの融合

山田りこさんと、愛犬のマーロンちゃん
ドッグウィスパラー山田りこさんと、愛犬のマーロンちゃん(ボーダー・コリー)。
前々回の記事でご紹介したドッグウィスパラー山田りこさんは、日本人で初めてテリントン・タッチ(=T-タッチ)におけるプラクティショナー(施術者)の資格を得た人として知られています。同時に、ケーナイン・マッサージの資格保有者でもあります。

山田さんは、その2つのよさに、日本古来の考え方や手法も取り入れたオリジナルの『Praise Touch(プレイズタッチ)』というものを考案されました。

それは、“健康維持・促進のみならず、互いの信頼関係を築き、犬の学習能力を上げることもできるタッチの大切さをもっと多くの人に知って欲しい、もっと気軽に愛犬との生活に取り入れて欲しい”という想いから生まれたもの。

そう聞くと知りたくなりませんか? 『プレイズタッチ』について。合わせて、実際の施術の仕方についても教えて頂きました。


=Index=
・タッチとマッサージ
・『プレイズタッチ』が生まれたきっかけと、そこに込める想い
・全身のストローク~首周りのサークルタッチ
・耳のストローク~エフルラージュ
・お尻のサークルタッチ~全身のストローク

タッチとマッサージ

そもそも、「タッチ」と「マッサージ」の違いはどこにあるのでしょうか?

「一言で言いますと、ケーナイン・マッサージは解剖学的に捉えられるもので、筋肉や体に働きかけるのに対し、T-タッチは感情や心といった精神面、そして身体のバランスを重視したホリスティックな考えにより全体のバランスに作用するもの、と考えて頂ければいいでしょう。確かにマッサージは老化予防の意味でも体のメンテナンスをするには大変有効ですが、周りを見渡してみますと体と感情のバランスがうまくとれていない子が多い。そう感じたことがきっかけで、もっと精神面にも働きかけるものが必要だと思い、T-タッチの勉強を始めたんです」(山田さん)

そのT-タッチには、“パイソンのT-タッチ”“ノアのマーチ”などに代表される独特のネーミングがなされた約30種の技法が存在しますが、手の平や指の腹でごく軽く皮膚を動かすことにより、非日常的なその動きが神経細胞を伝わって脳に届き、ある変化を起こさせるとされます。

それは、気持ちの変化。ある実験では人と馬において、T-タッチで描く皮膚への円運動がそれぞれ異なる4つの脳波を刺激することがわかったそうです。そのパターンというのは、まさに脳が最も望ましく働く状態と一致していました。T-タッチが“体に気づきを与える”と言われるゆえんでしょう。

一見、体とは関係ないようにも思える感情ですが、実は細胞に組み込まれて神経伝達物質を通じ、脳に記憶されると主張する学者もいます。ならば、体の根源からそれを静めたり、高めてあげることで、本来のあるべき精神と体の状態へ近づけられるのではないか。T-タッチはそういったホリスティックな考え方に基づいています。

次のページでは、『プレイズタッチ』が生まれたきっかけと、手で触れてあげることの大切さ。

『プレイズタッチ』が生まれたきっかけ

タッチやマッサージのモデル犬も務めるマーロンちゃん
この生き生きとした表情も、山田さんのタッチから生まれるのかもしれない。
タッチを行うと、犬の気持ちも落ち着き、行動にも変化が表れたり、自分に自信がもてるようになり、その結果、学習能力も上がるとよく言われます。それだけではなく、自然治癒力も高まって治療の補助としても大変有効であると。要するに、心と体のバランスがとれた状態になるということです。そのよさは理解できても、実際に生活に取り入れるとなるとどうでしょうか。

「T-タッチについてよく勉強なさっている飼い主さんも多いのですが、皆さんどうも難しく考え過ぎてしまう傾向があるようですね。その一方では、自分の子をとても愛しているのに、その気持ちを伝えきれていない、触れ合いの足りなさを感じる場面に出会うこともあります」(山田さん)

こうしたことが、やがて『プレイズタッチ』を生みました。

山田さんは仕事の一つとして「日本動物高度医療センター」でホリスティックケア、理学療法を担当し、日々重いケースの子達が多く来院する中で、自分の子を充分過ぎるほどに大切に思いながら、厳しい治療生活に行き詰まっている飼い主さんの姿を目にすることで、『プレイズタッチ』の有効性とその“心”をより多くの人に伝えたいと思うようになった、といいます。

