犬と暮らすためのキーワードって?

家族となった犬
古くから犬は人間の友達。だからこそ、もっと上手につきたいたい。
「犬は家族」、まるでスローガンのようなこの言葉がすっかり定着した感のある昨今。「犬種選び」「犬という生き物を知ること」「社会化」は犬と暮らす上での3つのキーワードと言えます。

愛情を持って犬と暮らす人達が増えた一方で、問題に悩む声もよく耳にします。なぜなのでしょう? もしかしたら、キーワードのどれかが足りていないのかもしれません。以下の3つの質問に答えてみて下さい。

■ 自分の性格や体力、年齢、経済面、生活状況、環境、家族などを考えた上で、あなたに合った犬を選んでいますか?
■ 犬の行動心理や犬種特性、体や健康のことなど多少なりとも理解できていますか?
■ あなたと暮らす子は、社会化ができていますか? または、これから取り組もうと思っていますか?

キーワード1:自分に合った犬を選ぶ

「こんなはずではなかった……」という言葉は、犬との生活が始まってから意外とよく聞きます。大きさや性格、運動量、手入れの仕方、ビジュアルなどの好み、そして生活スタイル・環境など、いろいろな面で出来る限り自分に合った犬を選ぶのがベストな形。せっかく犬と暮らしてもストレスばかりを感じるのであれば、犬にもいい環境とは言えません。

ありがちなのが、流行っている犬種を選んでしまうケース。そもそも生き物である犬にブームなどがあってはならないと思いますが、時代によって注目される犬種が存在することも事実です。大切なのは自分とこれから一緒に暮らす子の幸せ。ブームに流されず、犬選びをしましょう。

しかし、犬種選びと一口に言っても、「保護したから……」「事情があって……」と、選ぶ暇もなく出会うケースも多々あります。そんな時でも年齢や予想される成犬時の大きさ、ミックスであればバックグランドにあると思われる血筋など、いくつかヒントが見つけられるはず。ヒントを頼りに自分に合う犬かどうかを考えてみて下さい。

キーワード2:犬について知る

犬は人間同様とまで言わなくても、感情を持った生き物です。群れという社会構造を営む動物なので、社会性に富んでいて行動の裏側には微妙な心理が隠れていることも。近年、犬に関する行動学がやっと一般の人達にも受け入れられるようになってきました。しかし、長い間人間との歴史を歩んできた動物であるのに、いまだに理解されていないことも多いのです。

ボディランゲージや周りの状況から行動理由を読み取れたり、飼い主の接し方が大きく行動に影響するのも、犬という生き物。体の仕組みや健康・病気のことなどはもちろん、行動心理面も合わせて、犬とはどんな生き物なのかを少しでも知っておくことは、互いの生活をスムーズにさせるだけでなく、犬を育てるのにも大切なポイントです。

次ページでは、犬にとって大切な社会化についてご紹介します。

キーワード3:社会化時期の「いい経験」が、幸せな日々を築く

人間と同じく犬にとっても、犬としての社会行動パターンを身につける社会化の時期はとても大切。およそ歯が生え始める生後21日齢頃から生後12週齢頃までが、最も社会化に適した時期とされ、生後8週齢前後は特にその感受性が強いことから感受期と呼ばれています。遺伝的な要素に加えて、この間に経験したことが後々行動や気質に大きな影響を与えます。

しかし、この間だけが大事なわけではありません。お腹の中にいる頃から、母犬の気質や環境も影響します。生後12週齢を過ぎると、それまで強かった好奇心よりも警戒心・攻撃性のほうが勝ってきます。人間で言う反抗期のような様子が見られることがある、生後6ヶ月齢~9ヶ月齢頃までの間はさらに大事な時期でもあります。

この社会化の時期に、どれだけ「いい経験」ができるかが、あなたと愛犬の幸せな日々を築くとも言えるのです。

犬としてのつきあい方が身につき、飼い主も学べるパピークラス

犬としてのつきあい方をお勉強中
牧口先生が指導するパピークラスでの様子。(写真提供:獣医師 牧口先生)
「犬のことを知る」「社会化」といった面をフォローしてくれるのが、各地で開かれるようになったパピークラス(パピーパーティー)と呼ばれるもの。

単に子犬同士を遊ばせるのではなく、犬としてのつきあい方、社会化をふまえたしつけなど、飼い主もいろいろなことを学べるクラスなので、通ってみる価値はあると思います。専門家の指導の下に、犬の行動や心理についてのレクチャーが受けられたり、ほかの犬達と触れ合うことで子犬にも様々な経験をさせてあげられます。

最近では動物病院でパピークラスやパピーパーティーを主催するケースも増えてきました。しかし、社会化適期とされる時期が、狂犬病やジステンパーなどの伝染病を予防するワクチンの時期とちょうど重なるので、どちらを優先するか迷ったり、近所での開催がなかったりと、興味を持ちながらも参加したことのない人も多いのでは?

