愛犬を車に乗せ、ドライブや旅行、キャンプ……とお出かけを楽しんでいる人も多いことでしょう。その時、どんなことに気をつけていますか?
犬との暮らしには車が必需品?

愛犬を乗せる以上は、安全運転を心がけたい:(c)LINDA LINDA_Pmoon
愛犬との旅行やドライブの他、日常の散歩や買い物、またドッグサロンや動物病院へ通う際にも車は重宝するものです。かく言うガイドも、愛犬のために免許を取った一人です。
車に乗せて移動ができるということは何かと便利ですが、いろいろ気配りしなければいけないこともあるはずです。日頃、飼い主の皆さんはどんなところに注意しているのでしょうか。数組の飼い主さんに簡単なアンケートをお願いしました。
そのお話の中から、犬を車に乗せる時の注意点について、今一度振り返ってみましょう。
犬を乗せる席は助手席かリアシートが圧倒的

犬を乗せる席は、助手席とリアシートがほぼ同等くらいという結果に。
その前に、以前、All About犬サイトで、愛犬を車に乗せる際の場所や、その方法について飼い主さんにアンケートをとったことがありましたので、その結果を再度見てみたいと思います。
1つ目の質問は、「車に愛犬を乗せる時、愛犬専用席はどこですか?」というもの。犬のサイズ、頭数、年齢、健康状態、飼い主の家族構成、車種、使用目的……などそのご家庭の状況によって、車の乗せ方も様々だとは思いますが、助手席とリアシート(後部座席)がほぼ同じくらいで、僅かに助手席の方が多いという結果となりました。これは、一般的に小型犬が多く飼われているということも関係あるのでしょうか。
ラゲッジスペース使用は思ったより少なく、各種競技会などに行くと、このスペースに犬を乗せている車が結構目立ちますが、一般的な家庭犬の場合は、より運転者や家族に近いところに乗せていると捉えていいかもしれませんね。
固定派? フリー派?

なんらかの方法で犬を固定しているケースと、膝の上を含めてフリーにさせているケースとほぼ半々。
2つ目の質問は、「愛犬を車に乗せる時、どのように乗せていますか?」。
「犬用シートベルト、またはそれと同様のものを使って犬を固定する」という人も意外に多く、クレート類使用と合わせて、車内での安全を重視した「固定する」派がほんの僅かながらリードしています。
シートベルトと言えば、人間の場合、道路交通法の改正により、リアシートでのシートベルトも義務づけられていますが、さて、犬の場合はどうしましょう? 私達にとっては大切な家族でありながら、法律的にはその範疇に入っていませんので、彼らの命を守ってあげるには飼い主自身が考え、判断しなければなりません。
これをきっかけに、犬を車に乗せる際の安全対策、もうちょっと考えてみませんか?
お聞きした質問は以下のとおり
ここからは、一般の飼い主さんに普段、愛犬をどのように車に乗せているかお聞きしてみましたので、その回答をご紹介します。お聞きした項目は、以下のとおりです。- 乗っている車の種類
- 愛犬を乗せて、主にどんなところに出かけますか?
- 愛犬の専用席はどこですか?
- 愛犬をどのように車に乗せていますか?
- 愛犬を車に乗せる際に、どのようなことに気配りをしていますか?
- これまで愛犬を乗せて車で移動中に、ヒヤッとしたようなことがありましたか?
- ドライブをする際のこれはお勧めだと思うグッズ類はありますか?
- 愛犬を車に乗せるトレーニングをしましたか?
みっぽこさん&天天君の場合

