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春限定の純白の世界へ! 雪の壁を見上げながら歩く、立山黒部アルペンルート「立山・雪の大谷」【富山】

北アルプス連峰を貫く山岳観光ルート、立山黒部アルペンルートでは、冬の眠りから覚めた時期だけ高さ20メートルにも及ぶ雪の壁を間近に見ながら歩くことができる「雪の大谷」が楽しめます。一面真っ白な世界と大自然の迫力を目の当たりにできる「雪の大谷」について、アクセスも含めてご紹介します。

村田 博之

執筆者:村田 博之

名所・旧跡ガイド

桜前線が日本列島をゆるやかに北上して町をピンク色に染めていく春の始まりの頃、高い山ではまだまだ冬の真っ最中。積もった雪が山頂を覆っています。

春を迎えた街の中から見る雪をかぶった山々は、絵になる風景の1つですが、その山々の中に足を踏みいれることで見られる世界も、まさに絶景。厳重な装備をして冬山に挑むアルピニストたちが楽しんできた、どこを見ても一面真っ白な雪に覆われたこの景色を、冬用の服装で出かけるだけで気軽に楽しめる場所が日本にはあります。それは北アルプス連峰を貫く観光ルート、立山黒部アルペンルートです。

今回は、営業開始直後の立山黒部アルペンルートで、春だけ楽しめるイベント「立山・雪の大谷」をご紹介します。
立山・雪の大谷(1)

立山黒部アルペンルートの春限定イベント、雪の大谷ウォーク(2018年5月1日撮影)

<目次>

多彩な乗り物で北アルプスを貫く立山黒部アルペンルート

立山黒部アルペンルートの多彩な乗り物たち

多彩な乗り物で移動することができる山岳観光ルート、立山黒部アルペンルート
上段:関電トンネル電気バス・黒部ケーブルカー
中段:立山ロープウェイ・立山トンネルバス
下段:立山ケーブルカー・立山高原バス

立山黒部アルペンルートは、大町市(長野県)から富山市までの全長90キロにも及ぶ観光ルート。北アルプスの後立山連峰と立山連峰をトンネルで越えるルートで、途中には日本最大級の水力発電ダムである黒部ダム、後立山連峰と黒部湖を望むことができる大観峰(だいかんほう)、雷鳥が住みつき、立山連峰の山々を眺めながら高原散策ができる室堂平(むろどうだいら)など、数多くの観光スポットがあります。

また多彩な乗り物に乗りながら移動できるのが立山黒部アルペンルートの特徴。
(1)信濃大町駅-扇沢の路線バス
(2)扇沢-黒部ダムの関電トンネル電気バス
(3)黒部湖-黒部平の黒部ケーブルカー
(4)黒部平-大観峰の立山ロープウェイ
(5)大観峰-室堂の立山トンネルバス
(6)室堂-美女平の立山高原バス
(7)美女平-立山の立山ケーブルカー
(8)立山-電鉄富山の富山地方鉄道(電車)
と、実に8種類もの乗り物によって構成されています。

路面電車のように上に張った架線から電気を供給して走るトロリーバスは、日本各地の都市部で走っていましたが、今では立山黒部アルペンルートの立山トンネルバスのみ(2025年にはすべて電気バスに置き換えられます)。また厳しい冬を乗り越えられるように全線地下を走るケーブルカーも日本ではここだけのものです。
 

雪の大谷とは?