日本古来のよさ“手当て”をもう一度思い出して

「そういったケースでは犬はもちろん、飼い主さん自身にも相当なストレスがあります。飼い主さんが不安を感じれば、犬も不安を感じる。そういう時にこそ、もっと触れ合うことが必要なのではないでしょうか。病気やケガは確かに辛いです。でも、例えどんな状況にあろうと、今目の前にいるその子の存在こそが素晴らしい。手で触れる、タッチを施すことで犬も落ち着き、飼い主さんも落ち着いて、しいてはもっと心を強く持てるようにもなるでしょう。病気があってもなくても、犬と向き合い、互いの存在を意識しながら、触れ合うその瞬間をシェアして頂きたい。それが、私がプレイズタッチに込めた願いです」(山田さん)

日本語には“手当て”という言葉があります。例えばお腹が痛かった時、手を当てると少し治まったように感じることはありませんか? また、人に触れられることで、なんとなくホッとした気分になったこともあるでしょう。それが大好きな人の手だったら……。犬も同じはずです。

そんな素敵な言葉がありながら、実際に触れ合うのはちょっと苦手な私達日本人。山田さんはおっしゃいます。

「特別なことと考えなくていいんです。おじいちゃんおばあちゃんからお子さんまで、毎日気軽に行えるタッチとしてプレイズタッチを考案しました。“大好き!”“おはよう!”“おやすみ”という、それぞれたった3分程度でできるルーティンです。これらを習慣的に行うことで、段々と犬の気持ちもわかるようになっていき、信頼関係も深まることで、しつけにも役立つことでしょう。また、シニア犬にとってはそれ以上のものが得られます。低下した体の機能に刺激を与えて、それを向上させる。若い犬でも病気予防といった効果が期待できます。犬から癒しをもらうといったスタンスではなく、是非その“時”を共有してみてください。そして、そこからより豊かな犬との生活が生まれたなら、それほど嬉しいことはありません」

さぁ、お待たせしました。次のページでは、『プレイズタッチ』の実際のやり方を山田さんに伝授して頂きます! 今回は、「大好き!」のルーティンです。

「大好き!」のルーティン / 1:全身のストローク

頭から背筋を取って腰へ
まずは手を柔軟にして、手の平全体で頭から尻尾の先までを撫でる。手を動かすスピードは、ゆっくりでもなく、早くもなく、中庸なスピードで。この全身のストロークは、“これからタッチを始めるよ”という合図にもなるもの。

腰から尻尾へ
手の平全体を使って輪郭にそって軽く撫でていく。これから行う全てのタッチにわたって、ポイントは圧をかけ過ぎないということ。手の平・指の重さ以上のものはかけない。


尻尾の先までタッチ
尻尾の先までスッと撫でていく。犬の体温を感じたり、腫れているところはないか、どこか痛がるとこはないか……など、毎日手を通して感じることにより、飼い主自身敏感に犬の変調に気づくようになれる。まさしく、“手で見る”という言葉がぴったり。

肩から前脚へ
次は、肩から前肢へ、同じように手の平で撫でる。この時、もし犬が寝ていたら、片側だけでもOK。




足先までタッチ
足の先までスッとタッチ。最初に行うこの全身のストロークは、犬の輪郭を撫でるといったようなイメージで。




腰から後肢へ
前肢の後は、後肢。腰から後肢を撫でていく。犬はこうしてストローク(軽く撫でること)されることにより、リラックスして気持ちも穏やかになる。



後肢の先までタッチ
後肢の先までを軽く撫でる。こうして体をストロークすることにより、身体意識が向上し、肉体と感情・精神面とのバランスもとれていくようになる。結果的にはそれが犬の自信に結びつくということ。全身のストロークはとても大切で、身体機能が低下しがちなシニア犬には特にお勧めだそうだ。

2:首周りのスクィーズ(小型犬4~6回/中・大型犬6~8回)

大きく皮膚を持ち上げる
親指と4本の指で首周りの皮膚を大きくつかみ、揉み上げる感じで持ち上げて「1、2」と数えた後、そのまま手も一緒に下ろすつもりでふわっと元に戻す。静かな、ゆっくりとした一定のリズムで行う。皮膚をつまんでしまうと痛みを感じるので注意。

ふわっと手も下ろす感じで戻す
犬は意外に首周りが緊張しているもの。筋肉の緊張をほぐすことでリラックス感を与えることができるのと同時に、このスクィーズを行うことで筋肉組織に酸素を与え、血の巡りをよくして体に不要なものをデトックスしていく。つまり、体の循環をよくすることができるのだ。

3:首周りのサークルタッチ(小型犬4~6回/中・大型犬6~8回)

時計回りに8回
2のスクィーズの後、同じ場所に手を置いたまま、4本の指で軽く時計回りの小さな円を8回描く。これを首周り全体に施す。指の腹全体で円を描くようにし、親指は軽く添えているだけ。

次のページでは、耳のタッチに移ります。

4:耳のストローク(大きさにより、耳全体を網羅する回数)