段階を追って慣らすことで、車が大好きに:(c)MT
- ステーションワゴンタイプ(日産ウィングロード)。
- 自宅や親類宅などの往復に。アジリティーやしつけ教室、近所の公園、獣医さんなどへ行く時に。車に乗るのは日常です。
- リアシート。
- 高速道路を走る時、20分以上のドライブの場合は、リアシートにクレートをシートベルトで固定して乗せています。20分未満のドライブの場合は何もせずに、リアシートで。
- 長距離の場合はこまめな休憩、車に乗せる前の食事時間に特に気をつけています。リアシートにそのまま乗せる場合は、とにかく急ブレーキをかけないように。それから、万一天天が窓のボタンを押しても窓が開かないようにチャイルドロックをかけています。
- 以前、助手席に固定しないで乗せていた時に、急ブレーキで下に落ちてしまったことがありました。ケガはありませんでしたが、それ以来、前の席には乗せていません。
- 犬にしろ、車内にしろ、意外と汚れることがありますから、濡らしたタオルを何枚かビニール袋に入れて持って行くと、何かと便利です。
- 最初は車を見せるだけでトリーツ。次は乗るだけでトリーツを。乗ってエンジンをかけるだけ→1分走る→5分→20分→1時間→と順々にトリーツを与えながら慣らしていきました。元々酔わないタイプだったのかもしれませんが、おかげで車が大好きになりました。
Aさん&レノちゃんの場合

レノちゃんと出かけるトレッキングやキャンプは何よりの楽しみ、とAさん:(c)LR
- ワンボックス。
- 毎日の散歩、公園、キャンプやトレッキングなどに。
- リアシートか、ラゲッジスペースに。
- リアシートで自由にさせておくか、ラゲッジスペースのケージに入れます。その時の状況によって違いますね。
- ブレーキをかけても大丈夫なように、体勢や、ブレーキのかけ方などに気をつけます。おかげでその分、より運転が上手になったと思うんですけど(笑)。
- 急ブレーキをかけた時に、座席から落ちたことがありました。
- 特になし。
- これといったトレーニングは意識したことがありませんでした。元々車に強いのか、自然に慣れていたという感じです。
菊雪ママさん&菊乃ちゃん、雪乃ちゃんの場合

北から南まで、アジリティー競技を追って車を走らせるからこそ、より細心の気配りをしているそう:(c)KM
- TOYOTA エスティマ。
- ドッグスポーツ(アジリティー)競技会場。
- 前から2列目。
- それぞれのサイズに合わせたドライブボックスに入れて。
- 車酔いしないように、長距離の移動の前は食事を控える。急ブレーキをかけた時や何かあった時に、2列目シートの足元に落ちないよう、シートを運転席と助手席の背もたれまで前に出す。窓は鼻先が出るまでしか開けない、などです。
- 特になし。
- 長距離の移動の際、車で待たせる時に、“わんドアロック”を使用して、後ろのハッチを少し開けたままドアをロックし、風が通るようにしています。
- 子犬の頃から、最初は10分、30分、1時間……というふうに、少しずつ時間を長くしていって車に慣らせました。
尾崎さん&シンバ君の場合