立山・雪の大谷(2)

立山高原バスの車窓から見る雪の壁
毎年、冬の間に積もった大量の雪を除雪して開通する立山黒部アルペンルートの美しい風景です(2018年5月1日撮影)

北アルプスの大自然を身近に感じられる立山黒部アルペンルートの営業期間は、例年4月中旬から11月初旬まで。その他の期間はルート全体が豪雪に見舞われることもあり、営業はお休み。

里に春が訪れて立山黒部アルペンルートの営業開始が近づくと、まずは乗り物を動かせるようにしなければなりません。立山高原バスが走る道路はすっぽりと雪に埋まっているので、除雪車が豪快に雪を飛ばして道路を掘り出していきます。その高さは積雪量にも寄りますが、雪が多い時には高さ20メートルにも及びます。これが「雪の大谷」です。
立山・雪の大谷(3)

除雪により生まれた巨大な雪の壁を見上げながら歩くことができる雪の大谷ウォーク(2018年5月1日撮影)

立山高原バスの中からも「雪の大谷」の雪壁を見ることができますが、立山黒部アルペンルート全線開業後のある一定期間だけ、「雪の大谷フェスティバル」というイベントの中で「雪の大谷ウォーク」として室堂側に近い部分の道路が歩行者に開放され、雪壁を見上げながら歩くことができます。
 

映画にもなった黒部ダムを見下ろす

黒部ダム(2)

黒部ダムのダムサイトから眺めた黒部湖。モノクロームの風景が美しい(2000年4月22日撮影)

それでは、長野県・大町側から立山黒部アルペンルートを使って、雪の大谷がある室堂へ向かいましょう。室堂に向かうまでのルートにも見どころが満載です。

まず信濃大町駅からバスで扇沢駅(Googleマップ)に到着後、関電トンネル電気バスに乗り換えます。

電気バスが走るこのトンネルは、黒部ダムと黒部川第四発電所建設のために作られたトンネルです。北アルプスの山を掘り抜くという大きな工事だったうえ、地盤がすごく弱い破砕帯にぶつかったため難工事を強いられましたが、人々の努力と技術でこれを乗り越え無事トンネルが貫通。1956年から7年の歳月をかけて1963年に黒部ダムが完成しました。この破砕帯との人々の戦いは石原裕次郎さんの主演で「黒部の太陽」という映画にもなりました。
黒部ダム(1)

展望台から黒部ダムを眺める
ダムの迫力と表面が凍って雪が積もった黒部湖の大きさに目を見張ります(2000年4月22日撮影)

トンネルの中にある黒部ダム駅で電気バスを降りると、黒部ダムGoogleマップ)へまっすぐ行く道と展望台へ向かう上りの階段があります。この階段、結構段数(220段)があって運動不足の体にはちょっときついですが、表に出ると黒部ダムとダム湖である黒部湖を見下ろすことができます。

黒部湖はこの時期、まだ凍っていますが、湖の大きさは十分わかりますね。お天気が良ければ正面には立山連峰の山々が美しい稜線を見せてくれます。
 

後立山連峰の山々と黒部湖を見ながら大観峰へ

大観峰からの眺め(1)/後立山連峰と黒部湖

大観峰から後立山連峰と黒部湖を見下ろす(2018年5月1日撮影)

黒部ダムを歩いて対岸へ渡った所にある黒部湖駅からは日本唯一の地下ケーブルカー、黒部ケーブルカーで黒部平駅(Googleマップ)へ。黒部平からは立山ロープウェイで大観峰へ登ります。

この立山ロープウェイは立山の自然景観を守るため、途中にロープを支える柱が1本もない世界でも珍しいロープウェイ。お天気に恵まれればロープウェイの後ろには後立山連峰と黒部湖の雄大なパノラマを楽しむことができます。
大観峰からの眺め(2)/鹿島槍ヶ岳

大観峰から後立山連峰の名峰・鹿島槍ヶ岳を望む(2018年5月1日撮影)

大観峰(Googleマップ)の標高は2316メートルですから、標高1455メートルの黒部湖からは一気に900メートルほど登ってきたことになりますね。大観峰からも後立山連峰と黒部ダム、黒部湖の眺めを楽しむことができます。

ここまで来たら室堂へは立山トンネルバスに乗るだけ。立山の真下を貫くトンネルバスに10分ほど乗ると室堂に到着です。
 

雪の壁を間近に見上げながら歩ける雪の大谷 

立山・雪の大谷(4)