パピークラスなどに参加しなければ、うまく社会化ができないというわけでは決してありません。抱いて近所を歩く、無理のない範囲でいろんな音や物、状況などに慣らせてあげるという努力次第で社会化は充分可能なので、ご心配なく。

次ページでは、犬を取り巻く最近の傾向と、犬を飼う際の心構えなどについて、獣医師さんにお話を聞きます。

問題行動の裏には、飼い主の無知があり?

犬としてのつきあい方を身につけることができるパピークラス
犬の行動心理や社会化をふまえ、かつ健康管理にも留意した内容かどうか確認することが大事。(写真提供:獣医師 牧口先生)
ペットの行動治療を専門に行う、獣医師 牧口香絵先生は、パピークラスで指導をしている一人。犬の飼い方の心構えなど、お話をうかがいました。

ガイド:
「日頃ペットの行動に関する問題を扱っていますが、どんな相談内容が多いですか?」

牧口先生:
「よく相談されるのは、子犬であれば、1に甘咬み、2にトイレトレーニングの問題、3にいうことをきかない、ということです。成犬の場合は、攻撃性と無駄吠えの2つが最も多いですね。最近では特に、子犬の甘咬みに関する相談が増えてきています。甘咬みに関しては、破壊行動も含みます。」

ガイド:
「問題に直面すると、飼い主さんは直そうとあれこれ努力するけれど、どうもうまくいかないというパターンが多いようですね。」

牧口先生:
「例えば吠えの問題であれば、コインを入れた缶を吠えるたびに鳴らすなど、いろいろと努力をしている方もいます。しかし、タイミングがよくわかっていないように思えます。吠えると何らかの刺激を与える首輪など、器具に頼っているケースもよくありますが、やはり根本的な矯正に取り組むべきでしょう。対症法的なやり方で片づけるのではなく、あくまでもどうしてそんな行動に出るのか、犬の心理や行動を考えて対処をする必要があります。」

ガイド:
「いずれにしても、問題にどうにか対処しようとする飼い主さんは、それだけ真面目に犬との生活を考えているはずなのに、その反面で吠えや攻撃性などの困った問題が出てしまうのはなぜなのでしょう?」

牧口先生:
「1つには、飼い主さんが犬種特性や犬の行動パターンをよくわかっていないということがありますね。つきあい方を知らないまま飼ってしまうので、問題行動を作り上げてしまっているようなケースもあります。最近の傾向なのか、飼い主さん自身が神経質過ぎるケースも目立ちます。犬は飼い主の鑑です。飼い主さんが神経質なら犬も神経質になってしまいます。

また、社会化の時期をうまく過ごせていない犬も多くいます。きちんと社会化のされた子犬は問題行動を起こしにくいんですよ。つまり、問題行動はある程度、社会化によって予防できるということなんです」

問題行動のカギは「社会化」

社会化がうまくなされていない犬は、ストレスに対しても弱いそう。こういう話を聞くと、問題行動の予防にもなる社会化の時期がいかに意味を持つものなのか分かりますね。だからといって、やたらとかしこまって考える必要もありません。牧口先生のお話しにあったように、気負いが愛犬に影響を与えることもあります。ゆったりとした気持ちで、しっかりとこの時期を過ごさせてあげましょう。

パピークラスやパピーパーティーはそのお手伝いをしてくれます。牧口先生は現在、パスカル動物病院グリーンヒルアニマルクリニックにおいて、パピークラスの指導をされています。グループレッスンでは、犬種特異性や問題行動の話から始まり、褒める・叱る時のタイミング、各行動に対する対処法など実践的なものへとステップアップしていきます。子犬を迎えた時には、是非パピークラスなどで飼い主さんも一緒に勉強してみましょう。

犬と暮らすための3つのキーワードは、「犬種選び」「犬のことを知る」「社会化」。これらの答えがすべて○ならば、ハッピードッグライフに一歩近づいたと言えます。「いろいろ知ることで、自分の犬がより可愛く思えるようになった」とクラスの参加者がおっしゃったそうです。その気持ちこそが犬との生活の基本なのではないでしょうか。


取材協力:「ペット行動治療コンサルテーション PAW and TAIL」牧口香絵 獣医師
(略歴:麻布獣医大学卒業後、動物病院勤務を経てニューヨーク州コーネル獣医大学Animal Behavior Clinicにて犬猫の行動学及び行動治療学を学び、帰国後「ペット行動治療コンサルテーション PAW and TAIL」を主宰。行動治療はもちろん、子犬とその飼い主を対象としたしつけ教室の講師、講演や執筆活動など現在多方面で活躍中。ご自身も大の愛犬家として知られている)


■関連リンク
パスカル動物病院
グリーンヒルアニマルクリニック
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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。