様子をいつでも確認できるように、乗せる場所は目の届くところに:(c)OD
- ボルボ940エステート。
- オフ会や公園での散歩、帰省の時など。
- 基本的には助手席。高速に乗る時などは、リアシートのことも。
- 助手席の場合は、犬用のシートベルトを使っています。リアシートに乗せる時にはクレートに入れて、それを固定しますが、いつでも様子が確認できるように、クレートは運転席から手を伸ばしたらすぐに触れるくらいの場所に置きます。
- 助手席に乗せている時は、運転に集中できるよう、そこからリアシートに移動できないようにしています。
- 以前、シートベルトを使っていなかった頃のこと、音楽をかけながら高速を走っていて、ついリズムに合わせて膝を叩いてしまったところ、“コイ”と勘違いして膝に飛び乗ってこようとしたのでびっくりしたことがありました。
- 車に常備しているのは、クレートの他、カラビナ(ドアを開けたままでも車内のフックにかけてリードを素早く繋げるように)、タオル大小数枚、ビニール袋、ペットシーツ、リード数本、消臭スプレー、何かあった時のために窓を割るトンカチ様のものなどです。
- 特にはしていません。
皆さん、共通しているのは、急ブレーキをかけるような状況をなるべく避けるなど運転の仕方に気をつけているということと、愛犬を固定できるものを何かしら使用している、ということでしょうか。
では、次に、犬を車に乗せる時の注意点について、おさらいしながらまとめてみましょう。
平衡感覚は“学習”する器官
元来、犬は平衡感覚にも優れているので、その分、車に酔いやすいことはよく知られています。人間同様、犬の場合も内耳の中に平衡感覚を司る受容器がありますが、これは言ってみれば“学習”できる器官であり、トレーニングや経験を重ねることで強化することが可能なのです。ですから、トレーニングいかんでは充分に車に慣れることができるということですね。生まれて間もない頃はまだ足取りもおぼつかない子犬が、その平衡感覚を発達しきるのは、生後10週齢を過ぎてからとされますが(「心理と行動から見た犬学入門」大野淳一著より)、ちょうどそのくらいの月齢で子犬を迎える人もいるでしょうし、また社会化にとって大事な時期とも重なります。
犬を車に乗せたいのであるならば、是非ともトラウマを作らないように、少しずつ段階をふんで、楽しい経験をさせながら、トレーニングしてみてはいかがでしょうか。
とは言っても、人間でもそうであるように、酔いやすいタイプ、酔いにくいタイプと体質もいろいろですから、トレーニングを重ねても酔ってしまうコには、あまり無理をさせないようにしたほうがいいかもしれませんが。
車に慣らすトレーニングをする

少しずつ車に慣らせてあげることで車酔いも克服しやすくなる。そうなれば犬との行動範囲も広がる:(c)OD
では、実際にどうやってトレーニングしたらいいのでしょう?
前出の飼い主さんのお話のように、何もトレーニングらしい意識を持たなくてもすぐに慣れてしまうコもいますが、概ね、次のような手順をふむといいでしょう。
- まずは、車の存在に慣らす。短い時間で構わないので、車の近くで遊んでみたり、好物をあげたりする。
- 次に、車のドアは開けたまま、中で一緒に遊んだり、好物をあげたりして短い時間を過ごす。この時、エンジンはまだかけない。もし犬が嫌がる場合は、無理矢理乗せたりしないように注意を。ある程度大きい犬の場合は、オモチャやおやつで気を引くなどして、犬の方から進んで車に乗るような状況を作ってあげるのもよい。
- 次には、ドアを閉めて、2と同様に。
- 大丈夫そうなら、エンジンをかけてみる。最初のうちはエンジンをかける時間も短くする。
- 慣れてきたなら、短い距離を走ってみる。可能な限り、着いた先で一緒に遊んであげたり、おやつをあげるなど、犬にとって楽しいことがあるようにする。ワクチンがまだ不安定な時期である場合には、着いた先で外に出さず、車内でもOK。
- 走る距離を徐々に延ばしていく。着いた先がいきなり病院だったり、犬にとってあまり楽しくない場所であると、車に乗ること自体にマイナスのイメージを与えかねないので、着いた先には必ず楽しいことが待っていると思えるような場所に連れて行ってあげるようにして慣らしていく。
少しでも嫌がる素振りが見えたら、一つ前の段階に戻ってトレーニングし直すようにしましょう。また、最初のうちは走っている途中で吐いてしまうこともあるかもしれませんが、それを叱ってしまうと車に乗ることにマイナスイメージがついてしまいますのでご注意ください。
また、最初のうちはだっこでも構いませんが、将来的にクレート類に入れて乗せたいと思うのであれば、少しずつそれにも慣らしていきましょう。
何より安全と快適さを