室堂ターミナルから雪の大谷ウォークをスタート!(2018年5月1日撮影)

室堂(Googleマップ)に着いたら、いよいよ「雪の大谷ウォーク」に出発します。室堂ターミナルから約500メートルのバス道路が歩行者に開放されており、この中を雪の壁を見ながら歩いていくことになります。
立山・雪の大谷(5)

雪の大谷のコンディション情報。当日の気温と共に雪壁の最大の高さが表示されます(2018年5月1日撮影)

多い時は8月まで残ることもあるこの雪の壁、道路を歩きながら見上げることができる「雪の大谷ウォーク」はアルペンルート開通直後から5月末までの期間限定イベントです。
立山・雪の大谷(6)

高さ20メートルに達することもある「雪の大谷」の雪の壁。撮影時は最高17メートルでした。
ひと冬にこれだけの雪が積もるという事実にびっくりします。(2018年5月1日撮影)

「雪の大谷」の雪の壁の高さは、その年の積雪の量にも寄りますが、20メートルもの高さになることもあるとのこと。自然の作り出す絶景はまさに圧巻、ひと冬でこれだけの雪が積もるのかと驚きます。
立山・雪の大谷(7)

「雪の大谷」では、迫力ある雪の壁を間近に鑑賞しながら歩くことができます(2018年5月1日撮影)

「雪の大谷ウォーク」は9時半から15時までの間に楽しむことができますが、室堂ターミナル内にあるホテル立山に宿泊すると、ホテルスタッフの案内により夕方から歩くことも可能です。
 

パノラマロードから眺める真っ白な北アルプスの山々 

立山・雪の大谷(8)/パノラマロード

雪の大谷ウォーク内の別ルート、パノラマロードへの案内(2018年5月1日撮影)

雪の大谷ウォークでは、バスが走る道路を歩いて雪の壁を見上げるルートと、道路沿いの雪原を歩いていくパノラマロードの2ルートが用意されており、散策の際は自由にルートを選べます。
立山・雪の大谷(9)/パノラマロード

パノラマロードを俯瞰で確認
360度に広がる立山連峰の雪景色を鑑賞することができます(2018年5月1日撮影)

パノラマロードは名前のとおり、立山(雄山)を初めとして剱岳などの北アルプスの山々を一望できるルートです。
立山・雪の大谷(10)/パノラマロード

パノラマロードから、室堂ターミナルと立山を望む(2018年5月1日撮影)

豪雪地帯にそびえる山々は雪に覆われているため、どこを見回しても純白の世界が目の前に広がります。自然の雄大さを実感できますね。
立山・雪の大谷(11)/パノラマロード

パノラマロードの折り返し点の風景
雪の大谷の雪壁の高さがバスの車高より高いことが良くわかります(2018年5月1日撮影)

またパノラマロードの折り返し点では、バス道路と接近しており、雪の大谷を違ったアングルで見ることができます。ここでパノラマロードとバス道路の間を行き来することができるので両方を周遊することをおすすめします。
 

都会での真冬の服装で出かければOK

立山・雪の大谷(12)

雪の大谷を訪れている観光客の方々の服装。都会での真冬の服装を想定すれば大丈夫(2018年5月1日撮影)

室堂は標高2450メートル、立山黒部アルペンルートもほとんどが標高1400メートルを越える高所にありますので、防寒装備は必須です。都会での真冬の服装で暖かくしてお出かけください。足元は凍っていて滑りやすいので、滑りにくい靴を履いていきましょう。気圧も平地より低いため呼吸が少し苦しく感じることもありますから、ゆっくり歩くと良いでしょう。

立山黒部アルペンルートの公式Webサイトにも服装と持ち物のアドバイスが掲載されているので参考にしてみて下さい。

立山黒部アルペンルートは見どころがたくさんありますので、観光する時間も含めて大町から室堂までは3~4時間くらいの移動時間を見ておくと良いですね。富山から室堂までも3時間程度は必要です。またそれぞれの乗り物には定員があり、混雑している時は乗り継ぎで1時間以上待つこともありますので、その分の余裕時間も含めて旅のプランを組みましょう。


