マルチハビテーションという言葉を知っていますか?
マルチ(Multi-「多様な」を意味する複合辞)とハビテーション(habitation「住居」を意味する名詞)を組み合わせた造語で、二地域以上の、複数の居住空間に生活することをさします。定住という概念を超え、いくつかのお気に入りの都市で暮らす―――。マルチハビテーションの考えに、国内と海外の垣根はないようです。


マルチハビテーションの時代が到来

流水書房
書店にはマルチハビテーション関連の雑誌や書籍も増えている
農耕民族といわれ、土地や血脈に厚い信仰をもつことで知られるわたしたち日本人も、渡航自由化以降、海外を広く見聞するようになり、近年ではライフスタイルも多様化しています。
小学館が発行する上質生活誌『駱駝(らくだ)』では、毎号、この「マルチハビテーション」をとりあげ、暮らすことに力点を置いた取材記事を掲載。読者層から多くの支持を得ています。

生活の拠点を、国内外問わず複数持つ、もしくは「持ちたい」と考えるひとが急増する背景には、インターネットの普及などによる世界観の変化も影響しています。
海の向こうでも、時差を気にせず仕事を受発注し、納品する。著述業やクリエーター系が海外に拠点をもつ傾向にあるのは、「物流を伴わないから」とも考えられています。

リタイアリーはもちろんのこと、後述する、租税回避を目的にクロスボーダー化する若き成功者たちも同様で、まさに時代はマルチハビテーションといえるでしょう。
特に、定年を待たずしてマルチプルに居住先を持つ傾向は、現役世代において、今後も強まると考えられます。

税法上の違いも根底に

バンクーバー全景
税法上の違いが居住地やライフスタイルに大きく影響する
そもそも、アングロサクソン系のひとびとの多くは、一生涯のうち、数年のサイクルで、生活の拠点を移す傾向にあり、ときには大陸をまたぐことさえあります。
遊牧の民をルーツにもつと言ってしまえばそれまでですが、税法上の違いが起因していることは否めません。
相続税贈与税という概念がない国々に暮らすひとたちは、引越しや転居を伴う資産の移動に、リスクをあまり感じないというのが、ひとつの大きな要因です。

米国人の自宅保有年数が平均7年であるだとか、豪州人が生涯で引越しをする平均回数が7回であるだとか、聞いたことのあるひとも多いのではないでしょうか。