時折見かける膝の上に愛犬を乗せての運転。安全性は大丈夫?:(c)DAJ/amanaimages
さて、最後に、犬を車に乗せる時には、以下のようなことには気配りしたいものです。
■特に酔いやすいコの場合、車に乗せる直前には食事を与えない(少なくとも2時間以上前には済ませておく)。
■犬用シートベルト(長時間のドライブには向かないかも……)、ハードタイプのクレート、ソフトケージ(ハードタイプに比べ強度は落ちるものの、メッシュ素材が使われているものでは中の様子も確認しやすく、通気性にも優れている。メーカーによってはシートベルトで固定できるものもある)などを使って、犬をなるべく固定できる状態で乗せる。
車に酔う場合、体が不安定なせいもあるので、ある程度固定することで酔い止め効果も期待できる他、こうしたグッズを使用することで、車のドアを開けた時の飛び出し予防にもなる。
ちなみに、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)の資料によれば、交通事故で車外に放り出されて亡くなった人のうち、シートベルト未着用が99%で、3分の1は18歳以下の子どもだとか(*1)。体を固定することの意味を、今一度真面目に考えたくなるようなデータとなっている。
■長距離の場合、2時間おきくらいには休憩を。最近は、高速のSAにドッグランのような犬用の設備が併設されているところもある。
■犬を車に残していく時、夏に限らず、車内の温度には注意を欠かさぬこと。国民生活センターのテストによると、炎天下では車内温度が60℃を越え、ダッシュボード部分は86.7℃を記録、炭酸飲料などは破裂したという結果が(*2)。
また、JAFが行ったテストでは、外気温が23℃の日でも車内温度は50℃近くに達したということ(*3)。ほんの僅かな時間で車内温度は上がってしまうので、くれぐれも甘く考えないように。暑さに弱い短吻種や長毛種、子犬、シニア犬、心臓病のある犬などは特に注意!
■車内の通気、換気、匂いにも気配りを。新鮮な空気を取り入れることで酔いにくくなる。また、匂いが酔いを誘発することもあるので、タバコのような犬が嫌う匂いの対策も。
香りと言えばアロマ。特にペパーミントは車酔いに有効とされ、空気を清々しく保つ作用がある。香りのカテゴリーではないながら、フラワー・レメディの場合は、特にコキュラスにその効果が高いとされるが、いずれにしても使用する際には下調べをお忘れなく。
■走行中の窓からの飛び出し、転落にも注意。パワーウィンドの場合は挟み込み防止機能が全席に付いていない車もあるので、挟まれてケガをしないよう、また何かの拍子に犬が勝手に開けないようにロック機能を使うなどして気配りを。
参考動画:ゴボウも大根もばっさり切れるパワーウインドーの挟み込みに注意!【JAFユーザーテスト】
■もっとも大事なのは、運転に対する気配り。乱暴な運転は体の安定も欠き、酔いやすさを助長するばかりでなく、危険を呼ぶことにもなる。大切な愛しき愛犬、その命を守るためにも運転には細心の注意を払いたいもの。
参考までに、ハワイには「自動車を運転中は、運転の妨げとなる人や動物、物を運転者の膝の上に置く、または運転者の近くに置くことはできない」という法令があるそうで(*4)、アメリカのメイン州でも同様の内容に加えて、走行中の窓から犬が身を乗り出せるようにすることは禁止とする法案が提出されたというニュースが以前ありました(*5)。
いずれにしても、法律云々ではなく、それ以前に、愛犬にとって車が第二の家と言えるほど、安全で快適な空間であったらいいですね。安全運転で、皆さんもどうぞ愛犬とのお出かけ・ドライブをお楽しみください。
関連サイト:
アリターナ工房「わんドアロック」
参考資料:
(*1)シートベルトが命を守る/JAF(一般社団法人日本自動車連盟)
(*2)乗用車内の安全を検証する/独立行政法人国民生活センター
(*3)JAFユーザーテスト 車内温度(春)/JAF(一般社団法人日本自動車連盟)
(*4)§291C-124 Obstruction to driver's view or driving mechanism / Hawaii State Legislature
(*5)Bill would ban dogs from roaming about vehicles, hanging out window / Portland Press Herald
※アンケートは公開当初(2008年)に集計したもののため、現在の傾向とは異なる場合があります。