親指で頭の中心から耳の先端へ向かってストローク
3のサークルタッチの後、そのまま両手の4本の指は耳の下に、親指は犬の頭の中心に置いて、耳の先端まで、親指を使い、耳全体をストロークしていく。この場合、両耳でも片耳でもどちらでもOK。


先端でキュッと少し圧をかける
耳の先端にきたら、親指でキュッと少し圧をかける。立ち耳の子の場合は下から上へ。大きな耳の子は、片手で耳を地面と水平に持ち、もう片方の手の指何本かでストロークを行う。


5:首から尻尾の付け根までのエフルラージュ

背筋に沿って手を交互に滑らせていく
手の平全体を使い、交互に交差、回転させながら、首から尻尾の付け根まで背筋に沿って手を滑らせていく。




片時も手が犬の体から離れることのないように
手の平は片時も犬の体から離れることのないようにするのがポイント。一定の力加減で流れるようなリズムで行い、決して早いスピードにならないように。



片手が少し移動したら、もう片方はすぐに動き出すように
エフルラージュとは、リンパ節に流し込むといったマッサージのテクニック。愛犬のリンパ節に気持ちを流し込むようなイメージで。




両手が常に犬の体の上で回転している感じ
このエフルラージュは、神経の束がある背筋周辺に施すことによって、副交感神経を優位に引き出し、自律神経のバランスをとることに作用する。



流れるようなリズムで行うこと
自律神経である交感神経と副交感神経。例えば、ストレスを受けた時に優位に働くのは前者で、それを沈める役目を果たすのが後者。両者が拮抗的に働くには、やはりそのバランスも大事。


早すぎない中庸のスピード、そして手の平全体で
首から尻尾の付け根までエフルラージュを行うことで、体液の流れがよくなる。また、4の耳のタッチから、これから行う後半身のタッチへのトランジッションにもなるもの。

さぁ、次のページで、締めくくりのタッチに近づきます。

6:尻尾の付け根とお尻のサークルタッチ(時計回り3回/反時計回り12回)

時計回りに3回
利き手を犬の尻尾の付け根に置き、もう片方の手は軽く犬の胸に添える。利き手の4本の指全体で、軽く時計回りに3回、小さな円を描く。




反時計回りに12回
その後、今度は反時計回りに12回、小さな円を描く。





7:体全体にジグザグタッチ(体片側につき往復2回)

後肢の先から腰に向かって
自分から見た時に「W」の字を描くようなつもりで、まず犬の後肢の先から少し斜めに腰に向かって、手の平全体を使い、掻き上げていく。この時、指は少し開き気味で、被毛を少し掻き分けるような感じで手をスライドさせていく。


腰からお腹へ
腰のあたりに来るに従い、指は少し閉じている感じに。





お腹から肩へ
次に、お腹の方へ向かって少し斜めに、被毛の層に沿うように手を滑らせていく。お腹に近づくにつれて指は少しずつ開くようにし、手が犬のお腹をカバーするような感じで。



 肩から前肢へ
続いて、同じ要領で、肩へ向かって手を掻き上げていく。常に力は入れ過ぎず、軽い手加減で行うこと。お腹をリフトアップすることで、消化器系の働きを促す作用がある。最後は、肩から前肢の先にかけて手を滑らせる。


前肢の先端までタッチ
今後は逆方向に向かって同じように手を滑らせていき、これを2往復行う。反対側にも同様のタッチをすることがベストだが、犬が寝ている場合には無理に行う必要はない。このタッチにより、循環機能を刺激し、体全体に意識を与えてあげることができる。

8:全身のストローク

一番最初の「全身のストローク」をもう一度
大好き!」のルーティンの締めくくりとして、全身のストロークを最後にもう一度。“これでタッチが終了”という合図にもなる。気持ちとしては、ここまで行ったタッチを全て統合するようなつもりで。



この「大好き!」のルーティンで最も大事なことは、愛犬に対する“大好きだよ”という気持ちを込めながら行うということ。例え僅かな時間であっても、こうして触れ合うことで互いの気持ちも通じ、意識に変化も出てくるはず。

どうですか? これなら毎日簡単にできそうですよね。愛犬の健康のために、そしてお互いの信頼関係を築くために、皆さんも是非生活に取り入れてみてくださいね!

Part2・3の記事では、別のルーティンをご紹介します!

『プレイズタッチ』のルーティン その2(おはよう)

『プレイズタッチ』のルーティン その3(おやすみ)


関連ホームページ:
PRAISE TOUCH(『プレイズタッチ・パートナーズ』公式ウェッブサイト)
RICO’S CANINE MASSAGE SCHOOL(山田さんが主宰するスクールのサイト)
RICOSホームページ(山田さんの活動に共感された企業がRICOSブランドを展開)

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