反り立つ雪の壁の間を歩く、という非日常体験ができる立山・雪の大谷を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

雪の大谷で雪景色を楽しんだ後、里に下りると富山側では立山から富山地方鉄道に乗って宇奈月温泉に行けますし、大町側にも大町温泉郷が控えています。タイミングが合えばチューリップなどの花が咲く複数の季節感も一度に感じられる稀有な観光ルートなので、ぜひ立山黒部アルペンルートへ足を運んでみてください。
 

立山・雪の大谷へのアクセス

■ 立山黒部アルペンルートのきっぷは事前購入のWebきっぷが便利
バス、ケーブルカー、ロープウェイ、鉄道とさまざまな乗り物を乗り継いでいく立山黒部アルペンルート。ゴールデンウイークなど繁忙期になると扇沢駅や立山駅の窓口ではきっぷの購入に長い行列ができます。

立山黒部アルペンルートの公式WebサイトでWebきっぷを事前購入すると、立山駅・扇沢駅の受取機で窓口に並ぶことなくきっぷを受け取ることができます。

■ 長野県側(扇沢)から入る場合
扇沢駅

立山黒部アルペンルート・長野県側の入口、扇沢駅(2023年10月撮影)

<鉄道>
北陸新幹線 長野駅よりアルピコ交通バス 特急バスで扇沢へ。長野駅から扇沢まで1時間45分。
またはJR大糸線 信濃大町駅下車。新宿より特急「あずさ」号で松本まで、松本から普通電車で信濃大町までは約1時間10分。「あずさ」号の一部列車は信濃大町まで直通運転します。
信濃大町駅からは路線バス(アルピコ交通バス、北アルプス交通バスの共同運行)に乗車して扇沢へ。信濃大町駅から扇沢まで約40分。
扇沢駅からは、関電トンネル電気バスで黒部ダム駅へ行き、黒部ダムを横断して黒部湖駅から黒部ケーブルカーで黒部平駅へ。立山ロープウェイに乗り換えて大観峰から立山トンネルバスで室堂へ。

<高速バス>
バスタ新宿・新宿西口から白馬行きの高速バス(京王バス、アルピコ交通バスの共同運行。昼2~3往復(毎日)、夜1往復(季節運行))が信濃大町駅前に停車します。信濃大町駅からは路線バスで扇沢へ。高速バスの夜行便1便(季節運行)は、扇沢駅まで直通します。
扇沢駅から先は<鉄道>ルートと同じ。

<車>
長野道 安曇野インターチェンジから県道または国道147号線経由で大町に入り、大町温泉郷・扇沢方面へ。扇沢のターミナル前に駐車場があります。アルペンルート内にはマイカーの乗り入れは出来ませんが、富山県側に抜けたい人のためにマイカーの回送サービス(有料)が用意されています。
扇沢駅から先は<鉄道>ルートと同じ。

■ 富山県側(立山)から入る場合
立山駅

立山黒部アルペンルート・富山県側の入口、立山駅(2018年5月撮影)

<鉄道>
北陸新幹線 富山駅より富山地方鉄道に乗車し、立山駅まで約1時間20分。立山駅からは立山ケーブルカーで美女平駅へ向かい、立山高原バスに乗り換えて室堂へ。

<高速バス>
バスタ新宿・池袋から富山・氷見行きの高速バス(西武バス、富山地方鉄道の共同運行。昼1往復、夜1往復)が富山駅前に停車します。富山駅からは<鉄道>ルートと同じ。

<車>
北陸道 立山インターチェンジから県道で立山方面に。立山駅に駐車場があります。アルペンルート内にはマイカーの乗り入れは出来ませんが、長野県側に抜けたい人のためにマイカーの回送サービス(有料)が用意されています。立山駅からは<鉄道>ルートと同じ。

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